7 / 19
勘違いの話
腐が疼き薔薇の扉が開かれる
「なぁ...姉ちゃん、」
「ん?なんだね、ヒロくん。」
俺は、目の前で煎餅を食いながら、古びたソファの上で寝転び、BL本を読み漁っている姉に声をかける。
「好きな人...?の恋人...?が浮気...?してるの目撃したらどうしたらいい?」
「なんで全部疑問形なのよ...」
「俺が知りたいよ!!全容が分からないんだから!!」
納戸にある、古い机を叩き大声を出す。
そんな様子の俺に姉は、指で耳栓をして、うるせぇ!と言って面倒くさそうにこちらを見る。
「好きな人ぉ...?千透星くんの事?てか、前言ってた千透星くんの“ちぃちゃん“って子は恋人じゃなかったの?」
「いや!俺も、恋人だと思ってたんだけど!なんかぁ、まだ友達?らしくて...それで...ちぃちゃんって奴は他の人と、えっと、性行為をしていてですね...」
姉は性行為という言葉に反応し、煎餅をバリッと大きく噛んだ。
「...ハッ!?ちぃちゃんって子、千透星くんの事、キープしてる訳!?...それで他の奴と性行為って...倫理観バグってる...」
「いや!そうなんだよ!!意味わかんないでしょ!それで俺、ちぃちゃんが他の奴と性行為してる現場に出くわして!それを千透星くんにバラさないようにって!!...今...」
「追われてて...」
「...ハァ??」
...姉が大きく口を開けたことで、姉のBL本に煎餅の欠片がパラパラと落ちた。
そう、俺は今、須藤千尋に身柄を追われているのであーる!!
アイツ...ちぃちゃんこと、須藤千尋は千透星くんの目を掻い潜っては俺に会いに来るようになった。
意味がわからない。
ちなみに、俺は今クラスの中での状況としては、カースト最底辺というか、カーストというものを棄権してる、保健室登校に近い。
ほぼ教室にいない日々だ、
親にバレない程度に保健室に通っている。
千透星くんをめちゃくちゃ避けているのである。
そもそも、千透星くんも俺を避けている、レイプ犯扱いだよ。
好きな人に犯罪者扱いされる俺の気持ちを考えてください。
...いやもう、好きな人でも無いのかもしれない。最近は千透星くんと話さなさすぎて、好きなのかも...知らない。
話を戻します。
須藤千尋は何を考えているのか分からないです、ハイ。
俺に謎に執着してくるようになったのだ。
そもそも、トイレで迫られた時、様子がおかしかったのもある。
『...誰も、そんなお前といても幸せになれないだろ...』
『...は?』
そこから、
なんで?なんで?...どうして、ふざけんな、とか須藤は、ずっと呟き続けた。
あの時は恐怖でしか無かった。
俺は多分地雷を踏みに踏み潰したのだろう。
口も目程ものを言った、実例。(?
まぁ、ただ怖くて須藤の目を見れなかっただけなんですけど...
須藤千尋は言うことを変えず、
“ちぃくん本命にするから、ちぃくんに他の奴とヤッていたことを言うな“
...ということを言いたいんだろうけど...
『好きな人...ちぃくんの幸せが自分の幸せでしょ?』
...それがどうにも分からん、
俺は今、千透星くんのこと好きなのか?
...それは、千透星くん自身の幸せを願うくらい?
そうとは思えない...
けどなぁ...と渋っているのが現状である。
前みたいに、須藤の地雷を踏む訳にはいかないし、てか踏んだら何をされるか分からないし...
「だからさ...下手に関わんない方がいいんだろうけど...“ちぃちゃん“は俺に迫ってくるし...千透星くんのこと思うと、どうすればいいのか分かんなくて」
「あー...なるほど?」
姉は、ソファから起き上がると、納戸の棚から再燃したであろうBL本を取り出す。
BL本を開きペラペラと流し読みする。
「あっ...た、このシーン」
「ン...?またBL例えですか?」
姉はちょいちょいと、こちらに手招きをして、俺にBL本のあるページを見せる。
「...はっ?」
そこは、ガッツリエロシーン...濡場だった。
俺の小学生の頃のトラウマ...男が男にエーッな事してるシーン。
思わず顔を手で覆う、
「ちょっと!ヒロ!何その反応、私は今から大切なことを教えようとしてんですけど!」
「なんだよ!もう騙されないからな!」
あれもこれも、姉ちゃんが元凶なくせに!何を言っているんだ、また愚行を積もうってんのか!!
姉が無理やり、俺の手を剥がし、ずいっと、俺の顔のすぐ目の前にBL本をみせつける、
「濡場が本題なんじゃなくて!...回想シーン!この可愛い男の子が何考えてるのか!」
「はぁ...!?」
『不特定多数とヤるのは満たされる。形だけでも愛されてるって感じられるから』
『ねぇ、誰か僕を愛してよ。』
「なっ...何このセリフ...これがなんなんだよ...」
「次のシーン!見て!」
『何だよッ!...誰も僕のことなんか本当に愛してくれないくせにッ!!』
『今、お前の事止めなかったら絶対後悔する。お前が心配なんだ。』
「なにこれ...主人公がこれ言ってんの...?」
先程の可愛い男の子の手首を、主人公らしき人が掴んでいる。
なんか多分...絵を見る限り、可愛い男の子が他の男の所へ行くのを止めている...ようだった。
「何...!!意味不明なんだけど...?これがちぃちゃんとなんの関係があるんだ...」
「だーかーら!...この可愛い男の子がちぃちゃんってこと!!」
「...ハァ??」
わけが分からない、と姉の顔を見つめると姉はため息をひとつ着いたあと、俺に説明する。
「ちぃちゃんが、なんで色んな人と“そーゆーこと“やるかって考えたことないの!?」
「いや、ないけど...え?つまりはこの可愛い男の子みたいなことを...ちぃちゃんが考えてるかもって言いたいのか?」
「そーそー!だからそう言ってんでしょ!」
姉は煎餅をバリボリ食いながら、そういった。
...いや、そんなことある!?
てかこれは創作物、フィクションなのに!!それを例えに出してくる姉って...
薄々気づいてたけど、やっぱり相談相手として間違ってるんじゃないか。
...いやけど、あるのか?
前の須藤の地雷を踏んだことで、なんでなんで呟いたのも、地雷があるのも理由があるからなんじゃないか?...じゃないとおかしい。
「けど...それに理由があるって気づいたからって...どうすればいいんだ...」
「えー...うーん...」
俺がブツブツと悩み込むと、姉もあからさまに考え込むような仕草をした後、
俺にビシッと指を指す。
「それは...多分、いやズバリ!」
「ヒロがちぃちゃんの心を溶かしてあげればいいのよ!!」
「...とかすって...え?なんで俺?」
「今、アンタしかちぃちゃんの心に近づける奴はいないのよ!ヒロはこの主人公みたく、近づくの!」
姉に一喝される。
...そう、そうなのか?
俺しかいないのか?
本当に?
...いや須藤が浮気とか、
言い方悪いがビッチな事を知ってるのは俺しかいないなら...
止められるのは...
「俺だけ...」
「そう!アンタだけよ!」
「そうなのか...」
確かに...
須藤がビッチなのを止めれば、須藤は千透星くんと幸せになれるんじゃないか?
それで俺も千透星くんのこと諦められて...
ハッピーエンドでは!?
「よしっ...なるほど!ありがと、姉ちゃん!」
俺は今後どうするか、考えをまとめるために納戸から飛び出た。
てかなんか、
姉ちゃんのセリフもデジャブだし!
これまた、なんか俺勘違いしてる?
まぁ...後で考えよう。
実の弟、
ヒロは、姉の私に相談受けてくれたことへの感謝を伝え、納戸から飛び出して行った。
「はぁ...ヒロも大変ですねぇ...」
そう言いながら、先程ヒロに見せたBL本をペラペラとめくり、流し読みする。
「あ、そうだった。」
あるページで、本をめくる手が止まった。
ヒロは肝心なところが抜けてる。
「この可愛い男の子がちぃちゃんで...ヒロが主人公の子だとしたら...」
そのページは、先程の可愛い男の子と主人公が...なんやかんやあって...
「この2人、“BL“になるんだよなぁ...」
キスするシーンだった。
「まぁ...この可愛い男の子と主人公だと、主人公が攻めだけど...現実ではヒロは右固定だから、ちぃちゃんとは“そーゆー感じ“にはならないだろうね...」
冷静になると、実の弟が右固定だの受けだの言ってるのやばいし、BL例えしてるのもキモすぎるなぁ...
けど、ヒロのせいで...心の中の腐った部分が疼いて、最終的に閉じてた薔薇の扉が開かれちゃったんだから...
私だって責任取れっていいたいわ...
あなたにおすすめの小説
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
愛され方を教えて
あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。
次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。
そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
計画的ルームシェアの罠
高木凛
BL
両親の転居をきっかけに、幼馴染の一ノ瀬涼の家に居候することになった湊。
「学生のうちは勉強に専念しろ」なんて正論を吐く涼に反発しながらも、湊は心に決めていた。
しかし湊は知らない。一ノ瀬涼の罠に。
【初回3話は毎日更新! 以降は火・木19時更新予定】