無明剣零

青鳥翔

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渾沌渦巻くセキト

これから。

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 「カヤ様。帰りましょう、セキトに。」

 「うん!」

 カヤと佐助は大統領室へと着く。そこには体中青あざだらけになったシンと、暴動を起こしてしまった事に反省している国民がいた。

 「カヤ、佐助。よく帰ってきた。私はそれだけで嬉しいよ。」

 シンは二人に近づき、抱きしめた。

 「私たちはシン大統領。貴方が生きていてくれてよかったです。」

 カヤはシンに笑顔を見せた後、中継が繋がっている事を確認してセキトの国民に対し頭を下げた。

 「皆様、どうかシン大統領の解任を取り消してはくれませんか?私たちはシン大統領に生かされた身。それは皆様も同じはずです。シン大統領は貧富の差をなくし、全ての国民に手を差し伸べて下さった方。わがままで申し訳ありません。」

 「私からもよろしくお願い致します。異国からやってきた私を救ってくれたのは皆様です。あの明るい笑顔を絶対に忘れません。あの笑顔があったから私はこの国に忠誠を誓おうと決める事が出来た。私はこの国が好きです。ですので、皆様武器を収めてまた平和な国を形成しましょう。」

 「カヤ、佐助…。」

 国民たちの声はもう決まっていた。またあの平和な国を創りたいと願っていたからだ。

 ・・・

 その日の午後。緊急の会見でシンとカノンは国民の前に立つ。

 「私は大統領として、未熟であった。自身の娘にしっかりと教育を叩きこまなかった。もう取り返しのつかない事をした。だが二人のお陰でまたここに立てている。感謝しかない。…私、そして私の娘を許してはくれないか?」

 シンとカノンは国民に頭を下げる。その瞬間セキトの国民は笑いだした。

 「シン大統領じゃないと、この国はつとまらないよな!」

 「あぁ!また大統領を頼むよ!!」

 国民から許しの言葉をかけられた二人は、涙ぐむ。するとカヤがシンの手を取った。

 「シン大統領。怪我を見せてください。」

 「…どうした?」

 シンの怪我はとても痛々しいものだった。しかし次の瞬間、シンの体に光が集まり、傷が完治したのだ。

 「私、サウンドラ王国の全魔法を覚えたのです。今なら、怪我した者の治癒が出来ます!!」

 その瞬間歓声が沸き上がる。それを優しく微笑むカヤだった。

 『カヤ様。本当に立派になりましたね。もう私の剣では貴方に勝つ事は出来ないかもしれないです。』

 佐助も微笑み、その場は幸せでいっぱいな空間となった。

 「本当にありがとう。カヤ、佐助。そして国民よ、私に対して反抗してきた者を不問とする。あのような事態になったら疑いの目を向けられても仕方ない。これからも共に手を取り合い、平和な国を築こう。」

 その言葉に反対する者はなかった。そして会見は無事終わった。

・・・

 「サインさん…!」

 「カヤ、本当に無茶をして…。でもまたこうして会えて良かった。あと僕よりも大きくなったね。なんか悔しいな。」

 サウンドラ王国の人間は背の高い人が多かった。カヤも例外ではなく身長180センチメートルになっていた。すると、カヤと佐助に気がついたのか、ゴズとフィアーもやってきて、お互いまた再会できた事に喜ぶ。

 「サインさん。あの後魔法研究所はどうなったの?」

 「奇跡的に無事らしい。あの辺は人があまり住んでいないからね。」

 「じゃあ、あの施設に帰ろう!!」

 カヤは数日ぶりの施設に戻る為に扉をつくる。するとシンと暗い顔をしたカノンがやってきた。

 「カヤちゃん。私はもう…。」

 するとカヤはカノンの頭を撫で、「一緒に帰ろう?」と言う。その瞬間、カノンは以前のような明るさを取り戻し、「うん!」と言った。

・・・

 施設へと戻ったカヤたち。久しぶりに帰ってきた気がする。あの地獄のような日々から解放され、皆は安心していた。するとサインが佐助の未知の力について、きく。

 「カヤ、佐助。まずはセキトを、いや世界を救ってくれてありがとう。ただ、佐助のあの力は一体…?佐助は魔法を使えないのに、なぜ飛べたの?」

 「それは、カヤ様が最後の力を引きだした際に、自身の血液に伝播したのです。今はあのような力は出せませんが、サウンドラ王国と大和の国の血は他の国とは全く違う性質を持っていた為、私にだけ強力な電気が流れたのでしょう。その電気により、光と同等の速さでカヤ様のいる敵のアジトへ潜入し、枷から解いた後、ミサイルの爆破範囲から逃げる事が出来たのです。私の考えとしては命を代償に得られる力なのだという結論です。」

 カヤの覚悟がもたらした力。それは近い遺伝子を持つ佐助に一時的に能力を分け与えるものだった。そして背が伸びたカヤの姿。その姿はとても凛々しく、優しい顔立ちをしていた。

 「なるほど…。フィアー、カヤの話を聞いてほしいな。もし、身長が伸びた代償が悪いものだったら今後の研究で問題になるから。」

 「任せてくれ。僕は天才科学者だからね!」

 フィアーはいつも以上に張り切っていた。そしてフィアーは調査をする為にカヤ、佐助とともにカウンセリング室で話をする事となる。

・・・

 「なるほど。あの世に通じる川の前で無明剣が語りかけてきたと。その声の主が初代国王、ダン・サウンドラ。カヤさんはあの世についてどう思っている?」

 「私はあの世を信じているよ。サウンドラ王国には死者を祀る催しがあった。それは亡き者が次の世代に行けるように後押しをするもの。別れは悲しいけど、次に向かってほしいという気持ちがあって、炎魔法で言霊…。浮いている火を再現して、水で消火するっていう儀式があった。」

 サウンドラ王国のしきたりというものなのか。フィアーが「なぜ火の弾を?」ときくとカヤは「人間の魂は火で出来ているから。」と答えた。しかしフィアーにはよく分からない事であった。科学に満ちた世界。死んだら無と帰り、それ以降生まれ変わりはないと信じられていたからだ。

 「んー難しい話だ。僕たちの国にも墓はあるけど、そんな盛大な祭りはなかったし、僕自身もあの世を信じてない。佐助さんはどう思っている?」

 「私もサウンドラ王国とは違いますが、死者を祀る祭りが年に1度ありました。それは今の時期の17時以降に亡き者の墓の前に立ち、その者の魂を家に連れてかえるというもの。線香に火をつけ、降霊するまでその場でひたすら拝む。すると、肩に一瞬なにかがのしかかるのです。その目には映りませんがそれはご先祖様の霊が降りてきたという言い伝えがあり、それを確認したら家に帰り、ご先祖様と共に食事をするという習わしがありましたね。」

 「降霊…。なるほど。サウンドラ王国も大和の国も同じ時期に違う形だけど、慰霊するという事か。これは科学では想像つかないな…。この調査書はゴズに譲ってみる事にするよ。」

 フィアーがそういうと席を立ちあがる。すると何故か佐助が止めた。

 「フィアーさん。魂の重さって知っていますか?」

 「え…?し、知らないけど…。」

 当然の事ながらフィアーはそう言う。すると、佐助はある事をフィアーに言う。それは魂が抜けると体重がほんの少し減るというものだった。

 「なるほど…。魂が抜けると21グラムほど体重が軽くなる…。確かに不思議な話だね。その件は科学で説明できるかもしれない。やってみる事にするよ。不思議な話をしてくれてありがとう、二人共。今日はもう夜遅いから寝て、明日どうするか話そう。」

 そう言い残し、フィアーは部屋を出て行った。それと同時に調査書を持ったゴズが入ってくる。

 「俺は信じている。あの世の存在を。とある小さな島では今聞いた話のような儀式を何千年も行っているという事を知っているから。もし良かったらそのしきたりを俺に見せてくれないか?」

 その時カヤと佐助はお互いの顔を見て頷く。そう、共にあの島へ行くと決心した。そして次の日、シンの許しを得て、カヤ、佐助、ゴズは島へ行く事が確定した。

 

 
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