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第三章 水門都市編
第三話「水門都市フィオーネ」
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地底都市を出たジュドたちは道中野営を挟みつつ、二日かけ水門都市近郊まで辿り着いた。
視界の先には大きな防壁が見え、多くの人が行き交う。
水門都市フィオーネは都市全体が同心円状に広がっており、北にはフィオーネ古海、南にはヴェルトリア王国が見える。
水門都市近海はフィオーネ古海含めて魔物の危険度が高く、近衛兵を護衛につけて漁に出ることが義務付けられている。
人の往来や航路での輸送難易度が高いため、特産品などは全て陸路で比較的安全な海域に隣接する〝港町ハーゼン〟まで届けられ、そこで取引される。街を覆う壁には東西二つの大橋が掛けられており、入り口を限定することで外敵の侵入を防いでいる。
「ウィスターシャ!」(※水門都市の挨拶)
「水門都市フィオーネへようこそ。名前と用件を伺ってもいいですか?」
大橋の守衛に声をかけられる。
「俺たちは王国から来た冒険者だ。俺はリーダーのジュド=ルーカス、後ろにいるのは仲間のシスティーナ、モーリス、ダグラス、ルシア」
「地底都市から緊急の要件でここへ来た。水門都市の主神に話を通して欲しい」
要件を聞いた守衛は困った顔をして一行に告げる。
「水門都市への立ち入りに関しては問題ありません。ただ…漠水神フィオーネ様は現在…」
口籠る守衛が話始めた時、銀髪の女近衛兵が近づいて来た。
「その要件、私が対応しよう」
「こ、これは、オーレダリア近衛兵長…!!見回りご苦労様です…!」
背後から近づいて来たその人物に気づくや否や、即座に守衛が頭を下げる。
「フィオーネ様に会いたいとのことだったね。君たちが来ることは地底神ラース様からの封書に記されていたから知っているよ。詳しい話は私の執務室で話そう」
「緊急な要件だろうから、早速来てもらいたいんだけど…」
オーレダリアは手を腰に当て、ため息をこぼす。
「ここのところ執務がかさんでいてね。申し訳ないんだけど、二時間後に改めて水門都市中央にある近衛兵本部まで来てもらえるかな?」
執務がかなりの量溜まっているのだろうか。
どうやら水門都市でも何か訳ありな事態が起こっているようだった。
ジュドたちは改めてオーレダリアに会いに行くことにして水門都市入り口まで案内される。
「あ、そうそう。この街は初めてだろう?水門都市は街中に水路があって、〝アクアポート〟と呼ばれる輸送船が街の各地に人や物を運んでくれるんだ。ぜひ活用してみてくれ。それじゃあまた後で」
そう言って、オーレダリアは場を後にした。
街に入ると地底都市とはまったく違う景色が広がっており、目の前に大きな噴水、人が往来するための大きな水路だけでなく、足元には細かな水路が流れ、街中にほのかな磯の香りがしている。
建物はシンプルな作りで、ほとんどが白く塗られた外装と花で家を彩っていた。宙にはシャボン玉のような水の泡が浮いており、天空に向かって上昇していく。
一行は荷物を置き、この街で名所である〝バザール〟を見に行くことにした。
◇ ◇ ◇
さっき紹介されたアクアポートを使い、街の北側にある船着場で開催されているバザールに到着する。
「美味しそうですね!」
食事に目がないルシアが目をキラキラさせる。
「海か。初めて見るが壮大だな」
砂漠出身のダグラスも見た目にそぐわず心弾ませているようだった。
船着場にはいくつもの漁船が定着しており、バザールにはフィオーネ古海や水門都市近郊で採れた海産物、職人の作るアンティークや武具が並ぶ。
各々が売店で好きなものを買い、昼食を済ませていた時、市場で声が上がる。
「泥棒だ!誰かそいつを止めてくれ!!」
叫び声の先からダグラスより一回り小さい大男が走ってくる。
泥棒は胸に水門都市の特産品である〝暗礁石〟が入った袋をかかえ、道ゆく人々を押し倒していた。
「ひひっ、これを職人に売って一儲けだ…!」
無我夢中で走る男の目の前には、異国の少女が立っていた。
近くにいたシスティが助けに入ろうとし、食べていた昼食を口に頬張り、剣を握る。
「止まりなさい、そこまでです!!!」
異国の少女は男に注意を促が、男は勢いを落とすことなく少女に向かって突進する。
「どけ!!!小娘がッ!!!」
ぶつかる。
誰もがそう思った時、突撃してきた男が突然空へ投げ飛ばされた。
鈍い音をたて、男はそのまま地面に叩きつけられる。
「これに懲りたら悪行からは足を洗うこったな。大丈夫か?姫さん」
籠手という概念を逸脱した大きさの腕部装甲を身につけた褐色の女が地に伏せた男の前に立つ。
「私は大丈夫です。バハトナはもう少し手加減してあげて下さい」
「あちゃぁ、こいつ意識を失ってるみたいだ…。せっかく先輩からアドバイスしてやろうと思ったのによ」
呆れている少女を他所に倒れた男をつまみあげる。
「やりすぎないでくれよ。目立つと厄介だ」
少女の後ろから和装のような格好をした男が魚の串焼きを咥えて歩いてくる。
「大丈夫か?システィ」
ジュドたちが駆けつけたが、すでに事は解決したようだった。
「あの娘、腕の立つ護衛を二人も連れて…何者かしら…」
システィたちは彼女たちのことを気にしつつもその場を後にする。
視界の先には大きな防壁が見え、多くの人が行き交う。
水門都市フィオーネは都市全体が同心円状に広がっており、北にはフィオーネ古海、南にはヴェルトリア王国が見える。
水門都市近海はフィオーネ古海含めて魔物の危険度が高く、近衛兵を護衛につけて漁に出ることが義務付けられている。
人の往来や航路での輸送難易度が高いため、特産品などは全て陸路で比較的安全な海域に隣接する〝港町ハーゼン〟まで届けられ、そこで取引される。街を覆う壁には東西二つの大橋が掛けられており、入り口を限定することで外敵の侵入を防いでいる。
「ウィスターシャ!」(※水門都市の挨拶)
「水門都市フィオーネへようこそ。名前と用件を伺ってもいいですか?」
大橋の守衛に声をかけられる。
「俺たちは王国から来た冒険者だ。俺はリーダーのジュド=ルーカス、後ろにいるのは仲間のシスティーナ、モーリス、ダグラス、ルシア」
「地底都市から緊急の要件でここへ来た。水門都市の主神に話を通して欲しい」
要件を聞いた守衛は困った顔をして一行に告げる。
「水門都市への立ち入りに関しては問題ありません。ただ…漠水神フィオーネ様は現在…」
口籠る守衛が話始めた時、銀髪の女近衛兵が近づいて来た。
「その要件、私が対応しよう」
「こ、これは、オーレダリア近衛兵長…!!見回りご苦労様です…!」
背後から近づいて来たその人物に気づくや否や、即座に守衛が頭を下げる。
「フィオーネ様に会いたいとのことだったね。君たちが来ることは地底神ラース様からの封書に記されていたから知っているよ。詳しい話は私の執務室で話そう」
「緊急な要件だろうから、早速来てもらいたいんだけど…」
オーレダリアは手を腰に当て、ため息をこぼす。
「ここのところ執務がかさんでいてね。申し訳ないんだけど、二時間後に改めて水門都市中央にある近衛兵本部まで来てもらえるかな?」
執務がかなりの量溜まっているのだろうか。
どうやら水門都市でも何か訳ありな事態が起こっているようだった。
ジュドたちは改めてオーレダリアに会いに行くことにして水門都市入り口まで案内される。
「あ、そうそう。この街は初めてだろう?水門都市は街中に水路があって、〝アクアポート〟と呼ばれる輸送船が街の各地に人や物を運んでくれるんだ。ぜひ活用してみてくれ。それじゃあまた後で」
そう言って、オーレダリアは場を後にした。
街に入ると地底都市とはまったく違う景色が広がっており、目の前に大きな噴水、人が往来するための大きな水路だけでなく、足元には細かな水路が流れ、街中にほのかな磯の香りがしている。
建物はシンプルな作りで、ほとんどが白く塗られた外装と花で家を彩っていた。宙にはシャボン玉のような水の泡が浮いており、天空に向かって上昇していく。
一行は荷物を置き、この街で名所である〝バザール〟を見に行くことにした。
◇ ◇ ◇
さっき紹介されたアクアポートを使い、街の北側にある船着場で開催されているバザールに到着する。
「美味しそうですね!」
食事に目がないルシアが目をキラキラさせる。
「海か。初めて見るが壮大だな」
砂漠出身のダグラスも見た目にそぐわず心弾ませているようだった。
船着場にはいくつもの漁船が定着しており、バザールにはフィオーネ古海や水門都市近郊で採れた海産物、職人の作るアンティークや武具が並ぶ。
各々が売店で好きなものを買い、昼食を済ませていた時、市場で声が上がる。
「泥棒だ!誰かそいつを止めてくれ!!」
叫び声の先からダグラスより一回り小さい大男が走ってくる。
泥棒は胸に水門都市の特産品である〝暗礁石〟が入った袋をかかえ、道ゆく人々を押し倒していた。
「ひひっ、これを職人に売って一儲けだ…!」
無我夢中で走る男の目の前には、異国の少女が立っていた。
近くにいたシスティが助けに入ろうとし、食べていた昼食を口に頬張り、剣を握る。
「止まりなさい、そこまでです!!!」
異国の少女は男に注意を促が、男は勢いを落とすことなく少女に向かって突進する。
「どけ!!!小娘がッ!!!」
ぶつかる。
誰もがそう思った時、突撃してきた男が突然空へ投げ飛ばされた。
鈍い音をたて、男はそのまま地面に叩きつけられる。
「これに懲りたら悪行からは足を洗うこったな。大丈夫か?姫さん」
籠手という概念を逸脱した大きさの腕部装甲を身につけた褐色の女が地に伏せた男の前に立つ。
「私は大丈夫です。バハトナはもう少し手加減してあげて下さい」
「あちゃぁ、こいつ意識を失ってるみたいだ…。せっかく先輩からアドバイスしてやろうと思ったのによ」
呆れている少女を他所に倒れた男をつまみあげる。
「やりすぎないでくれよ。目立つと厄介だ」
少女の後ろから和装のような格好をした男が魚の串焼きを咥えて歩いてくる。
「大丈夫か?システィ」
ジュドたちが駆けつけたが、すでに事は解決したようだった。
「あの娘、腕の立つ護衛を二人も連れて…何者かしら…」
システィたちは彼女たちのことを気にしつつもその場を後にする。
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