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24:ビンゴです(2)
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「夏休みってあっという間に終わったよなー」
悠紀くんが黙々とサンドイッチを食べる中、亜紀くんが新しい話題を振った。
「そうだね」
私はサンドイッチの最後の一欠けらを飲み込み、頷いた。
楽しい時間はどうしてあっという間に過ぎてしまうのだろうか。
おじいちゃん先生が担当していた古典の授業なんて、時間の進みが遅すぎて、教室の時計を何度も見ては絶望したのに。
「夏休みで一番印象的だったことは何? 長野の別荘で過ごしたこと? バーベキュー? 兄ちゃんとのカラオケ? それとも花火?」
ほとんど空になったグラスをテーブルに置いて、亜紀くんが質問してきた。
「うーん、そうだね。別荘のプールで泳いだのも、真紘さんに歌ってもらったのも、みんなで花火をしたのも映画鑑賞会も全部楽しかったけど……一番印象的って言われると、やっぱり亜由美さんのお墓参りをさせてもらったことかな。一度ご挨拶したいと思ってたから」
私は他人でしかないのに、正孝さんも、他の皆も大切なお母様のお墓参りを許してくれた。
疑似家族として受け入れられたような気がして、本当に嬉しかった。
「……へえ」
亜紀くんは一瞬びっくりしたように目を大きくしてから微笑んだ。
「そっか。それが一番に来るんだ。紬ちゃんって本当にいい子だよな」
「そんなことないよ」
さっきだって、寝顔が見たいという邪な理由で亜紀くんの提案に乗り、悠紀くんの迷惑顧みずに部屋に行ったわけだし。
善人なんてとんでもない、日々煩悩と戦いまくりのごく普通の人間です。
私は亜紀くんの視線から逃れるように悠紀くんを見た。
そこに何があるというのか、悠紀くんはカフェオレを飲みながら庭の一点を眺めている。
視線を追うと、トレニアが植えられた花壇ではなく、花壇の横の何もない空間を見ているようだ。
悠紀くんはどことも知れない場所を見ていることがある。
ショッピングモールでも似たようなことがあったし、私たちが出会った橋の上でもそう。
あのとき悠紀くんは増水した川を見ていた、と言っていたけれど――果たして本当にそうなんだろうか?
ただ川を見ていただけなら、どうしてあんな暗い顔をしていたの?
「悠紀くんって、人には見えないものが見えてたりする?」
「…………」
不意を突いた質問にも悠紀くん本人は表情筋を一ミリも動かさなかったけれど、隣にいる亜紀くんは飲み干そうとしていたコーヒーを噴きそうになったのか、グラスを口から離して咳き込んだ。
ビンゴらしい。
亜紀くんがいる前で尋ねたのは正解だった。
ナイス判断だ、私。
「えー、なんで? なんでわかったの?」
「おい」
悠紀くんは誤魔化そうともしない亜紀くんを咎めるように睨んだ。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫だって。紬ちゃんなら持ち前の広い心で全部まるっと受け止めてくれるって。『せんせー、ゆーきくんがまた変なこと言ってまーす』『頭大丈夫?』『中二病乙』『あいつ虚言癖あるわヤバい』『あなた疲れてるのよ』とかボロクソ言ってた奴らとは違うって」
「そんなこと言われてきたの……?」
もしそれが本当なら、他人に軽々しく話す気になれないのは当然だ。
同情の眼差しを向けていると、悠紀くんはやがて諦めたように嘆息した。
悠紀くんが黙々とサンドイッチを食べる中、亜紀くんが新しい話題を振った。
「そうだね」
私はサンドイッチの最後の一欠けらを飲み込み、頷いた。
楽しい時間はどうしてあっという間に過ぎてしまうのだろうか。
おじいちゃん先生が担当していた古典の授業なんて、時間の進みが遅すぎて、教室の時計を何度も見ては絶望したのに。
「夏休みで一番印象的だったことは何? 長野の別荘で過ごしたこと? バーベキュー? 兄ちゃんとのカラオケ? それとも花火?」
ほとんど空になったグラスをテーブルに置いて、亜紀くんが質問してきた。
「うーん、そうだね。別荘のプールで泳いだのも、真紘さんに歌ってもらったのも、みんなで花火をしたのも映画鑑賞会も全部楽しかったけど……一番印象的って言われると、やっぱり亜由美さんのお墓参りをさせてもらったことかな。一度ご挨拶したいと思ってたから」
私は他人でしかないのに、正孝さんも、他の皆も大切なお母様のお墓参りを許してくれた。
疑似家族として受け入れられたような気がして、本当に嬉しかった。
「……へえ」
亜紀くんは一瞬びっくりしたように目を大きくしてから微笑んだ。
「そっか。それが一番に来るんだ。紬ちゃんって本当にいい子だよな」
「そんなことないよ」
さっきだって、寝顔が見たいという邪な理由で亜紀くんの提案に乗り、悠紀くんの迷惑顧みずに部屋に行ったわけだし。
善人なんてとんでもない、日々煩悩と戦いまくりのごく普通の人間です。
私は亜紀くんの視線から逃れるように悠紀くんを見た。
そこに何があるというのか、悠紀くんはカフェオレを飲みながら庭の一点を眺めている。
視線を追うと、トレニアが植えられた花壇ではなく、花壇の横の何もない空間を見ているようだ。
悠紀くんはどことも知れない場所を見ていることがある。
ショッピングモールでも似たようなことがあったし、私たちが出会った橋の上でもそう。
あのとき悠紀くんは増水した川を見ていた、と言っていたけれど――果たして本当にそうなんだろうか?
ただ川を見ていただけなら、どうしてあんな暗い顔をしていたの?
「悠紀くんって、人には見えないものが見えてたりする?」
「…………」
不意を突いた質問にも悠紀くん本人は表情筋を一ミリも動かさなかったけれど、隣にいる亜紀くんは飲み干そうとしていたコーヒーを噴きそうになったのか、グラスを口から離して咳き込んだ。
ビンゴらしい。
亜紀くんがいる前で尋ねたのは正解だった。
ナイス判断だ、私。
「えー、なんで? なんでわかったの?」
「おい」
悠紀くんは誤魔化そうともしない亜紀くんを咎めるように睨んだ。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫だって。紬ちゃんなら持ち前の広い心で全部まるっと受け止めてくれるって。『せんせー、ゆーきくんがまた変なこと言ってまーす』『頭大丈夫?』『中二病乙』『あいつ虚言癖あるわヤバい』『あなた疲れてるのよ』とかボロクソ言ってた奴らとは違うって」
「そんなこと言われてきたの……?」
もしそれが本当なら、他人に軽々しく話す気になれないのは当然だ。
同情の眼差しを向けていると、悠紀くんはやがて諦めたように嘆息した。
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