美緒と狐とあやかし語り〜あなたのお悩み、解決します!〜

星名柚花

文字の大きさ
28 / 127

28:狐と人魚の口論(1)

しおりを挟む
(拝啓、天国にいるお母さん、おばあちゃん。お元気でしょうか。美緒は元気です。姫子ちゃんという人魚をアパートに迎えてからというもの、朝陽くんの特訓のおかげで彼女は上手に人に化けられるようになりました。まだ二本足で歩くことに慣れず、たまに転んだりすることもありますが、そこは今日から同じ高校に通う者同士、うまくフォローしてあげられたらと思います)

 美緒は朝食を口に運びながら、視線だけ動かして自分の格好を見下ろした。
 紺色を基調としたブレザーに、校章入りのハイソックス。

 胸元を飾る赤いリボンは新品そのものだし、プリーツスカートにはまだ皺らしい皺もついていない。

(そうです。美緒は無事に入学式の朝を迎えることができました。思い返せば、美緒は頭がいいからと、お母さんの母校である光瑛高校への進学を勧めてくれたのはおばあちゃんでしたね。懐かしいです。さて、そんな記念すべき高校生活初日の朝なわけですが――)

「だから塩よ、塩。塩が一番シンプルで良いに決まってるわ。卵の味も引き立つし」
「うるさいな、人が何をかけようと勝手だろ」
「人ってあんた狐じゃないの」
「それを言うならお前だって魚だろうが。とにかくおれは醤油派なんだよ。出来立てのご飯の上に半熟の目玉焼きを乗せて、醤油をかけて食べるのが好きなんだ」

(――わたしの前では狐と魚が『目玉焼きには何をかけるか』論争を熱く繰り広げております)

 美緒たちはリビングの丸い座卓を三人(+幽霊の狐一匹)で囲んでいた。

 朝陽が用意した朝食の中の一品――ハムとサラダが添えられた目玉焼きを前に、言い争うのは姫子と朝陽だ。

 姫子は狸のあやかしが大家を務める向かいのアパートの住人となったのだが、美緒が人としての一般常識を、朝陽が人に化ける術を教えるため、この部屋で寝食を共にしてきた。

 朝陽の特訓の甲斐あって、昨日の昼に姫子は人に化けられるようになった。
 教えるべきことは教えたし、もう大丈夫だろうということで、美緒たちは夕食を済ませた夜、彼女の荷物を持って向かいのアパートまで送り届けた。

 これで朝陽と銀太と三人での生活になると思いきや、姫子は二時間後に戻って来た。

 美緒と朝陽が手分けして運んだ大きな荷物を背中に担いで。
 不貞腐れた子どもみたいな、バツの悪そうな顔で。

 皆が驚いて理由を尋ねたが、どうにも歯切れが悪い彼女を見て、美緒は察した。

 一人になるのが寂しかったんだろうな、と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

眠らせ森の恋

菱沼あゆ
キャラ文芸
 新米秘書の秋名つぐみは、あまり顔と名前を知られていないという、しょうもない理由により、社長、半田奏汰のニセの婚約者に仕立て上げられてしまう。  なんだかんだで奏汰と同居することになったつぐみは、襲われないよう、毎晩なんとかして、奏汰をさっさと眠らせようとするのだが――。  おうちBarと眠りと、恋の物語。

【完結】皇帝の寵妃は謎解きよりも料理がしたい〜小料理屋を営んでいたら妃に命じられて溺愛されています〜

空岡立夏
キャラ文芸
【完結】 後宮×契約結婚×溺愛×料理×ミステリー 町の外れには、絶品のカリーを出す小料理屋がある。 小料理屋を営む月花は、世界各国を回って料理を学び、さらに絶対味覚がある。しかも、月花の味覚は無味無臭の毒すらわかるという特別なものだった。 月花はひょんなことから皇帝に出会い、それを理由に美人の位をさずけられる。 後宮にあがった月花だが、 「なに、そう構えるな。形だけの皇后だ。ソナタが毒の謎を解いた暁には、廃妃にして、そっと逃がす」 皇帝はどうやら、皇帝の生誕の宴で起きた、毒の事件を月花に解き明かして欲しいらしく―― 飾りの妃からやがて皇后へ。しかし、飾りのはずが、どうも皇帝は月花を溺愛しているようで――? これは、月花と皇帝の、食をめぐる謎解きの物語だ。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...