無明剣零

青鳥翔

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渾沌渦巻くセキト

休日

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 「今日は快晴だな。たまには外で筋トレするか。」

 ゴズは光り輝く太陽の下で腕立てふせを始めた。たった数日で色んな事があったなと思いながら腕立てふせを数百回繰り返す。しかしある事を忘れていた。それはサウンドラ王国の歴史を知る事。それを思い出したゴズは一度腕立てふせをやめる。

 「カノンはもういないし、カヤと佐助は施設での待機命令が出ている。ブルの軍事施設にも興味があるが…。今は無理だな。」

 「ゴズ。朝早くから頑張っているね。」

 サインが声をかけてきた。振り向くと、プロテイン入りのドリンクを持っていた。

 「お、気が利くな。ありがとう。」

 「これくらいなんてことないよ。二人は今僕たちが責任を持って見守っているけど、ゴズは辛くない?体が休息を欲しているとか。」

 その言葉に対し考えるゴズ。確かに4カ月近い時をほぼ研究にあてていた。たまには休息も必要かと思ったゴズはサインに「一週間の休日が欲しい」といい、サインはそれを承知した。そしてゴズが施設から出るところでカヤと佐助が送りの挨拶に来た。

 「おお、二人とも。あれから大丈夫か?」

 「うん!佐助さんのおかげで私は前を向けることが出来たから。」

 「私もあれから毎日カヤ様のカウンセリングを受け持っています。話すたびに表情が明るくなってきているカヤ様の顔を見れて幸せです。」

 「そうか!」

 ゴズは二人の頭を撫で、「行ってくる!」と言い施設をあとにした。

・・・

 「久々に実家に戻ってみるか。両親は心配性だからな。」

 ゴズは新幹線に乗り、セキトの南側に位置する実家へと向かう。4時間はかかる道のりを座席に座り、外の景色を見て過ごしていた。都市部に近づくにつれて自然が失われていくのを見たゴズはため息をつく。

 「今は北部にしか自然がない。昔はこの辺も田んぼが広がっていたのにな。まぁ最近の科学の進歩は凄まじいからな。その土地に住む動物は困り果てていると思うが、人間には勝てない…か。サウンドラ王国が存在していた時に行きたかったな。カヤの話だけだとどういう国だったのか分からない。」

 ぼそぼそと呟くゴズ。すると隣に座っていた女性が声をかける。

 「もしかしてゴズさんですか…?カヤさんと佐助さんと共に施設で暮らしている。」

 「あぁ、本人だ。どうした?」

 その女性はなにか言いたげな動きを見せる。その姿に何事かと思ったゴズだったが次の一言で驚いた。実は彼女もサウンドラ王国を知りたがっていた歴史学者だったのだ。話を聞くと調査団に志願したらしいが、人数制限であの島に行けなかったらしい。その理由でゴズの事を羨ましがっていた。

 「なるほど…。君、名前は?」

 「わ、私の名前はサリーです。ゴズさん。もし良ければカヤさんと佐助さんの事について教えてくれませんか?気になるんです。魔法の成り立ち、特異的な体質を持った彼らの事が。」

 その言葉に戸惑うゴズ。確かに彼女の知りたいという気持ちは確かではあったが、機密事項も多い。それに加え、魔法研究調査団に志願しなかった。それが理由で無理だとゴズは言う。その言葉にへこむサリー。

 「ただ一つ俺も気になっている事があって、ブルの軍事施設。あの施設の残骸にサウンドラ王国の歴史が関わっていると思われる。ブルの戦闘機には魔道具が積まれていたから。君はサウンドラ王国と大和の国についてどれだけ知っている?」

 「私はあまり両国の事を知りません。ですが1か月に一回の報告書を楽しみにして、何度も読み返しました。そしてサウンドラ国民と大和国民の遺伝子がほぼ一致していた事に興味が沸いたのです。おかしくないですか?関わりがあったとはいえ遺伝情報もほぼかわりがない。そして電気の耐性があるという事。なぜ魔法を扱える国と扱えない国の遺伝情報が同じなのか。過去に両国はそうしなければならない事件があったのではないかと私は考えました。」

 「そう、そこなのだ!!」

 ゴズはサリーの考察と同意見だった。カヤと佐助は似ているようで似ていない。カヤを初めて目にした時、王族なのか派手なワンピースを着ていた。これはどの国でもあまり変わらない。しかし佐助はセキトに来るまで着物という服を着ていた。隣接した国であるのにここまで違うのかと疑問に思っていたゴズはサリーと両国の関係について話す事にした。

 「まずは食文化から。佐助は甘いものが好きなんだ。それも俺らがよく見るようなケーキとかではなく、豆に甘味料をつけて食べるのが普通だったらしい。発酵させたり、煮たり。俺は流石にそれには手をつけられなかったがな。」

 「豆を…。佐助さんはその料理?の名前を言ってましたか?」

 「確かメモした気がする…。あ、これだ。発酵させた豆を納豆…。甘味料をつけた豆を金時豆というらしい。」

 メモと写真をサリーに見せる。するとサリーは目を輝かせて見ていた。「こんな食べ物他の国にはない!」と言い携帯を取り出し、写真を撮る。

 「だが、サウンドラ王国の食生活は大和と違った。俺らと同じパンを主食にしていたらしい。米を焼き、胡椒をふりかけた炒飯という食べ物や海鮮を使ったどんぶりなどもあるみたいだったが、パンが主食だったとカヤが言っていた。」

 「なるほど。その炒飯という食べ物。興味深いですね。」

 サリーはゴズと同じ歴史学者。他国のあらゆる知識を取り込みたいと思っていたゴズはサリーと気が合った。そこで、ゴズはある提案をする。それは一緒に調査をしないかというもの。サリーの考察力はこれから先の未来、力になると思ったゴズは声をかける。するとサリーは「いいんですか!?」と言った。

 「最終的に決めるのはシン大統領とサイン。あと、カヤと佐助が認めなければ無理だ。だがサリーの情熱に俺は心が揺さぶられた。丁度今、首都ホースについたからシン大統領の屋敷に行こう。」

 「はい!!」

・・・

 「要件はなんだ。」

 屋敷の警備員は当然の事ながら、ゴズたちを止める。するとゴズは調査証を見せながら言った。
 
 「サウンドラ王国と大和の国の調査の幅を広げるには知識の豊富な学者がもっと必要です。その許可を貰いにきました。」

 「これは失礼しました。ゴズ様ですね。今シン大統領に通信を送りますので少々お待ちください。」

 数分後。その警備員はシンと連絡が取れ、ゴズたちを大統領の前まで送り、また警備の任に戻った。

 「シン大統領。お、いや私はサウンドラ王国と大和の歴史を詳しく知りたいのです。確かにカヤと佐助の言っている事はとても興味がそそられました。しかし、私だけでは情報不足となり、報告に間違った情報を載せてしまう可能性がある。そこで私の隣にいるサリーを我が施設の一員として迎え入れたいのです。」

 「確かに二人の力は調査の対象としては難しい事だらけだ。だが、新しい調査員を入れるわけにはいかない。理由は二つ。一つ目はカヤと佐助に危険が及ぶ可能性があるから。もし新しい調査員が二人を傷つけたら、セキトは信頼を失う。これは二人だけではなく、世界的に見ての事だ。そして二つ目はゴズ、君が歴史学者で一番優れていると私が判断したからだ。魔法研究調査団。それは志願者から特に実績を持つ者だけが入れる場所。歴史学者からはゴズ。君だけでいいと判断したから今後もその形態で行きたいと考えている。」

 「そうですか…。」

 ゴズはシンの言っている事が正しいと思い、なにも言い返せなかった。するとシンはサリーの前へと歩き、語り掛けた。

 「サリー。本当に申し訳ない。これは厳正なる会議で国際的に決めた事。それは絶対にかえられない。」

 「はい…。しかし、今回このような機会を与えられて光栄に思います。本当にありがとうございました!!」

 その言葉に微笑むシン。そしてゴズとサリーは屋敷をあとにし、駅へと着く。

 「ゴズさん。私は貴方のような歴史学者になれるようこれからも努力を積み重ねます!!本当にありがとうございました!!」

 「礼は結構だ。これからも頑張れ。応援しているぞ!」

 「はい!!」

 二人は握手をかわし、別れを告げ別々の道へと歩みを進めた。

・・・

 「あれ、ゴズ。1週間休みとっていいって言ったのにもう帰ってきたの?」

 「あぁ、旅先である歴史学者と会ったのだが、とても有意義な時間を過ごせたからな。実家にはまたいつか寄る事にするよ。」

 「そうか。ゴズが楽しめたのなら良かった。おかえり!」

 「ただいま!!」

 笑顔をむけたゴズ。しかし次の日。運命の歯車が狂いだす。
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