幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ

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すれ違いの話

全てを溶かせ 酸性雨




小鳥遊洸人、



そいつは俺にとって…

いじめられっ子で、


ずっと"ヒロ"だった。



だから、これはおかしいんだ。



廊下の騒ぎを聞きつけて
向かった先で

先輩が、須藤を殴ろうとした

あの時

小鳥遊が、須藤を自身の方に引き寄せ、
助けた。

小鳥遊が、須藤の手を取って、先輩から、
逃げた。


小鳥遊が、

あの、ヒロが…

人を助けた。




なんで、なんで…!なんで!!




その場所は俺なのに、
俺が…ちぃちゃんの手を取って、抱きしめて、やっと付き合うとこまでこぎ着けるはずだったのに…



俺の好きな人、
須藤千尋の噂を知った時、

そんな訳ない、と思った。

その有無のメッセージを須藤に送っても既読無視をされて、酷く傷ついているんだろうと、慰めてあげようと思って、ちぃちゃんの教室に行っても、

どこにもいなかったのに…


なのに、なんで…ちぃちゃんが小鳥遊と一緒にいるんだ?


小鳥遊は野次馬の中に俺がいたことを認識してた。
した上で、須藤の手を取った。


見せつけた?

須藤につけ込んだ?



俺への復讐か?



…は?

ヒロのくせに?

あんな、
弱くて、
何も出来なくて、

俺がいないとダメな奴が?

俺にいじめられることでしか存在価値のないヤツが?




…ヒロは自覚しているのかと思っていた。

どんなにいじめても、ヒロは俺をちぃちゃんと呼んだ。
高校に上がって、いじめにもヒロにも飽きて、離れようとした。

そしたら、ヒロは他の奴にいじめられた。

後藤達、バカ三人衆だ。
いじめ…まではいかないのだろうか、見下して、パシリに使うような感じ、


なんだか、それを見て酷く嫌な気分になった。


子供の頃、
自分のおもちゃを取られたような。

別にそのおもちゃが好きな訳では無い、自分の所有物を取られたら嫌な気持ちになるだろう。

後藤達をいじめても良かった、見下していたから、けど、いじめたいと思うのはいつだってヒロだけだった。

だから、後藤達に加担した。
そしたら、いつものヒロのニマニマとした笑みが戻ってきて、やっぱり気持ちの悪い奴だと思った。








許さない、許せない。


ヒロ達が騒ぎの廊下から居なくなって、先輩がヒロ達を追いかけようとしたところ、

俺は、野次馬の中から飛び出して、
思いっきり先輩をぶん殴った。

別に、代わりだった。

どんなに、
先輩に馬乗りになって、殴っても、
先輩の綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしても、
先輩の汚い血を見ても、気持ちは晴れない。

先輩が泣いていたことで、須藤の噂が本当なことをやっと悟った。
じゃあ、あの時、ヒロは須藤にレイプ犯の罪を被せられたんだ。


なのに、助けた。


1番はヒロをぶん殴りたかった。


殴ってる最中、先輩をヒロに置き換えた。
けど、ヒロが嫌だ、嫌だ、とうるさく泣きわめくより、俺の暴力を受け入れる方がいい。

身に染みて、感じろ。

自分は俺のものだって、
叩かれても、拒否するな、受け入れろ。

もっと、心と体の奥に、奥深くに、



『いじめられるなら…ちぃちゃんがいい』



その言葉を、心中で反芻していると、


ぐちゃぐちゃになった心情が少し、


晴れる気がした。










「…俺、許せねぇんだよ、」

ベッドの上で寝転がりながら、ぼーっと天井を見つめていると、自身の顔に視線を感じる。視線を追うと、俺の傍、ベットの縁に座っている、千透星くんが俺を横目で見つめていた。

「…何」

目が合って、返事をすると、千透星くんは目を逸らし、ぽつりぽつりと呟くように話し出した。

「須藤も、お前も」

「…なんで、」

「須藤は裏切ってきたから、」



「ヒロは、俺をぐちゃぐちゃにしてきたから。」



…ぐちゃぐちゃにした覚えなんかない。

ぐちゃぐちゃにされた覚えならある、心も…
“体のナカ“も

体のナカは
今さっき、ぐちゃぐちゃにされた。

別に、千透星くんのは、挿れられてはない。

男とヤッたことある、千透星くんからしたら、俺の中は狭いらしい。
当たり前だ、入れたこともないし、そこは入れる穴ではないのだから…
指を入れられた所で、俺がずっと、痛いッ!と叫んでいたら、千透星くんは不愉快そうに顔を歪め、止めてくれたが…

"次までに解せよ"

…そう言われた。

俺は、千透星くんの言うことを無視した。
それより寒いから、起き上がってベッドの端に脱ぎ捨てられたシャツを着ようとするが…
最悪、ナカが気持ち悪い。
動く度に違和感がして、死にたくなった。


「おい、無視すんなよ」

「…え」

無視すんなと言われても…
自分でわけのわからないことを言っている自覚は無いのか。
理解できないから、言うこともない。

「ぐちゃ…ぐちゃ、にしたっけ、」

そう言うと、千透星くんは俺の腹を叩いた。

何を言って欲しいんだろう、

…謝罪?…もしかして、いやもしかしなくても謝罪か!千透星くんが今の今まで俺に求めてきたものって、謝罪くらいしかない!


「ごめんね、」


「…分かってねぇのに言うなや!」

千透星くんは大声で怒鳴り、俺を睨んだ。

それに、俺が固まっていると、強く俺の腕を掴んで、引っ張ってきた。

顔を近づけられて、キスをされた。

どうゆう風の吹き回しだろう、
怒っていたのに、俺を求めないのに、


何を考えているのだろう。


キスされながら、目を閉じる。

その方が、心が落ち着くし、
すぐ終わる気がする。

そういえば、俺は昔から、千透星くんに殴られている時も目を閉じていたな、

心から、
"愛"を、
受け入れるように、

身体で、
受け止めて、

千透星くんの、

俺の
頬を叩く、手のひらも、
頭を踏みつける、足の裏も、
鳩尾を殴る、拳も、


愛だと、勘違いして、
無意識に、そうしていた。



「復讐、」


俺の頬に、冷たい手が添えられた。
ゆっくりと、目を開けると、
すぐ、目と鼻の先に千透星くんの顔がある。


「これは、復讐なんだよ、ちぃちゃんへの」


「どうゆう…?」


千透星くんの手が
俺の首筋へと手を這うわせる


「今度こそ、ちぃちゃんを1人にする。ちぃちゃんから、全て、お前ごと奪う。……俺の事、忘れるな、逃げるな、」



千透星くんが、俺の鎖骨をなぞると、

そのまま細い首筋に噛み付いた。


「いっ…!」





「したら…殺すからな」





千透星くんは、
口の橋を吊り上げて、
冷ややかにも薄ら笑いを浮かべた。

























外は、土砂降りだった。
それに、千透星くんは傘ひとつ持たせず、
俺を家から追い出した。

とぼとぼと、俯いて、
びしょ濡れになりながら、歩く。
シャツが濡れて、張り付いて気持ちが悪い。

ついでに、すれ違う人達からの視線も痛い。

今の俺は痛々しいのだろう、
こんな土砂降りの中、傘もささずに、俯いて歩いて、チラリと見える首筋には赤黒い痕。
…数日は、消えないだろうな。

千透星くんは、これで学校に行けというのだ。千尋への復讐の為だと、俺も千尋も、1人にして、不幸せにする為に。

傷口を撫でた、

これは、愛の証なんかじゃない、
千透星くんは、ちぃちゃんは俺の事なんて、これっぽっちも好きじゃないんだ。

そう思うと、
なぜか、千透星くんにキスされている時も、行為中も、酷く虚しかった。



『洸人の事が…好きっ…』



…あぁ、俺は、千尋の事を、裏切ったんだ。
千尋は俺のことを好きだと言ってくれたのに、ハッキリと答えを出さないまま、こうやって千透星くんと会ったんだ。

千尋の気持ちを考えると、罪悪感で死にたくなった。


なんで、俺は生きているんだろう。

俺は、俺のことが好きな、ちぃちゃんが、
好きな子をいじめちゃう、ちぃちゃんが、

好きだった。愛おしかった。

けど、それは勘違いで、
"ちぃちゃん"なんて居なかった。

俺は、今まで、何のために生きてたんだ、

唯一俺を好いてくれた、
千尋さえも、俺は裏切った。



思わず、雨の中、歩道でしゃがみ込んだ。
膝を抱えて、ゆっくりと、目を閉じる。

他のことに考えを巡らせることにした。


目を閉じるのも、俺の癖だ。


目を閉じると、心が落ち着く、
時が早くすぎる気がする。

千透星くんに、
殴られ、蹴られている時も、
…触れられて、キスされている時も。

目を閉じていた。

…本当は、俺ずっと、
身体では拒絶していたのかもしれない。

無理矢理、勘違いしようと、現実を見ないように、目を閉じていただけなのかもしれない。



あぁ、俺、ずっと死にたかったのかも。



膝を抱えて俯いているのに、
頬を伝う感触がする、

涙は熱くて、雨は冷たい。
そう感じると、寒くて、震えた。

目を閉じているからか、耳がよく聞こえて、地面に雨が打ち付けられる音が、嫌に聞こえる。



なんかこの雨が、ヤベェ酸性雨で、すべて溶けて消えれればよかった。




…死にたい、

死にたい、


死にたいッ…!


そう心の中で叫んだ時だった。





「…大丈夫、ですか?」





うるさく頭上で落ちていた、雨音が消えた、



驚いて、パッと顔を上げると、
見知らぬ人がこちらを覗き込んでいた。
俺に、傘を差し出している。


「ぇ…あ、」


同年代くらいだろうか、男の人、
綺麗な顔立ちで…
そんな顔が、俺の顔を見るなり、目を見開き、ぎょっとした顔をする。

すると、その人の視線は、俺の顔から少し下…痛々しい痕の多い、首筋に視線が落ちていた。

その顔を見て、やっと、自分の状況を確認できた。恥ずかしさから、顔を下げて、その人から目線を逸らす


「す、すみませ…」


「…こんな雨の中、しゃがみ込んでると、風邪引くよ。」


それは、優しい声色だった。
その声に無性に泣きたくなった。

…けど、ダメなんだ。
今泣いたらまた心配をかけてしまう、

もう、逃げてしおまう、

だが、立ち上がろうとしても、足が震えて動かない。痺れてしまったか、どうしても立ち上がれなかった。

そんな、俯いて、動かず、黙りこくっている俺に、目の前の人がしゃがみこんだのが、視界の端で分かった。
彼は俺の震える冷たい手をとり、自身の傘を持たせた。

彼の手は、温かかった。



「…こんな、再会になると思ってなかったな、」



…再会?

その言葉に驚いて、顔を上げて、再度その人の顔を見た。


「…え?」




「小鳥遊…洸人、だろ?」




彼は優しく微笑んで、俺に笑いかける、




……ごめん、めっちゃ分かんない




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