リーズ・ナブルは此れにて御免 ~ 元軍人付与士は冒険者として成り上がる~

アゲインスト

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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの馬事《まこと》騒ぎ~

女傑とのお話(甘さなんてなかった)

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 女傑、マチルダ・ボータンとの試合。
 こちらの能力を見せるつもりが、逆にまざまざと実力差を見せつけられる結果となった。
 無論、俺の負けである。
 流石にどんな時にでも負けない、なんて自惚れてはいないが……やはり悔しいものは悔しいのだ。
 
「……ちくしょう」
 
 思わず口にしてしまった言葉に、対面に座るマチルダは苦笑を浮かべながら応える。
 
「そうは言うがなリーズ、徒手であれだけできるのなら大したものだぞ? 「青き鬣」の長ほどではないにしても、私もこれで実力者だ。それを相手にして反撃までしてきた、十分に実力があるといえる」
 
 うるせぇ。
 そっちは勝ってるから気分はいいだろうが、こちとら旅に出てそうそうへこみそうなんだよ。
 ユルゲンもそうだが、ここまで実力者との差が大きいとは。どうすうんべ、生きていけんのこれから。
 
「しかし……今日はケインとも戦っていたのだったな。ベンとも何かあったようだし……厄介事に事欠かん奴だな」
 
 おう、あんたもその一人何だけど。
 厄介の度合いならあんたもなかなかのものだぞ。
 
「……そんで、俺はどんな仕事をさせてもらえるんで?」
「うむ。お前の実力ならば問題あるまい、独断で私の下で働いてもらおう。時間があるときには私が鍛えてやる、これでもっと強くなれるぞ」
「姉さん、それ職権乱用です」
「心配するな、それはきちんと仕事をやってからだ。いやー久しぶりに骨のある相手が来てくれて嬉しいぞ」
「姉さん、心配してんのそこじゃないです」
「警備の皆も是非にと言ってくれてな。すごいぞお前、さっきの試合のおかげで大人気だ」
「そいつらの居場所を教えろ。今すぐぶっとばしてやる…!」
 
 なんてことを仕出かしてくれたんだ!
 そんなことをする前にやることがあるだろうが!
 
「そういってやるなリーズ、最近は皆なかなか鍛練に付き合ってくれなくてな……寂しい日々が続いていたが丁度いいところにお前がきてくれた。実のところ最初に会った時から目をつけていたのだがまさかこんなにも早く機会が訪れるとは……ふ、フフフフ」
「マジかよやべー奴じゃん」
 
 なんてことだ!
 ここの連中はどうしてこうなるまでこいつを放置してたんだ! しかもぽっと出の俺なんかに任せてんじゃねぇよ!
 
「以前はベンの奴がよく来てくれていたんだが、あの事件で……な。クランのことで手一杯みたいで、久しぶりに来てくれて嬉しかったんだ」
「……ああ、確か幼馴染みだとか」
「そうだ。あいつは昔から剣術馬鹿でな、力では私が上だったが技の冴えはドイル氏にその実力を認められるほどだった。あんなことがなければ、あいつももっと高みに至っていたはずだ……」
 
 怖いくらいの笑顔から一変、悲しげな表情で過去の光景を見ているのか遠いところに視線がいっている。
 後悔が滲んだその瞳を、どういうわけだか見ていられないのはあの娘を見ているような気持ちになるからだろうか。
 そのもやもやとしたものを誤魔化すように、俺は話の矛先を逸らすようにして口を動かす。
 
「あーなんだ、あいつには色々と気を使ってもらってるしな。あんたにも世話になるんだ、何でも言ってくれ。できる限りのことはするさ」
「……言ったな」
「ひょ?」
 
 雰囲気を軽くしたいがための軽口だったのだが、何故だろう嫌な予感で鳥肌がたってきてしまったんだが。
 ああなんでだろう、目の前の美人さんの目元が暗くなっていくぞ。これはあれだ、あの腹黒野郎に無理難題やらされたときと状況が似通っている。あの時も不用意に言葉を発したせいで面倒な事案を任されることになったのだ。そのせいでかなり危険な目にあったではないか俺の馬鹿!!
 
「フフフ……何とも心優しいことだ、まさか自分からそんなことを言ってくれるとは。こちらとしては願ってもないことだ、久方ぶりに骨のある奴と存分にできるのだ。
 いいだろう…! 丁度のいいことに次の仕事は夜からだ。それまで存分にやりあおうじゃないか!!」
 
 それからのことは言うに及ばず、再びさっきのところに戻ってズタボロにされたことをここに記しておこう。
 皆、忠告だ。
 いくら美人だからって、気を使ったようなことをいうものではない。
 こんな風に、君の思いとは裏腹にとんでもないことになるかもしれない。特に相手が腹筋に自信があるとか、三角筋を自慢してくるようなことがあれば要注意だ。過剰に誉めることは絶対にあってはいけない。その凄さを身をもって味わうことになる。耐久力に不安があるのなら筋トレと引き換えに見逃してもらおう。
 俺?
 俺は無理だったよ。
 頑張ったんだけどさ、どうしたってあの女から逃れることはできなかった。できることなら諸君と立場を交換したいが、君たちが被虐趣味でない限りここに来てくれることはないだろう。実際途中で俺たちの様子を見に来た奴がいたんだが、あまりの光景に目をそらしてどっかいってしまった。
 
 そして宣言通り、この悪夢のようなシゴキは夜まで続いた。
 満足気な表情で仕事に繰り出すマチルダを地面に這いつくばりながら見送り、この日の活力を全て使い果たした俺は泥のように眠るのだった。
 
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