異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

文字の大きさ
21 / 95

007-① 契約!?

しおりを挟む




「あとどれぐらい?」
「もうすぐだ」

 朝靄が広がり始めていた。

 俺とウィルが乗る馬を囲うように並走する近衛隊は馬上ではフードを被り、突き出た顎をスカーフで巻いて隠している。全員、黒ずくめ。まるで夜の闇から湧いて出てきたかのようだ。

 俺はウィルに抱え込まれて、目だけぎょろっと出てる状態。ウィルの大きな体によって、朝方の凍てつく追い風から守られている。
 
 俺は男だから、本来守る方でいたいんだけど。

 心地いいよ。こんなのはダメだと思うんだ。

 だだっ広い農地の間を突っ切って、地平線まで伸びる乾いた土の道路を、馬の隊列が蹄の音を幾層にも響かせて駆け抜けていく。
 
 薄い雲を裂くように、太陽が昇ろうとしている。

 左側から。ということは、隊列は南に向かっている? その前に、ここは北半球なのか? 地球なのか?

 どこに行くのか聞いたところで、地名も何もわからない。

 勉強……、しなきゃな。風変わりな医者先生には、帰れたニンゲンなんか知らないよって絶望的なこと言われたし。

 いや、望みは捨てるな。希望を持て。俺が元の世界に帰ることができた暁にはレジェンドになれるかも……!

 そんなことを考えていたら、後ろのウィルにギユゥゥゥと締めつけられて、また頬をスリスリされた……。

 帰って欲しくないって言われてるみたいなんですけど……。

「………」

 何か言えや。

「………」

 言わないのかーい! ちっ。甘え上手かよ!

 舐められそうな勢いでスリスリとグリグリをされている。しかも進行速度を落とさない状態で。ちょうどイイ感じで揺さぶられてる上に、ウィルの滑らかな毛並みが頬に当たるのが気持ちいい。寝そうになるな。寝ないように我慢してんのに。

 そんなこんなで鬱蒼とした森に入る直前だった。

 隊列が乱れ始めた。霧散するように走り去っていく黒い影の後ろ姿を見て合点した。危機は脱したのだ。

 残された数騎で森の小径を進む。

 周囲は侘しさを感じるほどに静かだった。

 聞こえるのは軽快に地を蹴る馬の蹄の音だけ。

 陽光が差し込んできた。徐々に森の中が仄白く明るくなっていく。

 朝の冷たい空気の上に草木の匂いが漂っている。俺は頭を覆っていたスカーフを取る。

 前方にポツンと一軒家を認めたからだ。

 ヘンゼルとグレーテルに出てきそうな、赤茶色の屋根瓦の可愛らしい家だった。

「着いたぞ。文句も言わずによくここまで頑張ったな」
「………」

 まさか、ウィルに褒められたか今!? 突然の方針転換とか困惑しかないんですけど!?

「いや? 俺は座ってただけだし」
「慣れない土地での旅は体に堪えるだろう」
「………」
 
 不意打ちに優しくするとかやめて欲しいよね。反応に困る。

 馬の列が家に近づいていく。全体を見れば、瓦屋根からして少々歪んでいる。家としての体裁は保たれているが、非常に古そうだ。

 ここ、何なの。

「暫くお前を休ませる。見張りは増やした。安心しろ」
「あ、そう」

 重要人物扱いされてるのは誰なんだって話なんだけど。

 馬、もといエーファから俺は何の前触れもなく降ろされる。毎度ながらウィルによって軽々とだ。

 地上に降ろされて安心してしたものの、やっぱり尻は痛かった。

 ウィルも跳び降りる。俺の側に。

 むむ、となる。ウィルと並ぶと身長体格の差が歴然としてしまうから。

「何を食べたらそんなに大きくなるんだよ」

 だから、憎まれ口のひとつでも叩きたくなる。

「さあ? そういえば、お前は色々と小さいな? お前こそちゃんと食べてるのか?」
「俺の国じゃ俺は平均で標準体型だ。お前がデカ過ぎるんだ」
「その大きさでか? 俺も平均だぞ?」

 ウィルに声をかける護衛がいる。ウィルが一言返せば、護衛はさっと引く。
 立ち振る舞いも堂々としてるウィルを前に、俺の年上としての威厳は果てしなくゼロになっていく。

「確かにサベラはニンゲンよりデカいかもだけど、村にお前サイズはそんなにいなかったぞ」
「王都、ティタジェイルには有り余るほどいる」
「え」
「見たいか? なら、行こう」
「え」

 ウィルが俺を後ろから抱えてくる。ウィルの片腕で易々と体を縛られた俺は足すら地面から浮いて、完全にウィルのオモチャ状態になる! 機嫌のいいウィルにブンブンと振り回される。

「こら、は、離し……、なさい!」
「何でだ。嫌だ」

 えええ!

 初めて会ったときとウィルが別人だ。また顔をスリスリしてくる。あのウィルが俺に身体的接触を求めてくるとかないから。

「いい! 降ろせ、自分で歩く!」
「俺は紳士だぞ?」
「何言ってんの!?」

 護衛は全員、とっくに馬から降りている。馬はそれぞれの手綱を引かれて、家の裏に連れていかれる。コントしてる俺たちを見ないふりして、無言でだ。

 お前たちの王子様をツッコメ!



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

転生したら猫獣人になってました

おーか
BL
自分が死んだ記憶はない。 でも…今は猫の赤ちゃんになってる。 この事実を鑑みるに、転生というやつなんだろう…。 それだけでも衝撃的なのに、加えて俺は猫ではなく猫獣人で成長すれば人型をとれるようになるらしい。 それに、バース性なるものが存在するという。 第10回BL小説大賞 奨励賞を頂きました。読んで、応援して下さった皆様ありがとうございました。 

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。  2026/01/09 加筆修正終了

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...