無明剣零

青鳥翔

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魔法学

無明波動剣

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 次の日の朝。佐助は無事後遺症もなく回復し、カヤと一緒に朝ごはんを食べていた。

 「佐助さん。昨日はすみませんでした。」

 「カヤ様。私は体が丈夫ですのでお気にならず。それにしても昨日の絶身はとても美しく感じました。空間魔法であのような強化が出来たとは…。私の剣劇はどうでした?」

 「本当に凄かったです。人間の動きとは思えないスピードでさらに私の反撃を受け止めてしまうなんて。国一の強さを誇る佐助さんは本当に凄いです。」

 「ありがとうございます。そういえば一つ思いついたのですが、絶身を刀だけに纏う事は出来ますか?絶身をしている最中カヤ様の周りには波動が発生していました。それはとても強く、人を気絶させる力を持っています。しかしあの状態だと仲間まで気絶してしまう可能性が高い。そのため波動を剣だけにとどめ、全体を見渡す魔法を常時起動しておくのがいいかと思われます。」

 その言葉を聞いて無明剣を生み出すカヤ。

 「この剣に波動を…。」

 「そうです。ここでは危険ですので、外に出て特訓してみましょう。」

・・・

 「さて、やってみましょう。まずは意識を統一し、魔力を体全体に巡らせてみてください。」

 カヤは目を閉じ、全体に魔力を巡らせる。この時無明剣は魔力の流れによって震えていた。しかし昨日あったような異次元の力を引きだせない。やはり剣を交えないといけないのかとカヤは思いはじめていた。すると佐助はカヤの頭を軽く叩いた。

 「力みすぎています。一度見本をお見せします。はじめに刀を前にだし、目を閉じる。この時刀の声を聞くのです。カヤ様の場合魔力の声を聞く感じですね。そして、刀の先が震えだしたら、目を開く。その瞬間腕に力を込める。すると自身がどう動きたいのか刀が応える。戦いたいのか、だれかを守りたいのか。その時によって刀の動きは変わります。そして最後、体と刀を一体化する。これは説明しにくいですが自身の血液が刀に流れていくよう脳内でイメージする事です。そうすると…。」

 佐助の持っている刀が微妙に光り、なにか気が吸い込まれている。そして、波動を纏った刀が出来た。

 「これが波動剣です。カヤ様はこれを魔法のみでやってみて下さい。意識を集中させてやってみましょう。」

 「分かりました。」

 カヤは魔力を無明剣に送っている間2か月間かけて特訓してきた事を思いだしていた。魔法が暴発しないよう焦っていた事。初めて魔法を制御出来て嬉しかった事。そして皆と共に魔法を研究してきた事。その思い出はとても楽しかった。だからこそカヤは皆を守りたいという意識を保ち、無明剣に一気に魔力を注ぎこんだ。

 すると、無明剣が応えてくれたのか、強力な波動が剣の周りに纏わりついたのだ。その様子を見ていた佐助は微笑み、また木刀を取りだす。

 「その状態を維持しましょう!では稽古を始めます!」

 「はい!!」

 一瞬でカヤの間合いに入る佐助。しかし、カヤは冷静を保ち佐助の攻撃簡単に躱し、背後に出現した。その速さはたった0.5秒。無明剣と木刀がぶつかった瞬間周囲に強力な風を生みだした。それは波動同士のぶつかり合いによるものだった。

 衝撃波による暴風によって施設が揺れ、サインたちはそれに驚き施設の外に出る。するとその眼の先には互角のスピードでぶつかり合うカヤと佐助がいた。

 「え、ちょっと待って!!稽古するなんて聞いてないよ!!」

 サインが大声で叫ぶと二人の手はとまり、静寂さを取り戻した。 
 
・・・

 「こら、ふたりとも。稽古をやるなら僕たちに言って、みている前でやってよ!」

 サインは切れる。正座していた二人は「すみませんでした!!」と謝った。

 「はぁ…。でも1か月という短い期間でカヤも成長しているし、佐助は頼もしいよ。もしよかったら無明剣をもう一度みせてほしいな。」

 サインは新しくなった無明剣に惹かれ、実際に見てみると無明剣は震えていた。

 「なるほど…。これは大きな進歩だね!波動を剣に集中させる事で、味方には被害が及ばない。それでいて絶身はそのまま。前に創った無明剣・裂焔に波動を乗せる事は可能?」

 「やってみる!」

 カヤは無明剣を生み出す術式、火を起こす術式、空間情報を理解する空間魔法を同時に放出する。すると剣に火が乗り、それでいて波を感じる事が出来た。

 「凄いな…。書物にあった応用術も全て出来るようになったし、戦闘にも慣れてきている。この調子で研究を進めていこう!」

 「うん!ただ無明波動剣・裂焔って名前は長いからやっぱり無明剣の呼びのままで行こうかな。」

 絶身を纏った無明剣。これはこれから先待ち受ける試練で大きな希望となる。

・・・

 「フィアーさん、ちょっといいかな?」

 「カヤさん。どうしたの?」

 カヤの真面目な顔を見て、ただの相談ではないなと直感したフィアーはカヤに椅子に座るよう促し、話しを進めた。

 「その、無明剣なんだけど環境に影響を及ぼしていないか不安で。私の空間魔法は大地を抉る力を持っている。だからもう一度調べてほしいんだ。」

 「なるほど…。僕の考えとしては無害だと思う。カヤさんの空間魔法は酸素を凝縮して生みだしているし、自然の変化は感じられない。ただ、一つ謎な点があって、酸素は-200度以上の温度じゃないと固体にならない。しかしカヤさんの無明剣は冷たくも熱くもない。それだけが不思議なんだ。」

 フィアーの研究は進んではいたが、やはり魔法は科学では想像つかないものであった。その話を聞いている間カヤも考えていた。

 「一つあるとすれば、あの書物にあった自然が味方しているという事。それって自然自身が魔法にかわるわけだから、ありのままの物質をそのまま変化させている。つまり、自然を自然に操っているという事になると僕は考えている。さっきの波動剣についてはまだ分からないけど、空間魔法を波に変えるという事は音が関係しているのかもしれない。カヤさんの父親、あ、お父様は音を操る魔法だと言っていたよね。だから遺伝的に音魔法が体に身についているのかもしれないね。」

 「なるほど…。確かに波動を纏った無明剣は甲高い音が鳴っていた。それは佐助さんの刀もそう。ただあの強烈な風、なぜ波動を纏った剣同士がぶつかると風が発生するのか分からなくて。」

 フィアーは悩む。音が鳴る時は多少の振動が起こるが、暴風を引き起こすほどではない。しかし、波動の成分を知りたかった。そのため研究の時間をくれと言い、カヤと佐助の稽古を生で見る事となった。

 
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