無明剣零

青鳥翔

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歯車は動き出す

零の域:1

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 「私、知ってしまったの。サウンドラ王国の皆の魂を体に取り入れてから初代国王の記憶を覗く事が可能になって。」

 「ダン様の事ですね?それでどういったものだったのですか?」

 佐助は暗い顔をしているカヤを心配そうに見つめる。するとカヤは震えが止まらなくなった。

 「私。今まで明るい性格を振る舞っていたけど…。やっぱり怖い……。」

 「カヤ様…。」

 佐助は今まで何度もカヤの絶望する瞬間を見ていたから一目で分かった。今回の事が今後重要になるものだと。しかし震えているカヤをどうする事も出来ず、近くにあったハンカチを渡した。

 「…ありがとう。……それでね、無明剣には”零”が存在するの。」

 「零…ですか?」

 ハンカチで涙を拭き、ダンの記憶を話し始めた。

───

 『見ろ、あんな高い波見た事がない!!』

 『逃げろ!うわぁぁぁ!!』

 時は今から5千年前、天変地異が世界を襲った。火山の噴火による被害はその土地に住む全ての動物に牙を剥いたのだ。そしてその被害は名もなき魔法の国にも襲いかかろうとした。全ての人間が絶望に追い込まれた。すると突然空中に人影が現れたのだ。

 『あいつは…囚人のダン……!?それになんだあの剣は!!』

 その透明の剣を持った男は、100メートル超えの津波に刃を向け、横に斬り裂いた。すると、津波は真っ二つに斬れ、島全体に向けられていた水の壁が消えた。そして静寂が訪れる。

・・・

 『神だ…。貴方は神の使いだ!!!』

 その地に住む人々は囚人であったダンを認め、この国の王になってくれと言う。しかしダンは乗り気じゃなかった。なぜなら、火、水、風、土のどの系統にも属さない空間魔法を操るダンに対し、非道を尽くしてきたから。たった今手のひら返ししてきた民衆に呆れていた。

 『私は危険な存在だ。とても国王になれるとは思わない。親にも見捨てられ、この地の民衆にも煙たがられて独房でひっそりと暮らしてきた。それなのにそんな無責任な発言で国王になっていいはずがない。』

 そう吐き捨てたダンは独房へ戻ろうとする。しかし衛兵がダンの事を引きとめた。

 『貴方はこの名もなき島を大災害から救ってくださった恩人。それに民衆は貴方の事を神に等しい存在だとみています。どうかお願いします。国王になって下さい。』

 その衛兵はダンの監視を任されていた者。しかし、ダンに対し優しく接するたった一人の友人であった。その為、ダンはある条件を引き換えに国王の座につく事を決意する。それは魔力量に関わらず、全ての人間が対等に生きていける国を創る事に全ての民衆が賛成するという条件。それはダンが経験してきた辛い出来事を今後の未来、誰にも同じ思いをさせないという気持ちが込められていた。

 『分かっています。ダン様。今までの私たちの非道をお許し下さいませ。そして平和な国を皆で助け合い、創りあげていきましょう!』
 
 民衆たちは意見が固まる。そしてダンは王国を立ち上げる準備へととりかかった。

・・・

 1年の歳月。王国を創りあげる為にダンは自らの魔法を用い、民衆の助け舟をしていた。公共施設の建設。道路の整備。そして自国を守る為の結界。ダンは他国からの侵略から自国を守る為に、外交を絶った。そのお陰もあり、自国からの行方不明者が出る事もなくなり、平和の国が創られつつあった。

 しかしここである問題が発生した。空間魔法、いや全魔法に関する情報が一切なかったのだ。この島には全く歴史がなかった。ただ、魔法を使える者が他国に奪われ狩られていたという。そこで魔法に関する魔導書を作成し、次の災厄に打ち勝つ為の術式を後世に残そうという結論が出た。

 『私は何故か自然に愛されている。自然が勝手に味方をしてくれる。なぜなのかいまだに答えが掴めない。』

 ダンは悩みながら一人で魔導書を作成していると、以前ダンを引き留めた衛兵が入ってきた。その名はアマナス。のちにダンに仕える側近の一人となる。

 『ダン様の魔法は不思議ですね。過去に空間魔法を用いた魔導士はいなかった。未知の魔法は危険な存在です。しかしダン様はそれを悪用しようとしなかった。何故ですか?』

 『それは、この剣が語りかけてきたからだ。「災厄をもたらす時、お前の力が必要になる。」と。だからそれに従い、あの大津波を斬り、この地を救った。それまでだ。』

 アマナスはその剣について詳しく知りたかったが、結局ダン本人も分からなかった。そして戴冠式が次の日、行われる事となった。

・・・

 『我が国民たちよ。私の名はダン。この地を統べる者だ。しかしここに宣言する。我が国には貧富の差など必要ない。この国には魔力が殆どない者もいる。だがそれに対し蔑み、罰を与えるのは間違いだ。この誓いを未来永劫なくさないようにしよう。』

 その言葉に歓声があがる。ダン本人もそれに喜びの心を持っていた。そしてこの国の名前を決める事となる。この国は自然と共に生き、全ての生命の鼓動を大切にしてきた。そこで自然の鼓動と共に生きるという意味が込められ、サウンドラ王国は誕生した。

───

 「なるほど……。それがサウンドラ王国誕生のきっかけなのですね。しかし、それならなぜ、大和は生まれたのか…。」

 今の話を聞いていて疑問に思う佐助。しかしカヤの次の言葉で理解した。

 「ダンの側近。アマナスが国を滅ぼそうとし、それを食い止める為に魔力をほぼ持たない人間が剣を持ち対抗したから。」

 これが大和誕生のきっかけとなった。


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