異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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023-① 波長!

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「カイ、カイ、起きて」

 ゆっさゆっさと体を揺さぶられての声がけで起こされた。体を起こし、眩しい光に目を細める。

 まどろみの中、形作られていったのは、陽の光に包まれた懐かしい人だった。

「え!? オズ!? 何でここに」

 その綺麗な瞳に射抜かれて、俺は一瞬で目覚めた。

 海上で保護されて以降、消息不明だったオズだ。オズがいる。出会った頃のような素朴な民族衣装を着ていた。

「おかえり、カイ。大変だったようだね。怪我の具合はどう」
「俺は。それがさ、また変な奴に捕まっちゃってさ。仲間には海にも落とされて。散々だったよ」

 オズが笑った。

「あれっ、何で俺がここに!?」

 ここは馬車の中、俺が寝ているのはウィルがいたはずのベッド。


「ウィルは先に降りたよ。カイがあんまりに気持ち良さそうに寝てるから起こせなかったんだ。カイはこのままウィルの家に先に行って、だって」
「俺を置いて先にいくとかあいつらしすぎて、文句言うのも疲れるよ。オズは今までどこにいたんだ。心配してたんだよ」
「何言ってるんだ。ずっとここにいたよ。逆にここ以外に今の私たちがこの国で安心できるところって他にあるか?」

 オズが笑ってる。そうだ。答えは簡単だった。どうして気づかなかったんだろう。

「グランバーグが一番安全だからね。砲撃を食らったって、突撃されたってへっちゃら。ここは一度も落ちたことがない」

 オズに手を引かれ、馬車を降りた。

 幾重にも連なる黄土色の城壁の層に守られている、ここはグランバーグだ。

 戻ってきた。

 石畳の地面に俺の靴の爪先が着いたとき、突然、オズが言った。

「お別れをしよう、カイ」
「え!? 会ってすぐだよ!?」
「船の手配がついたんだ。ようやく旅立てる。今度は速度も重視した頑丈な軍艦だ。式には私の番もいたんだよ。敵襲が起こると同時に、私が心配だって言って急いで戻ってきた。カイとは会えなかったかな」
「いろんな人がいたからさ。あれ誰っていちいち聞くことはできなくて。一人一人に挨拶はしてないから」

 そうか、儀式には参列者もいたんだった。俺ばっかり大変だったんじゃないんだ。あのときは大混乱だったからな。

「オズの大事な人を危ない目に合わせちゃってごめんね」
「何言ってるんだよ」

 オズが笑ってくれて安堵した。

 立ち話を衛兵からやんわりと咎められて、近くにあったベンチに座る。

 馬車はその場で待機。

 広い内庭である。人通りはない。

 オズの傍らに立つのはいつもいる護衛のギンギツネ。

 俺の護衛はジークではない。代わりは必然的に、俺が与えられたウィルとの契約のプレッシャーに耐えられる重量級となるらしい。タテガミが立派なライオンさん……。

 時計を見るともう昼だった。

 グランバーグの空は雲がかっていた。

「ウィルは何が引き金で今回はラット状態に?」

 オズの問いに俺は首を傾げる。

「何があったか詳しくは知らないんだ」
「黒毛のアルファはよりにもよって怒りに耐性がないんだよね。ほんの少しのことで怒るから」
「そうなんだ。オズの番も? 大丈夫?」
「最初の躾が肝心だよ、カイ。完璧にね」

 オズは意味ありげに唇に人差し指を当てた。

「彼は灰色だから。まあでも、性格は黒毛と似てるかもしれない。ウィルとは昔馴染み。アンバーも知ってる」
「犬?」
「犬」

 ふっと笑い合った。

 ウィルはこの言い方を嫌がるが、俺たちの元の世界では、サベラはニンゲンとは言えない生き物だから……。

 常識って何だろうな?

 それにしても、完璧な躾ってどうやるんだろ。是非聞きたいところだ。
 
「今日からウィルの家に住むんだってね」
「あ、うん。そうみたい?」

 後ろめたい、みたいに感じるのは何でだ……。

「やっと二人な時間が持てるね!」
「代弁してるみたいに言うな」
「ふふ」

 オズが俺の手を取った。冷たい手だった。俺とウィルが乗った馬車が来るのを外でずっと待っていたんじゃないだろうか。

「私は明日、この国を発つ。でも、また会えるから。最後じゃないから」
「うん」

 また、お別れ。

「新しい生活に不安を感じない?」
「全然感じないわけはないけど、どうにかなるよ。カイもがんばってね」

 俺の両手はその冷たい両手で包み込まれる。俺を見つめるオズの母性は完全無欠だ。

 ホッとする。

「カイは私に何か他のことを聞きたいんじゃないかなあ」
「え、何かって何を?」

 そのときのオズの笑い方がウィルに笑い方と似ていたのが気になった。

「カイと初めて会ったのは、私の希望でこの国を見て回っていたときだった。ウィルは付き添いと案内を買ってくれた。各所に停留した。最後の中継地点としてあの風車の塔に連れていってもらった。あの場所はウィルの隠れ家だった。一番長く逗留していたな」
「俺には二人が特別な関係に見えた」
「そう? 王子様と家来じゃない?」
「全然」
「まあ、ずっと一緒だったからね。長旅だったよ。楽しかった。風車の塔は国境付近にあったんだよ。本来なら部外者立ち入り禁止区域のさ。時々、接触してはいけない、非常に危険な大型種の生物が現れる……」
「モンスター!」

 この世界には森と畑しかないのかと油断しまくっていた。

「昔は敵の侵入を防ぐための防護壁と監視の塔がたくさん建っていた。そんなところ」
「えっ」
「大昔ね。大昔。何百年も前の話。今はすべて取り払われた。変わったんだ、この国は」

 そう言って、オズが立ち上がったので俺も真似た。

「じゃあ、そろそろ」

 お別れのハグである。俺より大きな女性に上から覆い被されて包み込まれる、この感じ。オズには勝てる気がしないな……。

「カイの着地点がズレていたらどうなっていただろうか。それでもウィルの下に来ただろうか」
「さあ?」
「そこは頷くんだよ」
「犬だろ、だって」
「犬」
「俺はオズと会ったときが一番安心した」
「それ、ウィルには絶対に言うなよ」

 苦笑し合ってから、俺は馬車に戻った。


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