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28:狐と人魚の口論(1)
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(拝啓、天国にいるお母さん、おばあちゃん。お元気でしょうか。美緒は元気です。姫子ちゃんという人魚をアパートに迎えてからというもの、朝陽くんの特訓のおかげで彼女は上手に人に化けられるようになりました。まだ二本足で歩くことに慣れず、たまに転んだりすることもありますが、そこは今日から同じ高校に通う者同士、うまくフォローしてあげられたらと思います)
美緒は朝食を口に運びながら、視線だけ動かして自分の格好を見下ろした。
紺色を基調としたブレザーに、校章入りのハイソックス。
胸元を飾る赤いリボンは新品そのものだし、プリーツスカートにはまだ皺らしい皺もついていない。
(そうです。美緒は無事に入学式の朝を迎えることができました。思い返せば、美緒は頭がいいからと、お母さんの母校である光瑛高校への進学を勧めてくれたのはおばあちゃんでしたね。懐かしいです。さて、そんな記念すべき高校生活初日の朝なわけですが――)
「だから塩よ、塩。塩が一番シンプルで良いに決まってるわ。卵の味も引き立つし」
「うるさいな、人が何をかけようと勝手だろ」
「人ってあんた狐じゃないの」
「それを言うならお前だって魚だろうが。とにかくおれは醤油派なんだよ。出来立てのご飯の上に半熟の目玉焼きを乗せて、醤油をかけて食べるのが好きなんだ」
(――わたしの前では狐と魚が『目玉焼きには何をかけるか』論争を熱く繰り広げております)
美緒たちはリビングの丸い座卓を三人(+幽霊の狐一匹)で囲んでいた。
朝陽が用意した朝食の中の一品――ハムとサラダが添えられた目玉焼きを前に、言い争うのは姫子と朝陽だ。
姫子は狸のあやかしが大家を務める向かいのアパートの住人となったのだが、美緒が人としての一般常識を、朝陽が人に化ける術を教えるため、この部屋で寝食を共にしてきた。
朝陽の特訓の甲斐あって、昨日の昼に姫子は人に化けられるようになった。
教えるべきことは教えたし、もう大丈夫だろうということで、美緒たちは夕食を済ませた夜、彼女の荷物を持って向かいのアパートまで送り届けた。
これで朝陽と銀太と三人での生活になると思いきや、姫子は二時間後に戻って来た。
美緒と朝陽が手分けして運んだ大きな荷物を背中に担いで。
不貞腐れた子どもみたいな、バツの悪そうな顔で。
皆が驚いて理由を尋ねたが、どうにも歯切れが悪い彼女を見て、美緒は察した。
一人になるのが寂しかったんだろうな、と。
美緒は朝食を口に運びながら、視線だけ動かして自分の格好を見下ろした。
紺色を基調としたブレザーに、校章入りのハイソックス。
胸元を飾る赤いリボンは新品そのものだし、プリーツスカートにはまだ皺らしい皺もついていない。
(そうです。美緒は無事に入学式の朝を迎えることができました。思い返せば、美緒は頭がいいからと、お母さんの母校である光瑛高校への進学を勧めてくれたのはおばあちゃんでしたね。懐かしいです。さて、そんな記念すべき高校生活初日の朝なわけですが――)
「だから塩よ、塩。塩が一番シンプルで良いに決まってるわ。卵の味も引き立つし」
「うるさいな、人が何をかけようと勝手だろ」
「人ってあんた狐じゃないの」
「それを言うならお前だって魚だろうが。とにかくおれは醤油派なんだよ。出来立てのご飯の上に半熟の目玉焼きを乗せて、醤油をかけて食べるのが好きなんだ」
(――わたしの前では狐と魚が『目玉焼きには何をかけるか』論争を熱く繰り広げております)
美緒たちはリビングの丸い座卓を三人(+幽霊の狐一匹)で囲んでいた。
朝陽が用意した朝食の中の一品――ハムとサラダが添えられた目玉焼きを前に、言い争うのは姫子と朝陽だ。
姫子は狸のあやかしが大家を務める向かいのアパートの住人となったのだが、美緒が人としての一般常識を、朝陽が人に化ける術を教えるため、この部屋で寝食を共にしてきた。
朝陽の特訓の甲斐あって、昨日の昼に姫子は人に化けられるようになった。
教えるべきことは教えたし、もう大丈夫だろうということで、美緒たちは夕食を済ませた夜、彼女の荷物を持って向かいのアパートまで送り届けた。
これで朝陽と銀太と三人での生活になると思いきや、姫子は二時間後に戻って来た。
美緒と朝陽が手分けして運んだ大きな荷物を背中に担いで。
不貞腐れた子どもみたいな、バツの悪そうな顔で。
皆が驚いて理由を尋ねたが、どうにも歯切れが悪い彼女を見て、美緒は察した。
一人になるのが寂しかったんだろうな、と。
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