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22:君の心に触れたくて(2)
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「……失礼しまーす」
覚悟を決めるための間を置いて、私はドアノブに手をかけた。
鍵のかかっていない扉を開け、初めてこの家に足を踏み入れたときのように、おっかなびっくり入室する。
寝るときもエアコンをかけっぱなしにしているらしく、悠紀くんの部屋は快適な温度に保たれていた。
カーテンが締められたままの薄暗い部屋を歩く。
悠紀くんの部屋に入ったのはこれが初めてなので、目に映る何もかもが興味深く、ついつい見てしまう。
本棚に入っているのは教科書や参考書、それから下の段には漫画本やゲーム攻略本が何冊か。
部屋のテレビには据え置き型ゲーム機が接続されていて、近くにある収納ラックには別のゲーム機やソフトが並んでいた。
足音を立てないように歩を進め、ベッドに歩み寄る。
悠紀くんは仰向けの姿勢で眠っていた。
「…………ふふ」
いつも彼は仏頂面とも言える無表情だけれど、寝顔はなんとも無防備で可愛らしく、自然と笑みが溢れる。
っと、ダメダメ。
私は彼を起こしに来たんだから。
眠っている少年を見下ろしてにやけているなんて、傍から見れば痴女じゃないか――いや全くその通りだといわれれば返す言葉もありませんが。
「悠紀くん。朝だよ。起きて」
屈んで彼の肩を掴み、揺さぶる。
「悠紀くん」
もう一度呼びかけながら強めに揺さぶると、長い睫毛がぴくりと動いた。
ゆっくりと瞼が開き――私と目が合うや否やその目は一瞬で見開かれ、悠紀くんは跳ね起きた。
あ、ぶつかる、と思う暇もなく。
ごがっ、という鈍い音と共に顎に衝撃が走り、瞼の裏に火花が散った。
運動神経が良ければとっさに身を引くこともできたのだろうけれど、あいにくと私の運動能力は平均値の域を出ない。
「~~~~~っ」
結果として悠紀くんは頭頂部を、私は顎を押さえ、二人して悶絶する羽目になった。
「……なんで戸川さんがここにいるんだ」
頭を片手で押さえたまま軽く首を傾げ、悠紀くんは怪訝そうな顔をした。
「亜紀くんに頼まれて……いや、ごめん。違います。私が来たかっただけなんですごめんなさい」
正直に白状して頭を下げる。
「……いや、起こしに来てくれたんだろ。ありがとう」
静かな声で言って頭から手を離し、悠紀くんは私の頭――サイドテールの根元を見た。
「それ、つけてくれてるんだな」
「うん。学校でもお守りにしようと思って」
シュシュを撫でる。
「気に入ってるなら良いけど、でも、もし義理でつけてるなら――」
「義理なんかじゃないよ、私がつけたくて。好きだから、つけてるの」
ムッとして台詞を被せると、悠紀くんは気圧されたように瞬きした。
「……ならいい」
それきり、彼は俯き加減に黙ってしまった。
雑談はいいから早く出て行ってくれ、という空気を感じて、私はこっそり落胆した。
この家で暮らし始めてもうすぐ三か月になろうとしているけれど、悠紀くんと私の間には越えられない壁がある。
会話には応じてくれるし、喜怒哀楽も見せてくれる。
でも、最後の一線で心を許していない――そう感じる。
どうしたら悠紀くんは心を開いてくれるんだろう。
表面上だけでも優しくしてもらえてるだけで感謝しなきゃいけないのはわかってるんだけど、それじゃ足りない。
亜紀くんに遠慮なく我をぶつけてるみたいに、私にもそうしてほしい。
そう願うのは我儘なのかな……。
覚悟を決めるための間を置いて、私はドアノブに手をかけた。
鍵のかかっていない扉を開け、初めてこの家に足を踏み入れたときのように、おっかなびっくり入室する。
寝るときもエアコンをかけっぱなしにしているらしく、悠紀くんの部屋は快適な温度に保たれていた。
カーテンが締められたままの薄暗い部屋を歩く。
悠紀くんの部屋に入ったのはこれが初めてなので、目に映る何もかもが興味深く、ついつい見てしまう。
本棚に入っているのは教科書や参考書、それから下の段には漫画本やゲーム攻略本が何冊か。
部屋のテレビには据え置き型ゲーム機が接続されていて、近くにある収納ラックには別のゲーム機やソフトが並んでいた。
足音を立てないように歩を進め、ベッドに歩み寄る。
悠紀くんは仰向けの姿勢で眠っていた。
「…………ふふ」
いつも彼は仏頂面とも言える無表情だけれど、寝顔はなんとも無防備で可愛らしく、自然と笑みが溢れる。
っと、ダメダメ。
私は彼を起こしに来たんだから。
眠っている少年を見下ろしてにやけているなんて、傍から見れば痴女じゃないか――いや全くその通りだといわれれば返す言葉もありませんが。
「悠紀くん。朝だよ。起きて」
屈んで彼の肩を掴み、揺さぶる。
「悠紀くん」
もう一度呼びかけながら強めに揺さぶると、長い睫毛がぴくりと動いた。
ゆっくりと瞼が開き――私と目が合うや否やその目は一瞬で見開かれ、悠紀くんは跳ね起きた。
あ、ぶつかる、と思う暇もなく。
ごがっ、という鈍い音と共に顎に衝撃が走り、瞼の裏に火花が散った。
運動神経が良ければとっさに身を引くこともできたのだろうけれど、あいにくと私の運動能力は平均値の域を出ない。
「~~~~~っ」
結果として悠紀くんは頭頂部を、私は顎を押さえ、二人して悶絶する羽目になった。
「……なんで戸川さんがここにいるんだ」
頭を片手で押さえたまま軽く首を傾げ、悠紀くんは怪訝そうな顔をした。
「亜紀くんに頼まれて……いや、ごめん。違います。私が来たかっただけなんですごめんなさい」
正直に白状して頭を下げる。
「……いや、起こしに来てくれたんだろ。ありがとう」
静かな声で言って頭から手を離し、悠紀くんは私の頭――サイドテールの根元を見た。
「それ、つけてくれてるんだな」
「うん。学校でもお守りにしようと思って」
シュシュを撫でる。
「気に入ってるなら良いけど、でも、もし義理でつけてるなら――」
「義理なんかじゃないよ、私がつけたくて。好きだから、つけてるの」
ムッとして台詞を被せると、悠紀くんは気圧されたように瞬きした。
「……ならいい」
それきり、彼は俯き加減に黙ってしまった。
雑談はいいから早く出て行ってくれ、という空気を感じて、私はこっそり落胆した。
この家で暮らし始めてもうすぐ三か月になろうとしているけれど、悠紀くんと私の間には越えられない壁がある。
会話には応じてくれるし、喜怒哀楽も見せてくれる。
でも、最後の一線で心を許していない――そう感じる。
どうしたら悠紀くんは心を開いてくれるんだろう。
表面上だけでも優しくしてもらえてるだけで感謝しなきゃいけないのはわかってるんだけど、それじゃ足りない。
亜紀くんに遠慮なく我をぶつけてるみたいに、私にもそうしてほしい。
そう願うのは我儘なのかな……。
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