異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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010-① 儀式!?

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 獣人、サベラの体はアメフト選手みたいに大きい。

 だから、建物もろもろも大きい。サベラのサイズ感に合わせて設えてある。

 階段一段一段の高さすら俺を困惑させる。

 風車の塔やお菓子の家では感じなかった、大きさ広さ。

 加えて、上階に近づくに従って増す、金色の壁面のド派手な装飾には圧倒される。

 ここは王宮。贅沢な空間作りは国家の威信を感じさせる。

 何者でもない、異世界から来た庶民の俺はここでは確実に浮いている。

 俺の次の住まいはどこなのかなあ……。少なくともここじゃないよなあ……。

 内装のインパクトに気後れして、俺の意識は半分飛んだ。

 ウィルを見たら、戸惑っている俺を見てニヤニヤしていた。

「お前にはしばらく『奥の塔』にいてもらう。外に簡単に出られないように、だ」
「嘘だろ。何でだよ、出たいし」

 街にいつでも行けるとか、そんな気軽な立場じゃないってことはわかっているのだが……。

 俺はいつか自由になれるんだろうか?

「はっ。俺にはって……、ウィルはどうするんだ?」
「『奥の塔』は俺の私室なんだ。式が終わるまではなるべく俺も塔から出ずに執務を済ませるつもりだ。俺の手が空いていないときの用件は全てジークに託せ。ジークは番持ちだから安心しろ。お前の匂いにあてられることはない」
「匂いって。俺からそんなに……?」
 
 匂い匂い言われると、いい気はしないなぁ。

「まあ、警戒はされてるな。男オメガは兄上の番以来だ。そこら辺に転がってるものじゃない」

 ウィルの言う兄上、とは王太子のことである。

 近衛隊から距離を取られている気はしていた。ジークとやらにもだ。
 俺が異物だからだと思っていたが……。
「食いたくて堪らなくなる」かもしれないと、意識されているということ……。

 ゾーッ。

「どうした? 心配しなくてもお前は一人部屋だからな? 俺は隣室にいるし、猫対策はした」
「猫……」

 またたびでも置いたのか?

 あの老猫とはあれから会っていない。

「俺は許可が下りるまでずっと閉じ込められるわけ?」

 猫に怯えながら?

「許可? 外に出たければ俺かジークに言え。まあ、自室でやってもらうことは多い。明日からはお待ちかねの『教育』が始まるぞ。教師が来る。式までにお前の頭の中にある程度の知識を詰め込んでおく必要がある」
「教師!?」

 マナー講師か何か!?

「言語、算術、体術の教師も別に来る。お前の話し相手になるだろう」
 
 見ず知らずの教師と一対一とか想像するだけでキツイな。

「せ、せめて同世代で一緒に勉強するとかない?」
「考えておくが。……お前に付き合えるのは狐くらいか。言葉の問題があるからな。しかし、あいつも忙しいんだ」
「アンバーなら嬉しいけど」

 でも、女子だからな。男子がいいな。

「お前は狐にもだいぶ気を許してるな?」
「まあ、ね。良くしてもらったから」
「……お前、もしかして」
「今日はこれからどうするんだ」

 ウィルがおかしなことを言ってきそうだと思って直ぐに話題を変えた。ウィルの前では、アンバーがいいとか男がいいとか、余計なことは言わない方がいいように思った。

「……ああ。食事をして、その後に枢機卿に会う。説法を受けた後で奥の塔を案内する。お前の部屋には広いバルコニーもある。プール付きで体も動かせるぞ」

 またウィルは話をごちゃ混ぜにしてくる。枢機卿への面会もまた、俺にとって厄介な面倒ごとなんだった。誤魔化してきたな……。

「……一人で」
「寂しいか? 今日から同室にして一緒に寝るか?」
「寝ない」
「ははは」
「つまらないんだよ、お前の冗談」
 
 俺は困った王子様から逃げられそうにない——。

 軽口を叩いているうちに、二階に到着した。

 赤紫色のカーペット敷きの広い空間はラウンジのようである。高い天井にはシャンデリア。革張りのソファが至る所に置かれ、動植物の彫像が奥までズラッと並んでいる。

 俺たちを待ち構えていたかのように近寄ってきた犬人間がウィルに最敬礼。その場で二人は話し込んでしまい、動かなくなった。

 俺はというと、犬人間の影に隠れていた猫人間に促されて、左側の部屋にフラフラついて行く。その観音開きの扉が閉まるときに、その向こうに立って俺を見送るウィルの口が開いたのを見た。

「え」

 あれ!?
 
 離れないって言ったのに!

 バタン。

 自動扉のように扉が閉まる。待ってくれ!? 部屋に閉じ込められたんだけど!?

 焦っていたら、後ろから声掛けをされた。

「え?」

 何を言われたかはわからなかった。振り返ったら猫人間から二言三言。参ったな。言葉がわからないのって本当に不便。

 俺の服がむんずと掴まれる。そこで始まったのは、二人の『猫』による俺の着せ替え遊びだ! ニャーニャーなんて言ってる暇はない。怖いくらいの無言で忙しなく。ああでもないこうでもない。ついでに化粧まで!

 俺は女じゃないんだよ!

 なんて言える雰囲気では全然なかった。
 俺はあっという間に支度を整えられながら。

 あ、俺はこの猫人間二人から子ども扱いされているんだ、と気づいたのだった。

 そして、猫人間はやっぱり俺より背が高いわけだ……。

 ここでは俺は猫にも負ける……。


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