いつまでも共に

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出会い

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 私はヒトに乗り移った。そしてその身体と記憶、趣味嗜好や思考まで、様々なものを共有した。
 この身体の主はどうやらこの『クルマ』と呼ばれるものに乗るところだったようだ。手に入れて間もない身体を屈め、席に座る。
 すごいスピードでクルマが走っていくなか、私はどのようにして襲うかを考えた。昔のように無差別に場を考えずに襲っていては、また封印されてしまう。この車の中には隣に座る少女と運転席に座る少女の母親の2人がいる。しかし、ここは街中だ。ここで襲えば私の存在が世にバレてしまう。それは不利益だ。しかし、このクルマが人気の少ないところに向かう様子はない。むしろ人の多いほうへ向かっているようだった。これでは襲いようもないな、と結論付け、外に広がる未来の姿をしばら眺めた。
 車が走り出しておよそ20分経ったくらいのことだった。右腹部に突然激痛が走った。右を見ると、そこには笑顔で私の脇腹に手を突き刺す少女の姿があった。
「なにボーッとしてんのユースケ!らしくないじゃん!」と、笑顔で言う少女のことを、私は全く理解できなかった。記憶を辿ればこの少女は幼い頃から一緒にいる『オサナナジミ』というもののはずだが、もうこれは吸血鬼よりも恐ろしいと言っていいだろう。私が決めた。
 しかし、記憶を辿ればこれは日常的なものらしい。ただし、なぜかこれは彼にとって悪いことでもなく、むしろ嬉しいことのようだ。このユースケという男も理解できない。しかし、こう考えれば少しは納得出来る

【このユースケという男はこの少女が好きなのだ】

しかし、そうだとしてもどこに惹かれたのかと考えていると、また右腹部への攻撃が飛んでくる。やはり吸血鬼より恐ろしいので間違いはなさそうだった。
「無視すんなよー、体調でも悪いのか?それとも緊張?」また少女が口を開いた。どうやら返事を返さないとまたあの攻撃が来そうだったので「だりぃ」とだけ返した。
 少女は少しの笑顔を見せ、また窓の外に視線を動かした。どうやらいじるのも飽きたらしい。その後しばらくの沈黙のあと、クルマは止まった。どうやら目的地に着いたようだった。
 降りると、その先には『入学式』の看板が立てられていた
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