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74:ある雨の日の放課後に(12)
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「じゃあ、結局、あやかしが満足するまで悠紀くんは異界に囚われ続けたんだね?」
「ああ。今回も似たような事件なら、その、黒い仮面? が満足したら悠紀は戻ってくるはずだけど……」
鏡を手の甲で一つ叩き、亜紀くんは口をつぐんだ。
果たしてあやかしはいつ満足するのか。
あと数分で悠紀くんは解放されるのか、それとも死ぬまで永遠に出てこられないのか。
重い沈黙が落ちる。
また新たな生徒が階段を下りてきた。
時間が経つにつれて校舎内の人数は減り続けているけれど、それでも聞こえてくる生徒の声が途絶えることはない。
みんな文化祭準備を楽しんでいる。
現実逃避のように、作業を投げっぱなしにして悪かったな、後で花菜ちゃんたちに謝ろう、と思った。
「……いま何時かな」
私は誰にともなく聞いた。
時刻を確認できるスマホはカバンの中に入れたままだ。
「六時五十分」
ポケットからスマホを取り出して、亜紀くんが言った。
七時二十分には下校を促すアナウンスとBGMが流れ始める。
「あと三十分で学校が閉まっちゃう。どうしよう……」
私は両手で顔を覆った。
どうしよう、どうしたらいい?
このまま無力に待ち続けるなんて嫌なのに、解決策が見つからない。
「……あのさ」
ただ時間が過ぎていく中、不意に保坂くんが声を上げた。
そちらに顔を向けると、彼は人差し指で天井を指さした。
「?」
「オレもそれしかないと思う」
亜紀くんは頷き、何のことかわからず困惑している私と神谷さんを交互に見た。
「困ったときの神頼み、って言葉があるだろ? で、この校舎に取り憑いてるのは――」
『神様!!!』
私と神谷さんの声が唱和する。
「行こう!!」
私は駆け出した。
もう言葉は要らず、全員で階段を駆け上る。
外は雨だが、傘を取りに行く時間が惜しい。
程なくして屋上に着き、私は鍵を開ける作業さえもどかしく思いながら鍵を開け、力いっぱい扉を引き開けた。
屋上に飛び出すと、たちまち雨が全身を叩いた。
風が強い。耳元でごうごう唸っている。
悠紀くんと出会った日も雨だったなと、私は思い返して苦笑した。
あのときは、彼がこんなに大事な人になるなんて思ってもいなかった。
引き離されただけで、胸が千切れそうなほどに痛い。
私は彼がいなくなったら生きていけない。
「――山神さま!!!」
吹き荒れる風に髪を押さえ、屋上の中央で大声を張り上げる。
雨粒が入り込んできて、目を開けているのも辛く、私は両目を細めて手で庇を作った。
「お願いがあるんです!! 悠紀くんがこの校舎の、西階段の、踊り場にある鏡の中に囚われてしまったんです!! どうか助けてください!!」
暗闇の中、雨に打たれながら屋上で叫ぶ私は、傍から見るとただの頭のおかしい人だ。
亜紀くんたちは私の後ろに立ったまま何も言わない。
全てを私に託してくれているようだ。
意外なことに、神谷さんも。
「お願いします! もう山神さまに頼るしかないんです。悠紀くんは私の恩人で、誰よりも、私の命よりも大切な人なんです。どうか彼を異界から連れ戻してください。私はまだ大切なことを彼に伝えてないんです」
感情が高ぶって、涙がこぼれる。
いま山神さまはここにいるのだろうか。
不安が胸を締め付け、呼吸さえも苦しい。
仮にここが山神さまの住処なのだとしても、二十四時間家にこもってる人なんていない。
ひょっとしたら気まぐれに雨の中、散歩に出かけているかもしれない。
もしそうなら私の行動には何の意味もない――唇を強く噛む。
「ああ。今回も似たような事件なら、その、黒い仮面? が満足したら悠紀は戻ってくるはずだけど……」
鏡を手の甲で一つ叩き、亜紀くんは口をつぐんだ。
果たしてあやかしはいつ満足するのか。
あと数分で悠紀くんは解放されるのか、それとも死ぬまで永遠に出てこられないのか。
重い沈黙が落ちる。
また新たな生徒が階段を下りてきた。
時間が経つにつれて校舎内の人数は減り続けているけれど、それでも聞こえてくる生徒の声が途絶えることはない。
みんな文化祭準備を楽しんでいる。
現実逃避のように、作業を投げっぱなしにして悪かったな、後で花菜ちゃんたちに謝ろう、と思った。
「……いま何時かな」
私は誰にともなく聞いた。
時刻を確認できるスマホはカバンの中に入れたままだ。
「六時五十分」
ポケットからスマホを取り出して、亜紀くんが言った。
七時二十分には下校を促すアナウンスとBGMが流れ始める。
「あと三十分で学校が閉まっちゃう。どうしよう……」
私は両手で顔を覆った。
どうしよう、どうしたらいい?
このまま無力に待ち続けるなんて嫌なのに、解決策が見つからない。
「……あのさ」
ただ時間が過ぎていく中、不意に保坂くんが声を上げた。
そちらに顔を向けると、彼は人差し指で天井を指さした。
「?」
「オレもそれしかないと思う」
亜紀くんは頷き、何のことかわからず困惑している私と神谷さんを交互に見た。
「困ったときの神頼み、って言葉があるだろ? で、この校舎に取り憑いてるのは――」
『神様!!!』
私と神谷さんの声が唱和する。
「行こう!!」
私は駆け出した。
もう言葉は要らず、全員で階段を駆け上る。
外は雨だが、傘を取りに行く時間が惜しい。
程なくして屋上に着き、私は鍵を開ける作業さえもどかしく思いながら鍵を開け、力いっぱい扉を引き開けた。
屋上に飛び出すと、たちまち雨が全身を叩いた。
風が強い。耳元でごうごう唸っている。
悠紀くんと出会った日も雨だったなと、私は思い返して苦笑した。
あのときは、彼がこんなに大事な人になるなんて思ってもいなかった。
引き離されただけで、胸が千切れそうなほどに痛い。
私は彼がいなくなったら生きていけない。
「――山神さま!!!」
吹き荒れる風に髪を押さえ、屋上の中央で大声を張り上げる。
雨粒が入り込んできて、目を開けているのも辛く、私は両目を細めて手で庇を作った。
「お願いがあるんです!! 悠紀くんがこの校舎の、西階段の、踊り場にある鏡の中に囚われてしまったんです!! どうか助けてください!!」
暗闇の中、雨に打たれながら屋上で叫ぶ私は、傍から見るとただの頭のおかしい人だ。
亜紀くんたちは私の後ろに立ったまま何も言わない。
全てを私に託してくれているようだ。
意外なことに、神谷さんも。
「お願いします! もう山神さまに頼るしかないんです。悠紀くんは私の恩人で、誰よりも、私の命よりも大切な人なんです。どうか彼を異界から連れ戻してください。私はまだ大切なことを彼に伝えてないんです」
感情が高ぶって、涙がこぼれる。
いま山神さまはここにいるのだろうか。
不安が胸を締め付け、呼吸さえも苦しい。
仮にここが山神さまの住処なのだとしても、二十四時間家にこもってる人なんていない。
ひょっとしたら気まぐれに雨の中、散歩に出かけているかもしれない。
もしそうなら私の行動には何の意味もない――唇を強く噛む。
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