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010-④ 儀式!?
しおりを挟む俺の存在が世に出たらば。俺を一目でも見たのならば。こんな奴、いつでも蹴散らせるぜと普通に思われると思う。妬まれる気はしない。
俺はただの日本の大学生だからさ、何も特別じゃないよ。
今このときに、王様以外から話しかけられることはない。唯一の顔見知り、例の渋い犬人間、コンラートからも。
ああ、気づいちゃった。俺、知らないうちにみんなから嫌われてない?
見た目か? 振る舞いか? 存在そのものが気に入らない?
……まあ、いいか。
母さんが言っていた。
大事な人から好かれればいいんだって。
大事な人? ウィル? うーん。
好かれてるというか何というか。どうだろうか。
マルチーズ兄弟からは好かれてる気がする。
よし、明らかな嫌がらせを受けてから考えよう。何か問題が起きたら実家に帰らせていただきます的に、あのお菓子の家に帰らせていただこう。
それにしてもと周りを見渡す。
犬人間、俺よりもテーブルマナーが美しいんですけど?
……かくして、このように、俺は少しずつ後ろ向きになっていったわけだ。
会食はつつがなく進んだ。というか、周りが会話する中で俺は一人、ひたすら食べるだけだった。
美味しかった。俺のイメージにあるフランス料理みたいな繊細な盛り付けは、見ているだけで楽しかったし、複雑な味だったが俺の味覚に合っていた。
無心で食べる。
誰が作ってるんだろう、作っているところを見てみたい。サベラかな。だとしたら、ホントに絵本の世界。そう思ったときだった。
「オズキュル」
コンラートの声がした。俺は身を乗り出す。
「ウィル、オズだよ」
オズを見た俺は思わずウィルの服の袖を引く。
「ああ」
何だ、ウィルの気のない返事は! 嬉しくないのか!
俺はここでオズとの感動の再会を果たす。
オズはスタイルの良い体に宝石の散りばめられたドレスを着ていた。祭壇の女性像が着ていた服に似ている……。
扉が閉じられると同時に、オズはゆっくりとした足取りでテーブルに向かってきた。
全員がオズを見る。注目するに値する超美人。
オズはテーブルの手前で立ち止まる。
「遅くなって申し訳ありません」
「いいや。首尾はどう?」
「はい、問題なく」
「それはいいね」
英語でのやりとり。オズは王様にも堂々と答える。
オズは俺とは反対側のウィルの隣に座った。
ウィルの両サイドに俺とオズ。
困ったぞ。
オズの美しさと気高さの前に俺など塵に等しい。
俺がここにいる意味とは……。
そのときにはもう、俺には自信なんてものがすっかりなくなっていた。
「オズギュル。ありがとう。カイを見つけてくれて」
王様が言った。
そこは見つけられたというか。俺が乗り込んだというか? そのあたりはどう話してあるんだろうか?
王様はしばらくオズと話していたが、
「エギナから特使が来ているんだよ」
不意だった。王様が俺に向かって言った。
「え?」
王様は俺に向かってニコニコ。
エギナって、オズの嫁ぎ先のことか?
何故、突然、俺に?
俺が困惑していると、王様はウィルの方に向く。
「ウィルバード、お前はアバディーンに行ったんだってね」
「はい」
相手のノリが悪いと察すれば、王様は話す相手をどんどん変えていく。
「私に声をかけてくれれば良かったのに。首長に渡して欲しいものがあったんだ」
「……申し訳ありません。急ぎの用でした」
アンバーの言う通り、王様はウィルのことが好きなような気がする。でも、ウィルはどうなんだろう。
話しかけられてもあんまり嬉しそうじゃない。
複雑な親子関係を垣間見てしまったよ……?
王様はデザートが出てくる前に席を立ってしまった。
デザートの一つとして出てきたブラウニーを見て、む、となる俺。
王様の番、王妃(?)様も含めて他は残っていた。
「ウィルのフェロモンに負けないなんてさすがだね」
ん? 誰に言ったのかと思ったら。
「それだけ隣にいたら普通は倒れちゃうよ」
俺はハッとする。あれ!? 王妃様!? 俺を見ないで言ってるよ!?
「……王妃殿下」
「ああ、ごめん。揶揄ってるわけじゃないんだ。ウィルは直ぐに怒る」
聞き取りやすい英語だ。いい声だな……。だが、目は逸されるな……。そんなに俺を視界に入れたくないのか……。
ウィルが睨むと、王妃様は微笑を浮かべた。そして、席を立った。
それを皮切りに他の出席者もどんどん席を立っていく。
結局誰が誰だかよくわからなかったが、とにかく会はお開きになった……!
取り敢えず、終わった……!
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