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勘違いの話
口も目程ものを言う
カーテンの仕切りを閉ざし、行為を再開する。閉ざされた先には、ギシギシと規則的な音が聞こえる。
「んッ...あッ...もう、いく」
そう言うと、男は腰の動きをはやめて、僕の体ごと激しく揺さぶる。
きつく抱きしめられて、
男はちぃちゃん、ちぃちゃん、と何回も僕の名前を耳元で囁き、
彼は僕の中で達した。
行為のあとも、彼は僕から離れなかった。
彼を背にして抱き締められながら、ぼんやりと空虚を見つめる。
『この男が...須藤が、そんなに大切か?』
『今までの...俺をいじめてきたことの...非を、そんな、簡単に認めるくらい...』
『俺って、どうでもよかったの...?』
あの男...小鳥遊洸人の言葉を心中で反芻する。
...小鳥遊は、多分、神宮寺千透星の事が好きなんだろう。
『いじめられるなら...』
『いじめられるなら、ちぃちゃんがいい』
『俺をいじめるのは、ちぃちゃんだけだ。』
なぜ小鳥遊がちぃくんの事を好きなのかは分からないけど、あぁコイツは好きなんだ、と思った。
こんなことを言うくらいなんだから...
ちぃくんの言う後藤達、と言うのを殴ったのは小鳥遊だ。
あの時は、見ていてほんとに狂人みたいな奴だと思った。
関わりたくなかった。
それを聞いたであろう、ちぃくんの反応も...何ニヤニヤしてんだ、いじめっ子はどーせ変わんないんだな。
そう、思った。
面倒なやつらと関わっちゃったな、
最初っから、美形だからって色んな人と無闇矢鱈に“ヤんなきゃ“良かった。
いじめっ子も、僕の手にかかれば更生というか...
“僕のもの“になると思ったけどなぁ...
まだ、千透星くんはキープだけど、別れよっかな。
あ、けどなぁ...
ちぃくんは、勘違いしているけど、
事実、僕は小鳥遊に襲われてない。
だから、アイツ...小鳥遊がどう出るかだろう...好きな奴がいる奴は堕とすのが面倒くさい。ちぃくんに僕のこと言わないように...
口止めしないと...
「ねぇ...ちぃちゃん、こっち、向いてよ」
「...ふふっ、恥ずかしいからヤダぁ」
...なんて、今、顔を見られたくなかった、というか。
目を見られたくなかった、だけなんだけどね。
目は口ほどに物を言うらしいし...
地下のトイレ、
そこは人通りが少なく、
ヤンキーのたまり場であり...
1番奥の個室には、
ヤンキーも恐れる、
花子さんが出るという噂がある。
「うわ、ほんとに来た。」
「...はっ?須藤...なん、でここに...」
1番奥の個室で、鍵をかけず便座に足を組み座っている須藤千尋と、その扉を開けた小鳥遊洸人は、ばっちり目が合う。
今は昼休みだ。
僕はわざわざ、ちぃくんの目を掻い潜って、この便所飯をしに来たであろう、菓子パンと牛乳を持った男に会いに来た。
かかとを返し、小鳥遊が逃げようとするところを、須藤は小鳥遊のシャツの襟をつかみ、それを制止する。
「なに、逃げようとしてんの」
「いや!お前に会いたくないからだし!それに、なんでいるんだよ!」
「いやぁ、ここに花子さん?が出るって噂があるらしくてさ...」
「...花子さんって!それ俺だし!」
花子さん、という単語に小鳥遊はわかりやすく機嫌を悪くして、須藤を睨みつける。
小鳥遊は無理やりにでも、自身のシャツの襟を掴む須藤の手を離そうとするが、須藤は個室のドアさえも閉めて、狭い空間に2人きりになる。
「うぅ...なんだよ...」
「花子さんってのは冗談だよ、本当は...」
「ヒロくんに会いたくてさ、」
小鳥遊は観念したように、立ち止まったが、須藤の発言に、眉間にしわを作り、不愉快そうに怪訝な顔をする。
それに須藤は、心にもないような笑みを浮かべる。
「...なんだよ、あの“口止め料“ってやつ?」
「...まぁ、そうだね、話はやいじゃん、口止めしないといけないんだ。ヒロくんの事」
「俺、お前とヤるつもりねぇよ、ヤリたくもないし、」
「えぇ~?…そうかなぁ」
須藤はじりじりと小鳥遊に近づき、ドアに追いやる。上目遣いで小鳥遊を見つめて、小鳥遊の胸に手を添える。
「鼓動も早くなんないし...僕のこと、嫌いだねぇ...」
「当たり前だろ、お前の浮気も!俺のせいにしやがって!!ちぃちゃんに勘違いされてるんだからな...」
「ふふ、やっぱり、」
「ちぃくんのこと、好きなんだ?」
そう言うと、目を細めていたのをやっと小鳥遊は目を見開き、僕を見つめた。
「...だったら、なんかダメなのかよ、」
「あ!当たりかぁ、ふふっ!そっかぁ!すきなんだねぇ!」
冷たく、嘲笑うようにすれば、小鳥遊はすぐ俯いて何も喋らなくなってしまった。
「別にぃ、バカにしたい訳じゃないんだよ?ヒロくんを“説得“したいだけなんだ、」
「は...?」
「ヒロくんだって、好きな人の幸せ願ってるでしょ?なら、実行に移さないと...僕は決めたんだ、本命はちぃくんにするって、だからもう“あんなこと“しないから、ヒロくんがちぃくんに言わなければ、僕らは幸せになれるし、ヒロくんも幸せで...いーじゃん?」
ニコッと笑って言うと、小鳥遊は怪訝に眉をひそめた後、俯いて考えているようだった。
ふふ...本命に決めたって言っちゃった...うーん、面倒くさいなぁ...まぁ小鳥遊だし?どうにかなるでしょ、数ヶ月経ったら僕のこととか忘れてるだろーな。
ニコニコと返答を待っていると、小鳥遊はそんな様子の僕を少し睨んだ後、やっと口を開いた。
「...俺の、幸せはどうなんだよ。」
「...なんだぁ、そんなこと?だから、好きな人の幸せが自分の幸せなんじゃないの?」
「俺は...こんなんじゃ、幸せになれない、そんな気がするから...」
小鳥遊はうだうだと、縮こまりながらも、一向に意志を曲げようにせず、須藤に反論する。
そんな様子の小鳥遊に、須藤は我慢の限界だった。
「あー...じゃあもう、僕と幸せになっちゃう?」
「は...」
「そんなに幸せになれないとか、うだうだ言うなら、僕が幸せにしてあげるからさぁ、一緒にいよ?」
皆から評判いいんだよ?とか冗談交じりに、笑う須藤に小鳥遊は
「...誰も、そんなお前といても幸せになれないだろ...」
「...は?」
『ちぃちゃんといても...幸せになれない。』
記憶が蘇る。
何回も似たようなことを言われた。
何回も実感したのに、憎らしいほどに消えてくれない言葉。
...なんで?なんで?...どうして、
ふざけんな、
「...え、」
ハッとして、慌てて口を押さえて小鳥遊の方を見つめると驚いたように目を見開き、僕を見つめていた。
...口に出てたか、
「なんでもないよぉ...!あ、それよりね!」
僕は、床に置いていた弁当箱を手に取って、小鳥遊に差し出す。
「はい、これヒロくんの!保健室に忘れてたよ!」
「はっ...!?本当は何、これのためにきたの!?」
「そうだよぉ!ヒロくんが勘違いしてたんだよ、口止め料ってなんの事だよぉ!」
小鳥遊の胸をつついたら、腹黒っ...と言われた気がしたが、気にしないことにしよう。
...今、僕は機嫌が悪いんだからさ
ドアに手をかけて、個室を出た。
まぁ、これは僕が後から知ることなんだけど
その時、隣の個室に“あの男“がいたことを、
馬鹿な僕とヒロくんはまだ、知らない。
「んッ...あッ...もう、いく」
そう言うと、男は腰の動きをはやめて、僕の体ごと激しく揺さぶる。
きつく抱きしめられて、
男はちぃちゃん、ちぃちゃん、と何回も僕の名前を耳元で囁き、
彼は僕の中で達した。
行為のあとも、彼は僕から離れなかった。
彼を背にして抱き締められながら、ぼんやりと空虚を見つめる。
『この男が...須藤が、そんなに大切か?』
『今までの...俺をいじめてきたことの...非を、そんな、簡単に認めるくらい...』
『俺って、どうでもよかったの...?』
あの男...小鳥遊洸人の言葉を心中で反芻する。
...小鳥遊は、多分、神宮寺千透星の事が好きなんだろう。
『いじめられるなら...』
『いじめられるなら、ちぃちゃんがいい』
『俺をいじめるのは、ちぃちゃんだけだ。』
なぜ小鳥遊がちぃくんの事を好きなのかは分からないけど、あぁコイツは好きなんだ、と思った。
こんなことを言うくらいなんだから...
ちぃくんの言う後藤達、と言うのを殴ったのは小鳥遊だ。
あの時は、見ていてほんとに狂人みたいな奴だと思った。
関わりたくなかった。
それを聞いたであろう、ちぃくんの反応も...何ニヤニヤしてんだ、いじめっ子はどーせ変わんないんだな。
そう、思った。
面倒なやつらと関わっちゃったな、
最初っから、美形だからって色んな人と無闇矢鱈に“ヤんなきゃ“良かった。
いじめっ子も、僕の手にかかれば更生というか...
“僕のもの“になると思ったけどなぁ...
まだ、千透星くんはキープだけど、別れよっかな。
あ、けどなぁ...
ちぃくんは、勘違いしているけど、
事実、僕は小鳥遊に襲われてない。
だから、アイツ...小鳥遊がどう出るかだろう...好きな奴がいる奴は堕とすのが面倒くさい。ちぃくんに僕のこと言わないように...
口止めしないと...
「ねぇ...ちぃちゃん、こっち、向いてよ」
「...ふふっ、恥ずかしいからヤダぁ」
...なんて、今、顔を見られたくなかった、というか。
目を見られたくなかった、だけなんだけどね。
目は口ほどに物を言うらしいし...
地下のトイレ、
そこは人通りが少なく、
ヤンキーのたまり場であり...
1番奥の個室には、
ヤンキーも恐れる、
花子さんが出るという噂がある。
「うわ、ほんとに来た。」
「...はっ?須藤...なん、でここに...」
1番奥の個室で、鍵をかけず便座に足を組み座っている須藤千尋と、その扉を開けた小鳥遊洸人は、ばっちり目が合う。
今は昼休みだ。
僕はわざわざ、ちぃくんの目を掻い潜って、この便所飯をしに来たであろう、菓子パンと牛乳を持った男に会いに来た。
かかとを返し、小鳥遊が逃げようとするところを、須藤は小鳥遊のシャツの襟をつかみ、それを制止する。
「なに、逃げようとしてんの」
「いや!お前に会いたくないからだし!それに、なんでいるんだよ!」
「いやぁ、ここに花子さん?が出るって噂があるらしくてさ...」
「...花子さんって!それ俺だし!」
花子さん、という単語に小鳥遊はわかりやすく機嫌を悪くして、須藤を睨みつける。
小鳥遊は無理やりにでも、自身のシャツの襟を掴む須藤の手を離そうとするが、須藤は個室のドアさえも閉めて、狭い空間に2人きりになる。
「うぅ...なんだよ...」
「花子さんってのは冗談だよ、本当は...」
「ヒロくんに会いたくてさ、」
小鳥遊は観念したように、立ち止まったが、須藤の発言に、眉間にしわを作り、不愉快そうに怪訝な顔をする。
それに須藤は、心にもないような笑みを浮かべる。
「...なんだよ、あの“口止め料“ってやつ?」
「...まぁ、そうだね、話はやいじゃん、口止めしないといけないんだ。ヒロくんの事」
「俺、お前とヤるつもりねぇよ、ヤリたくもないし、」
「えぇ~?…そうかなぁ」
須藤はじりじりと小鳥遊に近づき、ドアに追いやる。上目遣いで小鳥遊を見つめて、小鳥遊の胸に手を添える。
「鼓動も早くなんないし...僕のこと、嫌いだねぇ...」
「当たり前だろ、お前の浮気も!俺のせいにしやがって!!ちぃちゃんに勘違いされてるんだからな...」
「ふふ、やっぱり、」
「ちぃくんのこと、好きなんだ?」
そう言うと、目を細めていたのをやっと小鳥遊は目を見開き、僕を見つめた。
「...だったら、なんかダメなのかよ、」
「あ!当たりかぁ、ふふっ!そっかぁ!すきなんだねぇ!」
冷たく、嘲笑うようにすれば、小鳥遊はすぐ俯いて何も喋らなくなってしまった。
「別にぃ、バカにしたい訳じゃないんだよ?ヒロくんを“説得“したいだけなんだ、」
「は...?」
「ヒロくんだって、好きな人の幸せ願ってるでしょ?なら、実行に移さないと...僕は決めたんだ、本命はちぃくんにするって、だからもう“あんなこと“しないから、ヒロくんがちぃくんに言わなければ、僕らは幸せになれるし、ヒロくんも幸せで...いーじゃん?」
ニコッと笑って言うと、小鳥遊は怪訝に眉をひそめた後、俯いて考えているようだった。
ふふ...本命に決めたって言っちゃった...うーん、面倒くさいなぁ...まぁ小鳥遊だし?どうにかなるでしょ、数ヶ月経ったら僕のこととか忘れてるだろーな。
ニコニコと返答を待っていると、小鳥遊はそんな様子の僕を少し睨んだ後、やっと口を開いた。
「...俺の、幸せはどうなんだよ。」
「...なんだぁ、そんなこと?だから、好きな人の幸せが自分の幸せなんじゃないの?」
「俺は...こんなんじゃ、幸せになれない、そんな気がするから...」
小鳥遊はうだうだと、縮こまりながらも、一向に意志を曲げようにせず、須藤に反論する。
そんな様子の小鳥遊に、須藤は我慢の限界だった。
「あー...じゃあもう、僕と幸せになっちゃう?」
「は...」
「そんなに幸せになれないとか、うだうだ言うなら、僕が幸せにしてあげるからさぁ、一緒にいよ?」
皆から評判いいんだよ?とか冗談交じりに、笑う須藤に小鳥遊は
「...誰も、そんなお前といても幸せになれないだろ...」
「...は?」
『ちぃちゃんといても...幸せになれない。』
記憶が蘇る。
何回も似たようなことを言われた。
何回も実感したのに、憎らしいほどに消えてくれない言葉。
...なんで?なんで?...どうして、
ふざけんな、
「...え、」
ハッとして、慌てて口を押さえて小鳥遊の方を見つめると驚いたように目を見開き、僕を見つめていた。
...口に出てたか、
「なんでもないよぉ...!あ、それよりね!」
僕は、床に置いていた弁当箱を手に取って、小鳥遊に差し出す。
「はい、これヒロくんの!保健室に忘れてたよ!」
「はっ...!?本当は何、これのためにきたの!?」
「そうだよぉ!ヒロくんが勘違いしてたんだよ、口止め料ってなんの事だよぉ!」
小鳥遊の胸をつついたら、腹黒っ...と言われた気がしたが、気にしないことにしよう。
...今、僕は機嫌が悪いんだからさ
ドアに手をかけて、個室を出た。
まぁ、これは僕が後から知ることなんだけど
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馬鹿な僕とヒロくんはまだ、知らない。
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