44 / 95
012-② 告白!
しおりを挟む「心配だな」
オズは見透かしてくる。
「カイは今、ウィルとの契約が弱い。婚姻の儀式まで日がある。それまでもウィルのフェロモンで偽装した方がいい。その匂いは想定以上だ」
「え?」
俺からどんだけどんな匂いがしてんの!
「オズよりも?」
「当たり前だよ」
「当たり前って。自分ではよくわからないんだ。ウィルからは契約だと言われたけど、適当に噛まれた気がしてる。ちゃんと噛まれとけってこと? えぇえ?」
かなり痛いんだけど。
「マーキングみたいなものだよ。体液を混ぜ合うんだ。血とか、唾液……」
「血!?」
「ほら」
オズが急に首元を曝け出したので、こっちは目を隠してしまった。
「見て」
オズがぐいっと前に来て、それはいやでも目に飛び込んできた。
肌に刻まれた傷痕は想像していたような歯型ではなかった。
「それ、ウィルが……?」
「ああ。でも、もう全然わからないだろ。今のカイよりも弱かった」
「弱い?」
「そう、弱い」
オズはいそいそと首元を仕舞う。俺はホッとする。
「だから、早く上書きしてもらう」
「えっ」
「今度はウィルに頼まないから安心して」
どう反応していいのかわからん……。
オズとウィルは割り切った大人の関係という奴なのか……。ウィルの子供っぽさからは想像がつかないのだが……。
想像、したくない……。
俺が黙り込んだのを見て、オズは首を傾げる。
「カイ、風車の塔でウィルからもらった懐中時計、まだ持ってる?」
「え。……ああ、うん。使ってもいいって解釈して勝手に借りてるだけでもらったわけじゃない。あ、今もつけてるよ」
俺はネックレスのチェーンを引っ張り出す。
「それは前国王がウィルにあげたものだ」
「げっ」
前の王様!
「そんな大事なものだったんだ。じゃあ、返した方がいいかな……」
「私が言いたいのは、カイが持っていたからその時計が無事だったってこと。聞いたと思うが、風車の塔は襲撃で崩壊した。焼失を免れた、いくつかの重要なもののひとつがそれ」
「ウィルは何も言っていなかったけど」
「ありがとう、なんて言わないよ。ウィルは」
確かに。
「この時計、向こうの世界のものなんだな」
俺は時計の後ろに彫られた文字を読んでいる。
「そうだ。前国王の番が持っていた」
思い出の品、というやつだ。
「そうなんだ。壊さないようにしなきゃな。首に下げてると落ち着くんだ」
「重くない?」
「全然」
それから、俺はちょっと間を置いて、言った。
「何で俺なんだろ、とずっと思ってる」
すると、オズがとても驚いた顔をした。
「何でって、それは……」
オズは口に手を添えて、内緒話するかのように身を乗り出してくる。
「先生、言ってなかった? 男オメガになるためには条件があるって」
「条件?」
「まさか聞いてないのか。信じられないな、あの人……」
「え」
そのとき、扉が叩かれた。俺とオズはピクリとして扉の方を見る。ギンギツネが開ける。
現れたのはジークだった。
「レナード。久しぶりだな」
ジークがギンギツネに向かって言う。これくらいならこの国の言葉は俺にもわかるぞ。
ギンギツネは頭を下げるだけ。
堂々と部屋に入ってくるジークに連れられてきたのは。
ヒョウとクマと……、タヌキ!
何、その組み合わせ!
「うわあ、凄い」
言葉を失った俺の前に出たオズが感嘆の声を上げた。
「これは本気だな。アカデミーから教授を連れてきた。私のときとは全然メンバーが違うじゃないか」
「オズ。時間だ」
ジークはオズにも愛想がない。
「わかってる。帰る」
オズは立ち上がる。
「カイ。また来るよ」
「オズ。俺からも会いに行ける?」
「うーん。カイはこっちに来ない方がいい……。私の番が何と言うか」
「え」
こっちってどっち。
「アルファは嫉妬深いんだ。ウィルもだろ。そうそう、外に出たかったら必ずウィルとね。一人ではだめだよ」
「そんなこと言ってたら、ますますウィルと離れられないじゃないか」
「離れる必要が?」
オズは足取り軽やかに去っていった。
若干モヤついてる俺を置いて。
で、代わりにジークだ。
「紹介しよう。彼らが今日から君の家庭教師になる……」
ジークだけでも部屋を狭く感じさせてくるのに、犬より大きいヒョウとクマに圧倒されながら、俺はタヌキを見て……、少し安心してしまった。
更に絵本の世界になってしまったな、ここは。
面談という名の尋問を受けたのちに、始まったのはタヌキによる護身術指導。マンツーマンである。
タヌキに窓の外に出されて捲し立てられる。何を言われているかはわからない。
木刀を持って、キレのある動きをする、襷掛けしたタヌキ……。
ハーフバルコニーで踊りのような体術を習う俺。
夜はジークが持ってきてくれた食事を摂りながらのヒョウによるマナー指導。
……どこにでもいるんだな、マナー講師って。
それが終わると、クマがやってきて言語強化。クマは英語を話してくれるし、教え方はすこぶるやさしいが、本能的に俺の体が恐怖している。
ヒグマだと思うんだ……。とにかく覚えなきゃ食われそうな緊張感を食らって一日が終わる。
俺はクマを見送ってから。
フラフラ歩いていってベッドの上に横たわり。
泥のように寝た。
15
あなたにおすすめの小説
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる