異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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010-③ 儀式!?

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 俺は処理落ちしそうになった。

 が、そこは美味しそうな前菜を見ることで心を落ち着かせることができた。



 席次だけ見れば俺が歓待されているように見えるのだ。が、異物な俺には自覚がある。

 俺本体はこの場で空気。

 仕切りの犬人間による乾杯の音頭があった。乾杯のあと、グラスを下ろし、席に着いたらば直ぐだった。

「カイ」

 王様に呼ばれて顔を上げた。

 ウィルと同じ茶色い目が、真っ直ぐに見つめてくる。

 あ、この人には無視されてない、と思えたんだけど。

 そのときの俺の目は、だいぶ虚ろだったかもしれない。

「ここはどう?」
「あ、はい。いいところです」
「そう」

 会話終了。
 でも、王様はニコニコしてくれる。俺も笑っておく。

「うーん」

 ニコニコしながら唸られて、ドキッとした。

「判断のつかないうちに会うのはどうかと思っていたが、確かに君は特別なオメガのようだ……」

 俺は反応に困って黙っていた。

「契約、した?」
「はい」
「いいね」
「はい」

 !?

 俺の代わりに王様に返事をしてくれたウィルの方を向いて、俺は驚愕している。

 いつも余計なことを言うウィルが澄ました顔をして、王様相手では余所行きの声で一言返すだけ!

 ウィルが近衛隊と話しているのをよく見るが、何をそんなに話すことがあるんだというくらいよく喋る。

 今は無口を気取っている。こんな一面も持ってるんだ。

 俺はウィルに噛まれた首に手をやる。歯型など、とうに消えたはずのその部分がずっと熱い気がしていたのは気のせい……、ではなかったのか!

 ウィルによる一方的で野蛮な謎契約が、わかる人にはわかるらしい。どういう原理?

「オメガの匂いが変わるからだ」
 
 ウィルが俺の視線に気づいて、そっと耳打ちしてくる。
 王様がますます機嫌良く笑ったように見えた。

 顔を寄せ合って仲良いねって、言われてる気がするんですが!? 恥ずかしいんですが!?

「あっはっは」
「!?」

 俺の気持ちが王様にも漏れている気がした。王様の楽しそうな笑い声が部屋に響く。気づいたら、テーブルを囲む全員が笑ってる。えっ。そんなに面白いところあった?

 ツッコミを入れたい。新たウィルはそんなんじゃないってば。違うってば。

 加えてこっちはあんな怖い話を聞いちゃってるから、アンタたちにどんな反応していいか困ってるよ!
 
 と思いながら俺も、

「あはは」

 取り敢えずの愛想笑いをする。

 親との顔合わせは大事なイベントだからねって。

 俺! 流されてるぞ!?

「調子が良さそうだな、ウィルバード」
「はい」

 さっきからウィルがメチャクチャ素直だ。王様に対する態度が俺に対する態度と全然違うな。
 
「早く婚礼の儀の日程を決めよう」
「はい」
「よし。コンラート」

 王様が、例の渋い犬人間、コンラートを呼んだ。因みにその前、コンラートは警備としてでなく、ちゃんと俺と同じ列の端に着席していた。

 コンラートを傍らに立たせた王様を中心に複数人でテーブルを挟んで何をか話し始めた。

 雑音もなく落ち着いて聞けたので、少しだけ言葉がわかった。

 今日初めて会った別の犬人間曰く。

 この子、まだ子どもじゃないか?
 
 コンラートが俺の年齢を答え、何だとっ!? と驚愕されるまでが俺の鉄板ネタとなる。

 なお、俺とウィルの席の列は直系でない親戚が並んでいるらしい。コンラートは親戚……。

 えぇえ……。俺、コンラートにはもう既に嫌われてると思うんだよね。

 主菜が運ばれてきた。魚料理だった。俺の後ろに立っていた猫人間はいなくなっていた。

 別室で同じものを食べられてるかな? ここの猫は魚を好きか否か……。

 食事をしながら、俺はなぜかアンバーを思い出していた。

 俺が倒れたとき、アンバーは通いで看病しに来てくれた。

 あいつはいい奴だ。具合が悪くて体が起こせなかった俺にたくさん話しかけてくれた。



 そのときの話。

 以下、回想。

「……ウィルは昔から問題行動が多くてグランバーグで目立ってたんだよ。私はその頃のウィルをよく知ってる。ウィルがオメガを自分で探して連れてきたなんていったら国中で大変な騒ぎになるだろうな。でもきっと王様はとっても喜ぶよ。王様はウィルが好きだから」
「……へえ。まあ、相手が俺はないよ……」
「そう?」
「……グランバーグとかいうところには行ってみたいけど……」

 アンバーの話を聞いたとき、俺はウィルに向かってハッキリと、俺との結婚はないよと断言したあとだったし、体調不良だったしで、生返事していたんだ。

「……アンバー……」
「何」
「ウィルの問題行動って、何……」

 そのときの俺はぶり返した熱で朦朧としていた。でも、気になるものはいつだって気になる、という話で。

「教えて……」
「自分の立場を利用して、行く先々で小さな揉め事に首を突っ込んでいた。近衛隊長のコンラートを連れて」
「……今、ウィルって十八だろ。いつの話、それ……」
「数年前の話。それで、アルファでもオメガでもないベータの市民から持て囃されて慕われてた」
「いい話だな……?」
「そうでもないよ。やっぱり少し……、危険なことはあった」
「どんな……」
「ウィル自体が狙われることもあったんだ」
「ああ……」

 まあ、そうか……。
 勝手な行動をしてみんなに迷惑をかける、というやつだ。規律を乱すなと疎ましがられそうだな。

「ウィルはベータの女からモテるよ。だから、ウィルの相手はベータの女どもから羨ましがられて嫌われるかもしれないね。大変だね」
「……大変だな」
 
 あのときは適当に同意したが。

 今の俺の状況。

 ウィルのヨメ扱い。

 嫌われ者街道を一直線。

 何でだ。俺は嫌だと言ったよな? それから? それからどうしたんだっけ? 嫌だと逐一言い続けてだな……。

 引き摺られるでもなく、ここにいる。これって、何なんだ。ウィルのチカラなのか?


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