異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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018-① 危機!?

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 ……ここはどこだ。

 俺は焦茶色の天井を見上げている。

 光が建材の隙間から差し込んでいる。月光はこんなに強くないはずだ。なら、まだ昼間……?

 ガバッと起き上がる。体のあちこちが痛い。何だ、このデジャブは。

 俺、生きてる?

 この自問自答にもいい加減に飽きたよ。何回目だよ。

「うぅ……」

 板間に寝ていたせいで鈍痛がする頭を押さえながら、周囲を確認する。

 板敷板壁の細長い空間だった。

「よく眠る奴だな」

 ふっと顔を上げれば、見たことのある老猫の顔が眼前にあって、反射的に口が開いた。

 えっ、こいつ、いつ現れた!?

「またお前か! いい加減にしろよ! 俺をウィルのところに返せ、バカ!」

 白くて丸くて小さい体に向かって怒鳴り散らす。俺は若干パニックになっていた。足が縛られていて立てないことに気づいたからだ。

「落ち着け。何をそんなに騒いでるんだ」
「お前のせいだよ! またこんなところに閉じ込めやがって」
「お前はサムライの子孫だと聞いたが、話に聞くようなサムライの冷静さがないな」
「サ、サムライ?」

 この世界でも有名なの? そのネタ!
 
 そのとき、俺は老猫の輪郭がボヤけるのを見た。少し部屋が暗いからか? と目を擦る。

 今また、老猫の体が陽炎の中で揺らぐように変化したと思って、驚いて動きを止めたせいで思考を読まれた。

「見たな。気づいたか。勘は悪くなさそうだ」
「………」

 老猫が立ち上がった。
その小さな体から湯気のような煙が立ち上っていた。

 白い靄の中で、老猫の体の輪郭が蠢きながら服ごと形を変えていく。縦に大きく伸びていく。

 やがて空間の一点に吸い込まれるように靄が消えた。そこにいるのはもう老婆じゃなかった!

「な……」

 俺の世話係だったレイとリーより体躯が大きい。けれどもウィルほど大きくはない。

 ネコはネコだが、これ、なんだっけ。白いヒョウ。

 そうだ、ユキヒョウだ。白い老猫が若くて逞しいユキヒョウに変わってしまった!?

 俺の横にドスンと胡座をかいて座り直すユキヒョウ。思わずビクッとしてしまった。怯えてるところを見せたらダメだ!

「はい。これでお前も秘密の共有者だな」
「え?」

 声まで変わっている。さっきまで嗄れ声でゆっくり話してたのに。

 変装の達人?

「お前の中から沸き出てくる王子様のプレッシャーが強過ぎる。あの体じゃ耐えられない」
「はぁ? 俺の知ったことか。お前は何のためにこんなことを」
「金のため」
「金ぇ? 嘘を吐け!」

 こいつが金目当てなんて違和感しかない。俺は足をバタバタしながら抗議だ。

「違うだろ? それが何度も俺に会いにくる理由にならないだろ」
「わかるか。思いの外バカじゃないんだなあ?」

 何だ、こいつ。

「お前はあの時点で既に捕獲対象だった。私はお前をガムランに送るつもりだった。しかし、ダードルの奴らに奪われた」
「オズと俺を間違えたのはお前じゃなくてダードルの義勇軍だって言ってるのか」
「奴らにはニンゲンの区別がつかない」
「ああ……」

 それに関してはちょっと俺も怒れなくて。というのも、俺にもサベラの区別がつかないことがある。近いところで言えば、レイとリー。……別れのときまで微妙だったな。

 いやでも、俺とオズだぞ。目が腐ってると言ってもいいレベルだろ。

「ダードルはお前を荷馬車ごと攫っていってしまったんだ! あのときの無念さと言ったらないぞ?」
「何言ってんだお前は」
「シュロスドームで生身のお前を表に出したのは明らかに王子の失策だ。ティタジェイルから出れば、フラフラしてるお前を取っ捕まえるのなんて簡単なんだよ」
「お前はどっち目線なんだよ。俺をどうするつもりだ」
「次はイェーテに送る」
「イェーテってどこだ」
「遠いぞ。船で行く」
「俺をそこに連れていってどうする」
「売る。若い男オメガのお前は高く売れる」
「人買いか、お前」
「そうだ。俺自身の引き合いも多い」
「威張るな」

 人買いということは、自分で直接手を下すつもりはないらしい?

「ここから出せ」
「できない相談だ。ここまでの私の努力が泡になる」
「ウィルは俺を助けにくるぞ。お前はウィルに勝てない」
「次も逃げきるさ。どこまでも」 

 自信たっぷりに言われた。

「さっき、お前は聖堂で何をしたんだ……」
「目くらましを使った。王子様への効果は未知数だったが、お前を馬に乗せるくらいの時間稼ぎはできた。今頃は血眼になってお前を探しているだろうな」
 
 睨んでやったら、ユキヒョウが俺の顎を掴んできた。

「触るな」
「強気だな。発情期も来ない、何も持たないオメガのくせに」

 サベラの匂いに加えて、自分の優位性を示すだけの行為にユキヒョウへの嫌悪感が増大する。

「さて、昔話をしよう。私の生まれた国は極東の小国だ。ダードルとヴァルラが他国を巻き込んで諍いを繰り返していたころ、野蛮なヴァルラは中立だった我が国をダードルとの交易があることを理由に敵とみなして攻撃対象とした。我が国は間もなく滅びた」

 ユキヒョウが無表情で言うのを見て、俺は何も言えなくなってしまった。
 こういうときになんて言えばいいのかなんて、学校じゃ教わらない。

「悪はどっちだ?」

 俺の顎は乱暴に掴まれたままだ。

 ところでこのユキヒョウは英語を話している。訛りもあるし、少し難しい言葉回しをする。

 こいつはただの人買いじゃないんじゃないか?

 あのとき、俺はこいつの幻術にあっさりと取り込まれた。

 ウィルの手が俺の手を掴む前に。


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