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019-④ 正義と悪!?
しおりを挟む羽織の裾が長い。この世界の服は緩めで嫌いじゃない。
着替えるときに肌を見られないで済むなあ、なんて女みたいなことを思っていたら。
「カイ!!」
着替えの途中に聞き慣れた声で呼ばれ、急いで前を閉じて顔だけ振り向いた。
「えっ! ジ、ジークさん」
久しぶりに見るジークだった。実際は最後に会ってから二日も経っていないらしいが。
「良かった! 怪我はないか?」
「ありません。ジークさんも大丈夫でしたか」
「勿論だ。顔は大丈夫そうだな。体は!? どこかに痛みは!?」
「ないです、大丈夫です」
「良かった!!」
俺の肩を掴んで揺さぶってくる。基本的に俺にはつれない、で有名なジークがこんなに俺を心配してくれるなんて。
ゆっさゆっさと体を揺すられる。わかったから、帯を結ばせてくれ。
「ジークさんは何でここに?」
「陣形を整え直している。そろそろ出立するところだ」
「どこへ行くんですか?」
「殿下の 下に行く」
俺はジークの腕を掴んだ。
「俺も行きます! ウィルの下に!」
「それはダメだ」
「行きます! 何で俺を助けに来なかったのか文句言わなきゃいけないから」
「気持ちはわからなくもないが、殿下に気持ちを伝えるのはあとにしろ」
ジークが神妙な顔つきになった。
「アンバーが囚われた。それで殿下は討伐を優先した」
「アンバーが!?」
アンバーが囚われたってどういうことだ。あれから一体何があったんだ。それでウィルは俺よりアンバーを取り戻すことを優先したってことか。納得してしまった。アンバーは女子で、俺は男。
そういえばあの2人、犬と狐で相性は悪そうだったが、互いを理解している風だった……。
胸の中の燻りがどんどん大きくなっていく。
「ジークさん……、俺はウィルの番です。近くにいたいんです」
こんな感情、今まで知らなかった。
気づいたら、俺の濡れた服を畳んでいた白クマさんの息子が煉瓦の床に倒れていた。
倉庫の中にいる、離れたところで作業をしていたサベラも。みんな。
俺は自分の掌を見る。
体の奥から沸き起こる熱量で全身が燃えそうだ……。
一体どうなってるんだ。
「これが、殿下の契約……」
ジークが頭を抱えてよろめいている。
俺でさえ、俺の出してるフェロモンがキツイ……。心臓の鼓動が早い。息苦しい。
「恐ろしいな。これが本当の覚醒か」
「プラエトル! 何故エーファを……」
プラエトル、とジークに呼ばれた白クマさんに手綱を引かれてやって来たのは、紛れもなくエーファだった。
エーファが俺に擦り寄ってくる。俺もエーファに凭れかかった。また、会えた。良かった。
「エーファにカイを乗せるつもりですか。無理ですよ!」
たぶん、ジークはそう言ってる。
俺も無理だと思ってたよ。本当は。
「彼は乗れると言ってる」
「一度も一人で乗ったことがないのに!?」
体が熱っぽい。早く乗せてくれ。早くウィルのところに俺を連れていって。
白クマさんはこの澱んだ空気をもろともしない。アルファじゃないはずなのにどうして平気なんだろう。
「無理です、今の殿下は危険です。会わせるわけには」
「ほら、やっぱり……。ウィルは俺の知らないところでいつも戦ってるんだ。俺には言わないで、勝手に! そんなことしてたら、いつか死ぬかもわからないのに! 俺を守るって言ってたのに!」」
「カイ、待て、危ない、こら」
「俺がウィルを止める!」
俺はエーファに攀じ登る。
「やめろ、行っても殿下の邪魔になるだけだ!」
「俺が死んでも次はいる! 俺なんかいない方がいい!」
「カイ! 落ち着け!」
「ジーク、とにかく彼をエーファに乗せろ。このままではここにいる全員、使い物にならなくなる。彼をここから離せ」
「わかりました。しかし」
「行かせてやれ。番というものはそういうものだ。なあ、ジーク」
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