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012-③ 告白!
しおりを挟む翌朝。食事の配膳に来たジークより業務連絡。
「教授を増やした」
「あ、はい。わかりました」
ジークは俺に気を許さない。
で。
食事を終えて間もなく、言語のクマ先生よりも更に大きいクマがやってきた。たくさんの本を抱えて。
テーブルに向かい合って初見のクマ先生を見上げながら、俺は思う。
これ、グリズリーとかいうんじゃないの……。
そしてにわかに始まったのは、グリズリーによる歴史の授業である。
丸メガネをかけたグリズリーは白髪混じりの毛並み。おじいちゃんぽい。教え方はゆっくりで丁寧。
午前が終わり、昼が来る。食事を届けにやってくるジーク。
そして、俺の食事中にノックされる扉。
ジークと一緒に現れたのは鳥人間。午後は枢機卿の部下による宗教学。
俺は慌ただしく食事を片付ける。
鷲かな? ちょっと色々混ざってる気もするけど。鋭い嘴に啄まれそう。
それから、また。
夕食前。相変わらずの曇り空の下、ルーフバルコニーでタヌキと謎の踊りでエクササイズ。
エクササイズが終わるとタヌキ先生は速やかにさようなら。
俺はタヌキ先生を見送った後、急いでシャワールームへ。俺が寝るまで来客は続くと踏んでいる。このタイミングでないとシャワーできない。
案の定、出てから直ぐだ。
髪を乾かしているところで、扉が叩かれる。
タイミングよくやって来た猫二人は鉢巻きをして完全にヤル気だった。
「どうも、どうもぉ。お掃除しに来ましたぁ。いやあ、そんな汚れていなそうだ、今日はやらなくていいですかぁ」
「こら。いやぁ、失礼な弟ですみません」
「だってこの間掃除したばかりじゃないか」
「仕事放棄みたいなことは恥ずかしいからやめなさい」
なんと、猫は英語を話す。ついでに漫才のおまけつき。
猫の背後には一切合切の冗談が通じなさそうなジーク。
この対比はちょっと面白いかもしれない。
「中に入っても?」
「あ。はい、お願いします」
猫を部屋の中に通すと、ジークは帰る。
基本的に俺の部屋の来客はジークが連れてくる仕様になっている。
さて、猫は箒を股に挟み、袖を捲りながら俺を見て言う。
「どうですか、調子の方は。匂い消し、ちゃんと効いてますか?」
「匂い消し?」
「ええ。強めにしときました」
なんと。消臭効果が備わっていたのか、この部屋は。
「どうやって匂い消しをしてるの?」
「おまじないですぅ。空気の流れをよくするのですぅ」
にゃんこの結界は空気清浄機能付きだ。
教授陣はそれぞれ香水をつけてやって来る。その気遣いを、匂いに敏感になってしまった俺が気づかないわけはなくて、心の底からありがたいと思っていた。
「サベラには様々な種がおりますからね。アルファもベータも匂いをとても気にします。調香師に言えば好きな匂いを作ってもらえますよ」
「へえ」
二匹、もとい二人は双子のような連携プレーで広い部屋をザッと掃除してくれる。
サベラの毛は結構抜けるらしい。リビングはカーペットだから、箒は使えない。掃除機のようなもので吸い込んでいく。
騒がしい掃除だ。この猫たちは出会ったときからいつも忙しない。
俺の記憶にある猫は、なんというかゴロゴロしている。
猫が働く間、俺は歴史と言語を予習に復習。あんまり集中はできない。
「あれ?」
寝室で、素っ頓狂な声を出した後にコソコソ話し始める猫。
つい気になってしまって、俺は勉強を中断。立ち上がって、二人の傍へ。
「何か問題でも?」
「うーん。ここ、誰か入って来ましたか?」
振り返った猫二人に心配顔をされて、俺は咄嗟に白い老猫を思い出した。
「いや。寝室には誰も」
猫は顔を見合わせて二人して顎に手をやって考え込む。
「弱かったかなあ」
「かなあ。昨日の夜かなぁ」
弱いって、結界のことか?
「……何があったんですか?」
「チョコレートです」
「チョコレート」
猫は寝室のテーブルに置いてあった木箱を手に取る。
「これですぅ。ニンゲンはチョコレートが大好きですよねぇ。僕たちは好きじゃありませんけど。街には何軒も専門店があって、いずれも大人気なんですよぉ」
「そうなんですか。行きたいな」
あまり部屋の物には触れないようにしているので気づかなかった。
直近の甘いものの記憶といえば、マルチーズの奥さんが作ってくれたカップケーキ。
また食べたいな。
「誰がくれたかわからないものなら、捨てた方がいいのでは?」
「いいえぇ。誰かさんからの贈り物かもしれません。予約でしか買えないシリーズですよぅ」
この二匹、もとい二人は同じ顔をしているが、喋り口調が全然違うんだ。
「特別なときに相手にあげるものです」
猫はしばらく話し合っていたが、結論。
「大丈夫そうです」
「え。誰が置いたものかわからないのに?」
「我々が毒味するわけにもいきません。どうぞご自由に」
猫はトボけてた。
そんな怪しいもの食べられませんけど。俺はブラウニーで自由を失った。チョコ味に誤魔化されたんだ。
「ジークに話してみようか?」
「笑われますよ」
ジークは笑わないと思うし。
誰なんだ、そのチョコレートをくれたのは。教授陣の誰かか?
その夜、俺は夢を見た。
俺がいるのは森の中にある石造りのパティオ。
パティオの下の丸いテーブルには、アフタヌーンティーセットが既に設えてある。
奥の席には母さんがいて、その真向かいにウィルがいて、俺は真ん中に座っている。
俺の前にも、もう一人。
俺は今、立ち上がって、茶を淹れている。
ウィルは頭に金糸の刺繍が美しいターバンを巻いて、上等な着物を着込んだ上に華美とも言える装飾品を身につけて、相変わらず偉そうにふんぞり帰って座っているのだが、エプロン姿の母さんはそれについて何とも思っていなさそう。
「この子は小さいときから本が好きで。絵本なんかにありますでしょう、人が騙されたり、哀しむことに本気で心を痛めて怒るような子だったんです。そうならないようにどうしたらよいかと考えて、一人で悩むような、自分の殻に閉じこもりがちの。あなたのような人の傍にいて、落ち着かないんじゃないかしら」
「そうですね。すぐに感情が昂るようで見ていて面白いです。非常に感情的でニンゲンらしい。しかし、彼なりの正義があると解釈しています」
「いいんですか、この子で。落ち着きもないし、元々体も弱くて」
「私は——」
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