元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい

文字の大きさ
18 / 21

#18 再会(2)

「では、行って参りますっ!」

「お、おう。なんか知らんが、気をつけてな?」

「はいっ!滅してきますっ!」

「……いや、何をだよ」

 学は気合い入りまくりの京子を見送った……。
 くだんの電話がかかってきた翌週の初めのことである。
 学は電話の相手と直接会うことになった。本当は土日のどちらかがよかったが、相手側の都合がつかず今日になったのだ。
 そして、学校に行った放課後。
 いつも行き帰りを共にする京子に用事があって一緒に帰れないことを告げると、何やら彼女の方も用事があるようで。
 学校前には黒塗りの長い高級車がとまっていた。
 春の麗らかさが吹き飛ぶ気炎を上げつつ、京子が車に乗り込んで行ってしまい、今に至る……。

「いざ出陣って感じだったなあ。何があるんだか」

「……後ほど否が応でもお分かりになると思います」

 隣で迎えに来ていた彩花がそんなことを言う。

「そうだな、明日聞けばいいよな」

「そのような意味で言ったのではないのですが……ともあれ、ご主人様。「九条クイーンホテル」までご案内いたします。タクシーと電車、どちらがよろしいでしょうか?」

「電車でいいよ。時間もあるしね。ナビ、よろしく」

「畏まりました、ご主人様」

 学はもう当たり前のようにメイドに先導され街中を歩いて行く――。


「見るからに高級ホテルじゃないか。しかも歴史ある感じの」

 九条クイーンホテル。
 九条家――正確に言えば、九条グループが経営する系列会社の一つ。
 そのエントランスに足を踏み入れた学はそうこぼす。
 中はきらびやかなシャンデリアがあったり、アーチのついた柱があったり、まるで宮廷のような雰囲気があったが、それ一辺倒ではなく、和風な生け花や壁紙に市松模様のアクセントなど、うまい具合に和が取り込まれている。
 まるい首をめぐらし、感嘆の息をもらす学。
 対して平然とした様子の彩花が言う。

「ここは官公庁エリアにあって、海外から訪れる要人のもてなしの時にも使われております。九条クイーンホテルと同格のものとしましては「ホテル・ビリオン」の名が挙がりますが、あちらとは品が1段も2段も違います」

「なあ、俺って学ランなんだけど。彩花はメイド服だし。場違いじゃないか?」

「よろしいのでは?あと、メイド服は冠婚葬祭からダンジョンに至るまであらりとあらゆる場面で通用するフォーマルな服装にございます。そも、ここには私以外のメイドもおります」

「――田代学様ですね、お待ちしておりました」

「気づけばメイドがいるよね、この世界。どうなってんの……」

 彩花と瓜二つのメイド服の彼女に案内され、学はエレベーターに乗る。
 学の重たい体をもたやすく受け止めるふかふかなマットレスの敷かれたそれに運ばれやって来たのは、最上階。ロイヤルスイートルームがあるフロア。
 もはやここホテルか?絶対、一泊じゃ使い切れないだろ?という広さの豪奢なリビングルームに通された。
 その瞬間――。

「てやああああ!!」

 入り口から顔を覗かせた学に飛んでくる、刃。
 しかも、その刃には紅蓮の炎が舐めるようにまとわりついている。
 一見、ピンチな状況。だが、そこは元勇者。
 学は腰が引けるどころか、一歩前に踏み込むと。
 炎の刃をかわし、その先の長い柄――薙刀のそれを掴み取る。
 前に突き出された薙刀を強引にさらに引っ張り、下手人を引き寄せた。
 
「ひゃぁ!?」

 引っ張られた下手人は学のまるい腹にぶつかってぽよよんと弾んだ。
 学は下手人が倒れないように腰を支え、薙刀をその手から取り上げて。

「室内で「魔法具」なんて振り回したら危ないだろ――京子」

「へっ?どうして学さんがここに?」

 富士額の大和撫子然とした端麗な顔立ち。
 お目々をぱちくりとさせた近衛京子と見つめ合っていると。
 一拍おいて、奥から一人の女性が飛んでくる。

「ちょ、ちょっと、京子ちゃん!?何やってるの!?今日来る男性はお姉さんの大事なお客様って言ったよね!?」

「えええええ!環さんが言っていた「素敵な男性」って学さんのことだったんですかっ!」

「素敵な男性?」

「しーっ!!それ、言っちゃ駄目なやつだからぁ!!!」

 学がパラレルワールドに帰還した2日目。
 ダンジョン前の広場で出会った、暗澹として佇んでいたデブ女――九条環との再会はなんとも締まらないものだった……。

「それにしても随分、印象が変わったな。もちろん、いい意味で」

「そ、そうかな?」

「ああ。頑張ったんだな」

「えへへ、学くんに褒められるとお姉さんも嬉しいな」

 テーブルを囲んだコの字状のソファ。それぞれの「辺」に学、京子、環は座っていた。3人の背後には彩花を含めた「メイド教団」のメイドが立っており、適宜、お菓子を出したりお茶をついだりしている。
 今、学は正面の環と自己紹介をし終わったところだ。
 環の方が学よりも三歳ほど上だが、気軽に接して欲しいと彼女にお願いされたので、くだけた感じになっている。
 学が改めて見ても環の印象は変わっていた。
 いまだぽっちゃりしているが前よりスリムになった体型はもちろんだが、優しげな垂れ目とふくよかな胸元を強調するメイクと服装は大人っぽさと色っぽさをかもし出していた。

「私が変われたのは全部、学くんのおかげだよ」

「俺は大したことしてないさ」

「そんなことはない。あの時、学くんが私に魔力を込めた魔石をくれなかったら、私は何も変わらないまま今も同じ日々を繰り返していたと思う。あの時、私を応援してくれて、勇気をくれて、本当にありがとう」

「……そっか、礼は受け取っておくよ」

 学はまだ環にどんな事情があって何に悩んでいたのかはよくは知らない。
 だが、彼女が心の底から感謝しているのだけは伝わってきた。
 そんな真面目な雰囲気――は長くは続かなかった。
 自分の言ったストレートな言葉に照れたのか、環が頬を染めてうつむくと、唇をきゅっとつぐんだまま、垂れ目な目でちらりちらりと学の顔をうかがってくる。
 そんな表情をされれば、学としても段々むずがゆくなってきて。
 学はこほんと咳払いを一つ。
 それから、京子の方へ話を振る。
 彼女は学と環の間にあるソファでしゅんと肩を落としていた。

「そろそろ京子は復活してくれ。俺は別に怒ってないから」

「そうですか……?はぁ……」

 京子は安堵と後悔が入り混じったため息を吐く。

「そもそもあの攻撃は俺にあてるつもりはなかったんだよな?」

「はい……今日来るのは、環さんを騙し食い物にするロクでもない男性の方だと思い込んでいましたから。一発ガツンとやって交渉の主導権をこちらで握るつもりだったのですが」

「ガツンとって、京子ちゃん、あなた……」

「環さんが悪いんですよ~っ、来るのが学さんならそう言ってください~」

「京子ちゃんが名前を聞かなかっただけだからね?それに、お姉さんは大丈夫?薙刀持ってるけど、大人しくしててね?交渉はお姉さんがするから、いてくれるだけで十分だからね?って何度も念を押したよね?」

「むぅ~」

「京子ちゃん?」

「はい……私が悪かったです。学さんも、環さんも勝手してしまい、申し訳ありません」

 その後は京子の機嫌も復調し、暫し歓談の時を過ごした。
 主に学に関しての話題だったが。
 学の高校でのあれこれを京子がさすがの話術で臨場感たっぷりに語り、環がそれを興味津々と聞き、学は居心地の悪さに鏡餅の置物と化してやりすごした。
 話の流れで今晩は3人でレストランで食事をすることになった。
 すでにレストランの予約は取っているという。
 だが、その前に。
 今日、学が環と直接会うに至った本題に入る――。
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第五章リード王国編

男女比の狂った世界で俺だけ美醜逆転してるんだが…。

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、青山春。 日本によく似たパラレルワールド(男女比1:9)で彼女を作るために色々する物語。 前世の記憶のせいで、俺だけ美醜が逆転してしまっているので、この世界で可愛いと言われている子達には興味がない…。 うん。ポジティブに考えれば、前世で女優やモデルを出来る容姿の子とお付き合いできるのでは!? と、幼少期に光〇氏計画を実行しようとするも断念。 その後は勉強出来るのおもしれぇ! 状態に陥り、時が流れ大学に入学。 そこで義務を思い出し二十歳までに彼女が欲しい!いなきゃしんどい!と配信を始めてみたり…。 大学の食堂で出会った美人とお近づきになろうとしたり…! 作者が暗い話が嫌いなので、基本的に明るめの話構成になってるはずです。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

「完結」ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。