異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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022-④ 願い!

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 バタバタとドームの天井の方から鳥の羽の音がした。仰ぎ見て吃驚した。

 巨大な鳥だ。二羽が旋回しながら降りてくる。

 想像を絶するほど大きな翼で旋風を巻き起こしながら。

 鳥が俺の目の前に片足からゆっくりと着陸した。

 大きさが……、恐竜みたいなんだけど。

「ベッカーさん……?」

 枢機卿? いや、違う。もう少し若い。

「ローラ先生……」

 枢機卿ではない。宗教学の先生、それからそのアシスタント。

 二人は何メートルあろうかという大きな翼をしばらくバッサバッサはためかせてから、徐々に畳み始めた。

 鳥人間はサベラの中でも別格だ。

 サベラは見た限り、俺の世界での胎生動物、哺乳類が多い。でも鳥人間は卵生らしい。

 だから俺はサベラの中で一番この教会軍団が気になっている。

 鳥人間アシスタントが俺に近づいてきた。俺は立ち上がって、何となくのクセで会釈をした。

「やっぱり飛べるんですね」
「体力を使うんだよ」

 クロスボウを持っている。ますます天使だな。

 あ。

 つまり、さっきのキフィソスの王の首切りもこの人?

 ゾワゾワッ。

 鳥人間アシスタントが脇に抱えていた大きな厚手の布をブワサッと床に広げた。

「アンバーを運ぶ」

 それから、動けないアンバーを速やかにそして紳士的にお姫様抱っこして、布の上に移動させた。

「この布にアンバーを載せてグランバーグまで運ぶんですか? 二人で?」
「いいや。私が」
「一人で?」
「緩衝地帯を抜けるまでだ。私たちはティタジェイルの上空を飛ぶことを許されていないが、そこまでであれば、地上を馬で走っていくよりも早い」
「そうなんですか」

 少ない光源でも嘴が光ってて、見た目も強そうでカッコいい鳥人間アシスタントは、羽に対応した祭服がキマってる。そういえば、何でもできる有能だったな。……男で、合ってる?

 気を失っているアンバーが春巻の餡みたいに包み込まれるのを、俺はジッとして見守っていた。鳥人間アシスタントは俺の視線を察したようだ。

「心配するな」

 布に包まれたアンバーを抱く鳥人間。頼もしいし、神々しい。
 
 俺もこういう男になりたい……。男、だよな?

 一方の鳥人間先生は人気者で、あちらこちらから声をかけられて対応するのが大変そうだった。

 鳥人間アシスタントを見送ったあと、今度は鳥人間先生が俺に正面から近寄ってきた。

「カイ様! 面白いものを見せてもらいました。大きな舞台で中々の役者ぶりでしたよ」
「何言ってるんですか。どこにいたんですか?」
「ドームの上のギャラリーにいました。噂に違わぬタヌキの踊り、素晴らしかったです。ラット状態の殿下が困惑しておりましたよね」
「ありがとうございます……?」
 
 タヌキ踊り。うーん。一突きされた気分だな。もしかして、男と間違えられていたことを根に持っているのだろうか。そのことは本人には話してないはずなんだけど。

「腕はどうですか? 見せてください」
「大丈夫です」
「いいから」
「えっ……」

 強引に袖を捲られた。こういう押しの強さは確かに女性。

「おや……」
「あ……」

 全体が鬱血してるくらいで、歯が食い込んだところも既に血は固まっている。そこまで悪い状態じゃ、ない?

「これは。……新しい契約ですね?」
「……物は言いようですね」
「手加減なさったようですね」
「かなり痛かったですよ」
「殿下が本気であったなら、一瞬で食い千切られていますよ。血の匂いで直ぐにカイ様だと気づかれたんですよ。さすがですね」

 感心されたが、俺は怪しいと思っている。お前が食いたいって言われたこと、あるし。

 あいつ、実際にちょっと迷ったんじゃないか?

「俺の体にウィルの噛み跡が増えていきます」
「ははっ。光栄なことではないですか。愛の軌跡が増えることは。では、また講義でお会いましょう」
「はい」

 愛の軌跡?

 何言ってんだ、あのヒト。

 遅れてやってきた近衛隊によって、ウィルがちょっと上等な担架で運ばれていった。

 見慣れた犬顔が数人。目が合ったときに頷かれたので、俺も力強く頷いてみせた。俺は担架の後ろからついていくだけ。

 ドームから出た。山賊みたいな奴らはもういなくなっていた。

 朝靄の中、鳥人間が太陽と逆方向に羽ばたいて飛んでいくのを見た。

 やっぱり鳥にしてはデカいな……、パラグライダー、いや、小型セスナくらいある?

 翼はあっても、人間の腕もちゃんと持ってるということは、実質的に腕が四本。ズルくない!?

 でもあの翼は邪魔そうだし、重そうだ。羨ましくはないかな……。

 大きな荷台つきの三輪自動車で運ばれていくネズミたち。動けるものは手足の枷をつけられている。緩衝地帯の反対側まで運ばれるらしい。

 大将首は丁重に箱にしまわれていた。わざわざ保安隊の一人が俺に箱を見せてきた。中身を見たいかと言うから、首を横に振った。

 そんなの見たいわけないだろ。変な趣味してんなぁ、もう。

 透き通るような青い目を思い出して、また、ゾワゾワッ。

 俺はウィルと一緒の馬車に乗ることになっている。

 近衛隊の面々が馬車の椅子をベッドに変形させるのを見るのは楽しかった。

 その間、俺は犬の看護師から腕の手当を受けていた。チャウチャウみたいな顔をした犬だった。チャウチャウちゃう……。

「何か?」
「いえ、何でもないです」

 消毒され、そして丁寧に包帯を巻かれながら、近くを通りかかるサベラの匂いが気にならなくなっていることに気づく。

 ウィルとの契約が強くなったってことと関係してるのかな?

 馬車に乗った。車内には俺とウィルだけ。

 馬車はすぐに動き出した。

 俺たちはティタジェイルの端にあるウィルの家に行く前に、グランバーグに立ち寄ることになっている。

 戦果の報告のため。

 ウィルは激しく揺れる馬車の中でも目覚める気配がない。

 バケモノになるのは相当疲れることらしい?

 ウィルが寝ているのを初めて見た。これまでは俺ばっかりが寝顔を見られていたから、見返してやった感がある。溜飲が下がった。

 その額を撫でていたら、少し眉間の皺が取れた気がした。

「お前をこうして撫でてるだけで、俺は充分気持ちいいんだよ……」

 急激に眠くなってきた……。馬車がゆりかごのように感じ始める。実際は口を開けていたら舌を噛みそうになるほどの揺れなのだが。
 
 目を閉じて間もなく。

 俺が両手に、黒い獣人の赤ん坊を抱いているイメージが見えた。

 !?

 何それぇ!?


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