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44:侯爵家の雇われ傭兵団(2)
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「先代の侯爵様やイグニス様から直々にスカウトされた民間人も何人かはいるけど、少数派っすね。腕の立つ奴はみんな冒険者ギルドに入りたがるっす。箔がつくし、ギルドが提携しているおかげで武器や防具も安く手に入るっすよ。お得っす」
「冒険者ってそんなこともするんですね。てっきり遺跡の調査とか、魔物退治とか、そういう派手な仕事ばかりだと」
「もちろんそういう仕事もあるっすが、傭兵業も立派な仕事の一つっす。冒険者ギルドの人間は口が堅いっす。秘密厳守っす。たとえ雇い主が変わっても、前の貴族の領地の様子や債務状況や交遊関係なんかは金を積まれても言わないっす。べらべら喋る奴は信用を失うしギルド資格を剥奪されるっすよ。いいことなしっす。食いっぱぐれるっす。領主と奥方の不倫現場見たぜうっひょー! って誰かに喋りたくてもお口チャックっすよ」
「……見たんですか?」
ラオは首と両手を同時に激しく振った。
「秘密っす。いまの発言は聞かなかったことにしてほしいっす。あ、もちろんイグニス様のことじゃないっすよ。そこだけは信じてほしいっす。イグニス様はアマーリエ様一筋っすよ。アマーリエ様もイグニス様一筋っすよ。お二人はアツアツっす。傍にいたら砂糖吐きたくなるっすよ」
「知ってます」
この前の訪問を思い出して深く頷くと、ラオも深く頷いた。
「わかってくれて嬉しいっす。俺はいまの現場を含めて四回ほど貴族に仕えてきたっすが、イグニス様ほど出来た領主はいないっすよ」
ラオはごく自然な笑みを浮かべた。
「普通の貴族は偉そうにふんぞり返って命令するだけっすよ。でもイグニス様は定期的に様子を見に来てくれるっす。ときには一緒に森を回り、俺たちと語り合いながら同じ食事を取って帰られるっす。冬になると分厚い毛布を差し入れ、温かいお茶を振る舞ってくれるっすよ。傭兵一人一人の誕生日を覚えてお祝いしてくれるっす。そんな貴族後にも先にもあの人だけっす。侯爵邸で働くメイドさんたちは生き生きしてるっす。主人が素晴らしい証拠っす」
ラオは拳で胸を叩いた。
「もしイグニス様になんかあったら俺たち全力で戦うっすよ。イグニス様が友人と認めたハクアさんもそうっす。ニナちゃんも、なんかあったら言ってほしいっす。できる限り力になるっす」
「はい。ありがとうございます」
新菜は微笑み、身を折って頭を下げた。
「冒険者ってそんなこともするんですね。てっきり遺跡の調査とか、魔物退治とか、そういう派手な仕事ばかりだと」
「もちろんそういう仕事もあるっすが、傭兵業も立派な仕事の一つっす。冒険者ギルドの人間は口が堅いっす。秘密厳守っす。たとえ雇い主が変わっても、前の貴族の領地の様子や債務状況や交遊関係なんかは金を積まれても言わないっす。べらべら喋る奴は信用を失うしギルド資格を剥奪されるっすよ。いいことなしっす。食いっぱぐれるっす。領主と奥方の不倫現場見たぜうっひょー! って誰かに喋りたくてもお口チャックっすよ」
「……見たんですか?」
ラオは首と両手を同時に激しく振った。
「秘密っす。いまの発言は聞かなかったことにしてほしいっす。あ、もちろんイグニス様のことじゃないっすよ。そこだけは信じてほしいっす。イグニス様はアマーリエ様一筋っすよ。アマーリエ様もイグニス様一筋っすよ。お二人はアツアツっす。傍にいたら砂糖吐きたくなるっすよ」
「知ってます」
この前の訪問を思い出して深く頷くと、ラオも深く頷いた。
「わかってくれて嬉しいっす。俺はいまの現場を含めて四回ほど貴族に仕えてきたっすが、イグニス様ほど出来た領主はいないっすよ」
ラオはごく自然な笑みを浮かべた。
「普通の貴族は偉そうにふんぞり返って命令するだけっすよ。でもイグニス様は定期的に様子を見に来てくれるっす。ときには一緒に森を回り、俺たちと語り合いながら同じ食事を取って帰られるっす。冬になると分厚い毛布を差し入れ、温かいお茶を振る舞ってくれるっすよ。傭兵一人一人の誕生日を覚えてお祝いしてくれるっす。そんな貴族後にも先にもあの人だけっす。侯爵邸で働くメイドさんたちは生き生きしてるっす。主人が素晴らしい証拠っす」
ラオは拳で胸を叩いた。
「もしイグニス様になんかあったら俺たち全力で戦うっすよ。イグニス様が友人と認めたハクアさんもそうっす。ニナちゃんも、なんかあったら言ってほしいっす。できる限り力になるっす」
「はい。ありがとうございます」
新菜は微笑み、身を折って頭を下げた。
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