セフィロト

讃岐うどん

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『黄金卿』編

第一二話 協会

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「探しましたよ……全く!」
「ちぁ? 誰……ぁあ。手前か」
 ラセツと黄金卿の戦いから約一週間が過ぎた。片腕を失ったラセツは、町外れの一軒家に隠居している。
 そこに、珍しい……というか、初めての訪問客が訪れたのだ。
「協会から貴方の話はよく聞いています。かつての英雄が、なんでザマだ」
 憐れむように、訪問者は煙草を吸っていた。ラピスラズリの様な蒼の髪が煙のカーテンに包まれる。
 それを嫌がってか、ラセツは手を振り払った。
「やめろ、煙臭い。ただでさえここ匂いが篭りやすいんだ」
「良いじゃ無いですか。誰のせいで仕事が増えたと……いえ、今回は貴方の非はそんなにでした。訂正しましょう」
 左手でお腹の辺りを揺する少年、『天下蒼天』テスターは、苦笑いでソファに座り込む。見た目だけで言えば、彼は未成年にしか見えなかった。
「あ?」
「灰皿は……ありませんよね。喫煙者じゃありませんし」
「っるせぞヤニカス。早く本題に入れ」
 言われると、彼は煙草を吸うのをやめ、背中にからっていたリュックサックから紙を取り出した。
 巻物の状態のそれを広げる。
「街地図?」
「彼岸町全域の地図です。私が調べた限りの全てを載せています。訂正はありませんか?」
「ねえよ。と言うか、それに何の意味がある」
 地図から目線を上げた。地図は彼が知りうる限り、最も正確だった。彼の知識を上回ることすら書いてあり、少し恐怖を感じた。
「黄金卿との開戦場所を決めたいのです」
「あ? 開戦場所だぁ? ンなもの決める必要あるか?」
 彼の疑問は最もだ。
 何せ黄金卿は固有結界を持ち合わせている。全てが黄金となる世界で、そんな事に意味があるのか。甚だ疑問だった。
「ええ。大有りです」
 最速で頷くテスターは、ある一点を指さした。それの指先に彼は目を見開いて、笑った。それはもう、大笑いだ。
「は! そこを選ぶってか。イイね、いいセンスだ」
 バン!
 強く机を叩き、ラセツは睨む。
「ただ、オレは断固として反対する」
「ですが、最適ではありますよ」
 彼の指していた先……そこは、街の中心。
 現在進行形で人の往来が激しく、より若い命が多く集う学びの宿。
がか?」
「ええ。それも、
 彼岸高校。
 その言葉に、より眉間の皺を深ませる。
 とても、正気とは思えなかったからだ。
「本気でそこか?」
「本気でここです」
 はぁぁぁ。
 ラセツは大きなため息をつき、頭を悩ませた。協会の人間の権力は絶大だ。彼がやれと言えば、やる。それ以外の選択肢は無いのだ。
「民間人の避難はどうすんだ」
「地主のに結界を張ってもらいます。『人払い』『保存』『視線逸らし』の3つですね。必要に応じて増やします」
「確かにそれなら被害は抑えれるだろうな。ヤロウが神技を使えば、更に抑え込める。ああ、吐き気がするぐらい緻密に考えてやがるな」
「貴方に褒められて光栄です。歴戦の調律師である貴方から見て、何か不満点や疑問点はありますか?」
 その言葉を聞いて、彼は手を鼻下に当てた。「んー」と小さい唸り声をあげ、口を開く。
「ありますか……か。強いて言えば、結界を張る人間だな」
「人間……御門家の者に、何か不満が?」
「手前が期待していたのは、御門 白一郎はくいちろうだろう。だが残念、今『御門家当主やつ』はこの街にいない」
「……はい?」
 それは、彼の想定していなかった事態だ。
 御門 白一郎は、協会でも何度か耳にするほどの結界術に長けた男だ。
 調律師でも無いただの人間が、何故そこまで出来るのか、ラセツですら詳しく知らない。
「ヤロウ、仕事がどうのこうの言ってニューヨークに行きやがった」
「ニュ……ニューヨークゥ!?」
「それも、半年な」
「半年ィ!?」
 想定外の事態に、テスターは頭を悩ませた。どうしようもない事態に、彼の頭は逃げを選択してしまう。
「……取り敢えず、アストラルピルグリムの子と合流しましょうか……」
「そうだな」






「いいなぁ御門みかどぉ。何もしなくても金が入ってくるって」
「株の件か? 悪いが、競合相手が増える様なことはしないぞ」
「いやいや。競合相手なんてそんな……私目にはそんな資本、ありゃしませんよー」
「下手に出るな気持ち悪い。オマエ、そんなキャラじゃなかっただろ。秀」
 手をすりすりと擦るボクに、コツっと拳が命中した。ボクの脳天にダメージを与えたのは、クラスメイト御門 らく
 楽とは小学校からの仲だ。右目に黒色の眼帯を付けた青髪の男。
「どうせあれだろ? 株の話がどうのこうのって本でも読んだんだろ?」
「いや……? そんなこと……」
 独特な青髪は、生まれつきだ。
 教師の理解を得ているのか「染めろ」とはもう言われないらしい。昔はこれで良くイジメがあったなぁ……
「ない、と言えば嘘になる」
「あんじゃねーか」
「へへ、やっぱ大地主の息子には通用しませぬか」
「キモい。普通に喋れクソガキ」
 口が悪いのが、彼の特徴だ。レスバトルの大会開いたら、優勝するんじゃ無いかと思ってる。
「つか、何で金の稼ぎ方なんて知りたいんだよ」
「……ハワイ」
「あ?」
「俺もハワイ、行きたかったなぁ……」
 虚空を見つめる俺に、察したのか楽は唇を震わせていた。
「フフ……何だ? 置いてかれたのか……フフ?」
 こぼれ落ちる笑いに、苛立ちを覚えた。
 殴りそうになった手を止めて、話を切り替える。と言うか、本題に入った。
「そういや聞いたか? 転校生のこと」
「聞いたぞ。何でも帰国子女らしいな」
「良い人だったら良いなぁ」
「これ以上変な奴増えても困るけどな」
「ははは、オマエが言う?」
「ああ、俺が言うさ」


「さぁ、どんな奴だ?」
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