無明剣零

青鳥翔

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歯車は動き出す

零の域:終

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 『国民たちよ。私の行いは間違っていた。私の持つ無明剣が世界を巻き込む兵器だと知らず、世界を滅ぼしかけてしまった。この責任は私の命を代償に、受け持つ。』

 その言葉はサウンドラ王国国民に驚きを与えた。ダンは悪くないというのに、自らを犠牲にすると言ったからだ。そしてそれと同時に止める事が出来なかった。王としての力が国民の心身まで届かなかったからだ。

 そして、その日が来てしまう。ダンは覚悟を決め、処刑台の前に立った。『止めてください、考えなおしてください!!』という国民だったが、ダンは聞き入れる事なく命を絶とうとした次の瞬間。遥か彼方から赤いビームが飛んできて、結界を突き破り、町を一瞬にして焼け野原にしたのだ。燃え上がる大火。意味も分からず倒されていく人間。それはまさに地獄だった。

 『どこから…!?』

 ダンは焦る。すると大量の戦闘機と爆撃機が遠くから飛んできたのだ。大量の黒い物体が波のように押し寄せてくる。そして次々に王国に爆弾と銃弾が落ちてきたのだ。

 『やめろ…。やめろ!!!』

 ダンは叫び、無明剣を生みだし切れる。その時無明剣は透明ではなく、真っ黒に染まっていた。

 次の瞬間空を飛んでいたものは全て無明剣によって斬られ、大爆発を起こす。しかしダンはそれでも止まらず、その国を潰しにかかったのだ。軍人も罪なき人間もなにもかもを斬り裂き、取り返しのつかない事をした。そしてその憎悪は世界にも飛び火する。魔女狩りを行っていた国も、自然に満ちた国もなにもかも滅ぼし、真っ赤に染まった星の大地にダン一人が立っていた。もうその星は再生する事がなかった。

・・・

 『私は……馬鹿だ。国民を不幸にして、罪なき国も滅ぼした。大罪人だな。こんな馬鹿な人間が国王なんてやるべきではなかった。』
 
 全てが炎に包まれた大地を見て、ため息しかでなかったダンは自らも命を絶とうとする。しかし次の瞬間無明剣が青く光り輝いたのだ。なにか言いたげな様子。紫髪の少女が必死に訴えていた。「人を救いたい!!」と。

 『こんな私を許してくれるのか…?』

 その少女が誰だか分からなかったが、その言葉に気づかされた。無明剣は自然を、文明を再生させる力を持っていると。その為ダンは最期の力を無明剣に全て注ぎ込む。

 『ありがとう、少女よ、導いてくれて。私はこれから先の未来、この星の再生を望む。全ての人間の血肉を再生し、平和な世界を生成せよ。無明剣・零。』

 その瞬間、ダンの姿は消え、無明剣に入り込み、青い光が星自体を包み込んだ。その瞬間草木が芽生え、文明が生まれた。息絶えた人間もいつの間にか意識を取り戻し、全てが元の世界に戻ったのだ。それと同時にダンの灯火は消えた。

───

 「つまり零は再生を可能とする剣。という事ですね。」

 「うん。そして今は私の心の中で皆は生き続けている。たまに夢に出てくるんだ。人々の悲鳴と助けを求める声が。これから先なにか重大な出来事が起こるのは確実。そしてその時、私も命を投げだす。それも分かった。だから怖いんだ。」

 無明剣が存在する理由。それは混乱を止める為だった。そして空間魔法を使える人間はダンとカヤだけ。これは偶然ではない。この先の未来、全てのものの終焉を迎える時が来るのだ。その為神はカヤという存在を創りだした。その少女に全てを任せる為に。その事を理解してしまったカヤは震えが止まらなくなる。

 「こんな、こんな事って…。ないよ……。佐助さん。なんで、なんで……!!人間は、争うの!!!」

 「そ、それは…。」

 カヤはその場に伏せ泣く。佐助はなんと言葉をかければいいのか分からなかった。しかし、それどころではなかった。カヤの周囲の空気が揺らぎだしたのだ。それは爆発の前兆というべきか。佐助は感情を抑えるよう言ったが、カヤは止まらない。周囲の空気がどんどん黒くなっていく。そして黒い塊がカヤに集まったのだ。

 「これは…!?」

 佐助はただ驚く。カヤの紫髪は白色に染まり、体は真っ黒になっていた。カヤは感情を抑えきれず堕天してしまったのだ。そして真っ黒になった無明剣を佐助に向けたと同時に天候が荒れだす。只事ではないと直感した佐助は真剣で無明剣を斬り裂こうとしたが全く斬れない。もう誰にも止められないと思った瞬間。部屋の外でこっそり聞いていたカノンが走り寄りカヤに抱きつき、叫んだ。

 「私が、私たちがそばで見守っているよ!!!戦争は諸悪の根源!!でもそれに巻き込まれる人は助けを呼んでいる!!カヤちゃんに手を差し伸べてほしいと願っている!!皆が見てるんだ、だから戻ってきて!!!お願い!!!」

 世界を包み込む暴風雨。それはカヤの荒れた感情を体現したものだった。しかしカノンの必死な言葉に心が動いたのか。徐々に天候は晴れていき、収まった。

 「か……カノンさん…。私、こんな……世界嫌だ…。平和に…したい……。」

 そしてカヤは膝から崩れ落ち、意識不明の状態になってしまった。

・・・

 「カヤは!」

 サインたちは急いで走り、カウンセリング室へと着く。そこにいたのはただ茫然としている佐助とカヤを抱きしめているカノン、そして変わり果てたカヤ。その姿はとても悲しいものだった。体の半分が白くなっていて、皮膚は石のように硬くなっている。フィアーが確認したところ心臓は動いているが、どうすれば意識が戻るのか分からなかった。すると佐助は今までの冷静さを失い、震えだす。

 「ごめんなさい。ごめんなさい…。」

 「佐助!気をしっかりしろ!!!」

 「は、はい……。ちょっと、一人にして下さい…。」

 佐助はサインの肩を借りて、別室へと向かった。この事件は夕食を食べてから数時間後の事。この後カヤが意識不明の状態になってしまったという知らせは全世界に広まり、世界中が心配した。もう目覚める事がないのではないかと。
 
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