少し不思議な日向くんと、一つ屋根の下で

星名柚花

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43:不健全な執着(1)

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「え、どう見てもバレバレなんだけど……そもそも好きじゃなら私を呼び出して、悠紀くんへの気持ちを聞き出そうとしたりしないでしょ? 授業中もちらちら悠紀くんのほうを見てたよね。私、一番後ろの席だから。見てたよ」
「~~~~」
 神谷さんは赤面し、身体の横で両手を握ってぷるぷる震えている。

「私も神谷さんに聞きたいことがあったんだ。文化祭の出し物を妖怪喫茶にしようっていう案が出たとき、悠紀くんを見たよね。もしかして神谷さんって、悠紀くんが、その……」
 妖怪が見えることを知っている? と聞きかけて、止める。

 偶然のタイミングで神谷さんが悠紀くんを見ただけなら藪蛇になってしまう。

「……いや、なんでもない。忘れて。ごめん――」
 私は右手を振り、その手を掴まれた。

「ちょっと待ちなさいよ」
 神谷さんは心の奥底まで見通そうとするかのような、真剣な瞳を私に向けてきた。

「あんたまさか、知ってるの? 日向くんの秘密。妖怪が見えること」
「!! 神谷さんも知ってたの!?」
「へえ」
 神谷さんは不愉快そうに顔を歪め、振り払うように私の手を離した。

「そうなんだ。日向くん、秘密まで話してるんだ。ふーん、そう……仲がよろしいようで大変結構ですこと……」
 神谷さんはそっぽ向いた。
 台詞とは裏腹に、歯ぎしりの音がここまで聞こえてきた。

「……もしかして、あんたも見える人なの?」
 歯ぎしりを止めて、神谷さんがこちらを向く。

「ううん、私は何も」
 首を振った瞬間。
 雲間に太陽の光が差したかのように、ぱーっと神谷さんの顔が輝いた。

「あらそうなの! 見えないの! 見えないただの凡人なの! まあ可哀想! 戸川さんはあたしたちとは生きる世界が違う人なのね!」
 物凄く嬉しそうに言って、神谷さんは肩口で切り揃えた髪を右手で払った。
 その台詞に強烈な違和感を覚え、今度は私が神谷さんの手を掴んで動きを封じる番だった。

「ちょっと待って。あたしたちって――まさか、神谷さんも見える人なの!?」
「そうよ。あたしには妖怪が見えるわ。日向くんと同じように」
 神谷さんは優越感に満ちた笑みを浮かべて右手の人差し指を伸ばし、給水塔のほうを指さした。

「ここには物凄く巨大な蛇がいる。戸川さんにはわからないでしょうけどね」
「ううん。確かに私にはわからないけれど、知ってる。悠紀くんに聞いたよ。この校舎には白い蛇が巻き付いてるって……」
 この屋上で最も高い場所にある給水塔を見つめる。

 やはり私の目には何の異変も見えない。
 わずかな異変――空間が揺らぐことも、黒い影が見えることもない。

 でも、神谷さんには見えているのか。
 私には想像もつかないほどの、巨大な白い蛇の姿が。

「本当に神谷さんには見えてるの? そこには何があるの? 蛇の頭? 胴体? 尻尾?」
「頭よ。パライバトルマリンのような青い瞳であたしたちを見てる」
「…………!!」
 電撃が全身を打った。
 蛇がどんな目の色をしているのかは悠紀くんに聞いていない。

 パライバトルマリンというのが何のことかはわからないけれど、後でネットで検索してみて、蛇の目の色はこの色かと聞いて、悠紀くんがそうだと答えたなら確定。

 悠紀くんが言ってた人物って、神谷さんのことだったんだ……。
 呆けていると、神谷さんはふふんと笑った。
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