異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

文字の大きさ
43 / 95

012-① 告白!

しおりを挟む



 食器棚からカップとソーサーを出した。

 湯が沸いた。紅茶の茶葉を入れておいたポットに湯を注ぐ。

 それら全て載せたトレーを持って、オズの元に戻る。

 アンバーと部屋で話すときにお菓子の家で得た習慣。
 
「ありがとう」

 オズの声はやさしくて癒されるな……。

 テーブルに並べ、カップに茶を注ぐ。カップからは湯気が立ってる。

「カイは母親と二人で暮らしてたのか?」
「母さんが父さんと離婚してから、ずっと二人だった」
「そう、なんだ」
「もっとたくさん話したいことがあったのに。俺はもう二度と母さんに会えないかもしれない」

 今このとき、俺は本当に生きているんだろうか。

 死んで、若しくは永遠に寝ている状態で、今は夢にいるんじゃないだろうか。
 動物が服を着て歩いてる、そんな不思議な世界にいたら、一度は考えるだろう。

 自分がおかしくなったのかと。

 夢の中で、もう戻れない世界の夢を見ながら。

「会いたい。謝りたい……。心配かけてごめんねって。これからはずっと一緒だよって、安心させてあげたい。父親似の気ままな俺が母さんをいつも振り回していた。でも、母さんは笑って許してくれたんだ」

 俺はオズを見る。

「オズは……、元の世界に帰りたくないのか」
「私のことはいい。私はこの世界を受け入れている」

 俺と同じでオズにだって、会いたい人がいるはずなんだ。急に大事な人と会えなくなった不条理を受け入れるなんて哀しいことだよ……。

 カップに口をつけながら、オズは俺を静かな目で見て言った。

「帰りたいと思っているということは……、ウィルと離れられると思っているということか? カイはウィルとの結婚に合意したんだろ?」
「合意というか。強引なんだよ、あいつ。衣食住を世話してもらってる身分で拒否できない。狡いよ。あいつは俺じゃなくてもいいんだよ。代わりが現れたら俺はお役御免で」
「カイはウィルじゃなくてもいい?」
「俺は別に」
「君は気づいてるはずだ。君こそウィルでなければいけない。君はウィルから離れられない」

 その綺麗な瞳でジッと見つめられて、恥ずかしくなって目を逸らした。

「……ここでは、そうかも、しれない、けど……」

 ウィルになら好き放題なんでも言える。

 元の世界で思ったことが言える相手なんて……、母さんだけだった。

 わかっている。あいつが近くに居て苛つくのは、今となっては意味が変わってしまった。
 
「私は子供が産めないかもしれない」

 唐突にオズが言った。元・男性とはいえ、女性の見た目でそう口から発せられると重みが全然違う。

「それをわかってくれる相手でないといけなかった。相手を探すのが大変だった」
「オメガってもしかして、子供ができにくい?」

「そんなことないよ」
「男オメガも女オメガも変わらない。王太子の番は来てからまだ日が浅いから……。まだ……。でもみんなで気を遣ってる。カイはそんなこと考えなくていいんだけど。例えば、王陛下の御兄弟はみんな男オメガと番われて、それぞれ三、四人子供がおられる。生まれにくいということはない」
「男……」

 三、四人。そんなに? 多いな。
 あれ? そのうちの一人がジークか?

「昨日の食事会でも君のフェロモンを警戒して何人かは姿を現さなかった。君は早くウィルと番った方がいい。直系アルファで結婚適齢期なのはウィルだけだが、王族には独身アルファが何人かいるんだ。彼らと接触したときに何が起こるかわからない」
「先生は他に王家に適齢期のアルファいないようなことを……」
「あの人は……、まあいい。当然、他国からも同じ反応を受ける。君は表には出せない。だが、だからこそ、危険だ。契約が済んでいないとなれば……、私ですら、こうして保護してもらわねばならない」
「どうして子供を産むことができないかも、なんてわかるんだ」

 思わず声を荒げてしまった。

 俺はオズとウィルの関係には踏み込めない。口に出して聞くのは憚られる。

 いつの間にか外の爆音は止んでいた。

「これは私の問題だから」

 オズが言った。

「ウィルは関係、ない?」
「ない。カイ、ごめん。私たちのことでカイに嫌な思いをさせて……」

 認められてしまった……。

「オズは、それでいいのか……」

 俺は何とか声を絞り出す。

「何が?」
「何がって」

 二人の結びつきを解いてしまったのは、他でもない俺じゃないのか。

 王様のことを思い出す。そして、その番である男のことを。

 王妃様、美人だったな。王様と時折目を合わせたりなんかして、二人の世界へ入り込んでいた。

 番ってこうあるべきなんだな、と思った。互いを唯一無二に思い合う特別な関係を見て、羨ましいと思わないわけがないんだ。

 俺は茶を啜る。

 喧嘩ばっかりの俺とウィルがいちゃついてるなんて想像できない。

 俺にはできないと思うんだ。オズみたいにウィルと対等な関係を築くことが。

 じゃあ、俺はどう立ち回るべき?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。  2026/01/09 加筆修正終了

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

転生したら猫獣人になってました

おーか
BL
自分が死んだ記憶はない。 でも…今は猫の赤ちゃんになってる。 この事実を鑑みるに、転生というやつなんだろう…。 それだけでも衝撃的なのに、加えて俺は猫ではなく猫獣人で成長すれば人型をとれるようになるらしい。 それに、バース性なるものが存在するという。 第10回BL小説大賞 奨励賞を頂きました。読んで、応援して下さった皆様ありがとうございました。 

処理中です...