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19:再びヨガクレへ(4)
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「ふむ。小娘も狐か?」
「ええと、わたしは……」
「彼女も狐だよ」
視線を向けられたような気がして、返答に窮した美緒の代わりに、朝陽がさらりと嘘を吐く。
「そんなことはいいから、一反木綿を呼びたいんだ。空で客待ちをしている彼らに見えるように、くるりと大きく回ってくれないか」
言いながら、朝陽はトートバッグからスナック菓子を取り出した。
包装紙には激辛ハバネロ味と書いてあり、可愛くデフォルメされたどくろマークがついている。
辛いものが苦手な美緒にとっては、手を出す気にもならない品物だ。
「おお、それは、現世の菓子ではないか! しかもその絵は唐辛子じゃな!? わし好みのからーいやつじゃな!?」
歓喜を示すように、火の玉がくるくる踊った。
(なるほど。駄菓子はあやかしにお願いをするときの取引材料ってわけだ)
やり取りを見ながら、美緒は納得した。
ショッピングモールで珍しく朝陽が買ってほしいと頼んできたのは、このためだったらしい。
「回ってくれるならお礼にやるよ。一袋全部」
「一袋全部!? よし任せろ! 待っておれ!」
嬉々として火の玉は上昇し、大きく円を描いて飛んだ。
回る火の玉を上空から見つけたらしく、しばらくして、空から真っ黒な一反木綿が下りてきた。
「どうもどうも~! 木綿便をご利用でしょうか?」
一反木綿の目は横線一本で表せるほど細かった。
真っ黒な手で揉み手をしている。
全身黒だとばかり思っていたが、美緒の目線より下降したその背面には、赤い椿の模様が描かれていた。
色鮮やかな椿を見て、美緒は目を見開いた。
「椿さん! 椿さんですよね!? お久しぶりです!」
「おおっ!? そういうキミは美緒ちゃんじゃないっすか! 久しぶりっすー!」
一反木綿――椿がぺらぺらな両手の手のひらを向けてきたため、潰さないように注意してその薄い両手を握り、上下に振って再会を喜び合う。
「知り合いか?」
「うん。何度かうちのお茶会に参加してくれた一反木綿さん。引っ越すとき、飛んで会いに行くって言ってくれたのも椿さんだよ」
手のひら全体で椿を示す。
「初めましてっす。オイラ椿っていいます。以後よろしくっす。もしかしてアナタが銀太くんっすか? 美緒ちゃんの探してた」
椿がふよふよと漂い、朝陽に近づく。
「いえ。おれは銀太の兄で朝陽といいます。銀太は一年前に亡くなりました」
「そうか、それは残念っすね……お悔やみ申し上げるっす」
椿がぺらりと動いて頭を下げると、朝陽も会釈を返した。
「ええと、わたしは……」
「彼女も狐だよ」
視線を向けられたような気がして、返答に窮した美緒の代わりに、朝陽がさらりと嘘を吐く。
「そんなことはいいから、一反木綿を呼びたいんだ。空で客待ちをしている彼らに見えるように、くるりと大きく回ってくれないか」
言いながら、朝陽はトートバッグからスナック菓子を取り出した。
包装紙には激辛ハバネロ味と書いてあり、可愛くデフォルメされたどくろマークがついている。
辛いものが苦手な美緒にとっては、手を出す気にもならない品物だ。
「おお、それは、現世の菓子ではないか! しかもその絵は唐辛子じゃな!? わし好みのからーいやつじゃな!?」
歓喜を示すように、火の玉がくるくる踊った。
(なるほど。駄菓子はあやかしにお願いをするときの取引材料ってわけだ)
やり取りを見ながら、美緒は納得した。
ショッピングモールで珍しく朝陽が買ってほしいと頼んできたのは、このためだったらしい。
「回ってくれるならお礼にやるよ。一袋全部」
「一袋全部!? よし任せろ! 待っておれ!」
嬉々として火の玉は上昇し、大きく円を描いて飛んだ。
回る火の玉を上空から見つけたらしく、しばらくして、空から真っ黒な一反木綿が下りてきた。
「どうもどうも~! 木綿便をご利用でしょうか?」
一反木綿の目は横線一本で表せるほど細かった。
真っ黒な手で揉み手をしている。
全身黒だとばかり思っていたが、美緒の目線より下降したその背面には、赤い椿の模様が描かれていた。
色鮮やかな椿を見て、美緒は目を見開いた。
「椿さん! 椿さんですよね!? お久しぶりです!」
「おおっ!? そういうキミは美緒ちゃんじゃないっすか! 久しぶりっすー!」
一反木綿――椿がぺらぺらな両手の手のひらを向けてきたため、潰さないように注意してその薄い両手を握り、上下に振って再会を喜び合う。
「知り合いか?」
「うん。何度かうちのお茶会に参加してくれた一反木綿さん。引っ越すとき、飛んで会いに行くって言ってくれたのも椿さんだよ」
手のひら全体で椿を示す。
「初めましてっす。オイラ椿っていいます。以後よろしくっす。もしかしてアナタが銀太くんっすか? 美緒ちゃんの探してた」
椿がふよふよと漂い、朝陽に近づく。
「いえ。おれは銀太の兄で朝陽といいます。銀太は一年前に亡くなりました」
「そうか、それは残念っすね……お悔やみ申し上げるっす」
椿がぺらりと動いて頭を下げると、朝陽も会釈を返した。
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