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22:お幸せに?
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「どうしたの? 吉沢さん。深刻そうな顔してるけど、何かあった?」
スマホの電源ボタンを押し、裏返して机に置く。
「……本当は知ってた。放課後、豆田くんを庇ったあんたを見た時から気づいてたの」
吉沢さんはわけのわからないことを言いながら俯き、身体の前で両手を組んだ。
「でも、あのときは正式なカップルになってなかったみたいだし、まだチャンスはあるかもと思って頑張ってたのよ……ふふ。とんだ道化だったわ。いざはっきり現実を突きつけられると堪《こた》えるものね」
「あの、さっきから、何の話?」
首を傾げる。
吉沢さんは口元を押さえて背中を向けた。
「……お幸せにっ!」
「何が!? ちょっと、意味がわからないんだけど、吉沢さーん!?」
手を伸ばしても届かず、彼女は泣きながら廊下に出て行ってしまった。
ふと気づけば、放課後に居残っていたクラスメイトのほとんどが生温かい視線を私たちに注いでいる。
中には大きく頷いてきたり、頑張れとでも言うように親指を立ててくる子もいた。
こ、これはまずい!
なんか変な誤解されてるっぽいぞ!?
考えてみればあれだけ大声で会話し、机を叩いて音を立てたりしていたのだから、注意を引くのは当然のことだ。
場所を変えればよかった。
もっと冷静に話せばよかったと思っても、後の祭り。
「ね、ねえ豆田くん。私たち、なんか誤解されてるみたいだよ? どうしよう」
身体を寄せて、小声で相談する。
「別にいいんじゃね? 言いたい奴には好きに言わせておけば」
豆田くんの対応はクールだった。
私と噂されても構わない、らしい。
「折原が嫌なら否定しとくけど、どうする?」
黒い瞳が私を見つめる。
え。
いや、私は……うん、豆田くんがいいなら別に。構わないな。
「……ううん。私も別にいいや」
ふるふると頭を振る。
「そ」
それきり表面上、私と彼との間に会話はなかったけれど、私はラインを開いて彼にメッセージを送った。
『これからよろしくね』
数秒して、ラインが返ってきた。
『よろしく』とお辞儀するクマのスタンプ。
豆田くんってこういうスタンプ使うんだなぁ。
私は幸せな気持ちでスタンプを眺め、微笑んだ。
スマホの電源ボタンを押し、裏返して机に置く。
「……本当は知ってた。放課後、豆田くんを庇ったあんたを見た時から気づいてたの」
吉沢さんはわけのわからないことを言いながら俯き、身体の前で両手を組んだ。
「でも、あのときは正式なカップルになってなかったみたいだし、まだチャンスはあるかもと思って頑張ってたのよ……ふふ。とんだ道化だったわ。いざはっきり現実を突きつけられると堪《こた》えるものね」
「あの、さっきから、何の話?」
首を傾げる。
吉沢さんは口元を押さえて背中を向けた。
「……お幸せにっ!」
「何が!? ちょっと、意味がわからないんだけど、吉沢さーん!?」
手を伸ばしても届かず、彼女は泣きながら廊下に出て行ってしまった。
ふと気づけば、放課後に居残っていたクラスメイトのほとんどが生温かい視線を私たちに注いでいる。
中には大きく頷いてきたり、頑張れとでも言うように親指を立ててくる子もいた。
こ、これはまずい!
なんか変な誤解されてるっぽいぞ!?
考えてみればあれだけ大声で会話し、机を叩いて音を立てたりしていたのだから、注意を引くのは当然のことだ。
場所を変えればよかった。
もっと冷静に話せばよかったと思っても、後の祭り。
「ね、ねえ豆田くん。私たち、なんか誤解されてるみたいだよ? どうしよう」
身体を寄せて、小声で相談する。
「別にいいんじゃね? 言いたい奴には好きに言わせておけば」
豆田くんの対応はクールだった。
私と噂されても構わない、らしい。
「折原が嫌なら否定しとくけど、どうする?」
黒い瞳が私を見つめる。
え。
いや、私は……うん、豆田くんがいいなら別に。構わないな。
「……ううん。私も別にいいや」
ふるふると頭を振る。
「そ」
それきり表面上、私と彼との間に会話はなかったけれど、私はラインを開いて彼にメッセージを送った。
『これからよろしくね』
数秒して、ラインが返ってきた。
『よろしく』とお辞儀するクマのスタンプ。
豆田くんってこういうスタンプ使うんだなぁ。
私は幸せな気持ちでスタンプを眺め、微笑んだ。
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