異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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023-② 波長!

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 ざざざと不揃いな足音がして、反対側の通路からウィルを先頭に近衛隊が現れた。

「あ、ウィルだ。報告は終わっ……」

 馬車から身を乗り出して聞こうとしたら、だ。走り込んできたウィルに抱きしめられて、馬車の中に押し込められた。最後まで言わせてもらえなかった。

「うわっ」
「ははっ、ウィルの独占欲が更に酷くなった」

 バタン! 外から馬車の扉が閉じられる。閉めたのはジークだ。
 
 強制シャットダウン!

「ちょっ……、苦しいっ、オズっ、またねっ」

 なんとかウィルの肩越しに顔だけ出して、開いていた窓に向かって手を振った。

「カイ、がんばってね」

 オズの声をウィルに抱き潰されそうになりながら聞いた。

「ウィル、ふざけてんのかお前……っ、そこにオズがいるのに……っ」
「お前の寂しさが伝わってくる。泣きたいなら泣いていいんだぞ」
「泣かんっ、お別れくらい静かにさせろ!」

 こんなときに思考を盗み見るとか悪い奴!

 馬車が動き出す。手を振るオズが遠ざかっていく。ギンギツネの護衛は最後まで置物感があった。

 ウィルがグイグイと体重をかけてくる。全身の擦れ方がいやらしい感じなんだけど……!

「やめろ、待て、待て! 落ち着け、仕事は済んだのか……っ」

 スリスリされながらでは会話しにくい。

「国王、評議会、軍幹部……、いつものくだらない挨拶回りだ」

 耳元で囁き声を出さないで欲しい。変な気分になる……。

「お、俺は行かなくて良かったのか?」
「怪我をしてるから来れないと言ってある。当面ここには来なくていい」

 あ、好かれてもないんだった。

 俺の匂いもすごいらしいし、ウィルのプレッシャーがついちゃったしな。

「アンバーは?」
「知らん。大丈夫だろう」
「知らんって。お前はアンバーを助けに行って……、そのあとの詳しい話を俺は知らないんだけど。……ウィル、離せってば」
「嫌だ」

 引き寄せられて、ベロベロと顔中を舐められる。狭い車内で押し倒されそうになって、ウィルの顎を両手で持ち上げた。

「落ち着けっ!」
「前より匂いが強い……」
「お前が自分で増幅させてんだろ! ……もぉぉ!」

 こんなときは鼻スイッチだ。効果あり。揺れる車内でウィルが固まった。

「バケモノになって俺に襲いかかったことへの謝罪は!?」
「……悪かった。コントロールしきれなかった」
「何で」
「……何で……?」

 首を傾げながら、ウィルがあっちの方を向いて知らんふりをしようとしてる。

 空々しいな……?

「ウィル。こっち向け」
「屋敷に着いたら案内をつける……」
「……こんな狭い車内で俺から逃げようとするな。どうして闘った理由を話せないんだ」
「理由を言ったところで、お前の理解は得られないと思うので」
「!?」

 目が点になるとはこのことだ。

「ハア? 何だ、その話し方。急に突き放してくるなよ。言われた俺はどうしたらいいわけ。一生、俺にはわからないままなんだけど。それでいいの? お前」
「お前は嫌なんだろ、この契約が」
「………」

 この間まであんなに無理強いしてきたのに、ここに来て説明を疎んじた上に気弱になるとか、ついていけないぞ!

「……なら」

 俺は俺から目を逸らすウィルの顎あたりを睨んで——、言った。

「……結婚しろってもう一度言えよ。ちゃんとフッてやるから」

 これで俺の方を向いてもらった。横並びで座っている。逃すつもりはない。

「言ってくれ」

 俺にフると言われたって、ウィルは言うと思ったんだ。

「……俺と結婚しろ。俺のものになれ」
「いいよ。してやるから、大事にしろよ」
「………」
「ウィル。好きだよ」
 
 食い気味に答えてやった。

 目を見開いて俺を見下ろすウィルの頭を両手で撫でた。スベスベの黒毛が手に馴染んでくる。

「お前も俺のもの。俺に黙ってどっか行くとか今後はもうダメ、絶対に許さない。お前の怒りの感情は、俺になら止められるってわかった。いいよ、やってやる。これ、みんなへの恩返しだから。もらった気持ちは返さなくちゃ。見たくないこともたくさん見ちゃったけどさ。みんな、この国を守りたいだけ。ちゃんとわかったから。俺も協力する」
「………」

 言い終わったあとで、窒息しそうなくらいの力で抱きしめられた。

「俺はお前が思ってる以上に手がかかるぞ」

 スリスリされる。ん? なんかまた押し倒されそうな勢いだ。馬車の中で変な雰囲気にはさせないぞ!

「で、でも」
「何だ」
「今夜は俺に触るの禁止。ベッドは別」
「!?」
「俺にも心の準備があるので!!」
「ハア!? お前、何にもわかってなくないか!?」

 ウィルが叫んで、御者が運転そっちのけで後ろを振り返った。


 
 そのあとは平行線を辿った。

「疲れたんだ、俺は。今日は一人で寝たい。お前はすぐ俺に変なことしてくるから、寝るどころじゃなくなる」
「変なこと? 番なんだから触れ合うのは当たり前だろ。何を今更」
「俺の体をこれ以上おかしくするの禁止」
「だからそれは……。やっぱりお前、番の関係性が全然わかってないじゃないか」
「わかってるよ」
「俺といて細胞が活性化するのを感じないのか。普通の女ならこの至近距離なら今頃簡単に落ちているのに……。お前は俺の運命のつがいだろ」
「活性化したら眠れないだろ」
「俺が言いたいことはそういうことじゃない……。お前も俺を欲しがっているはずだ、カイ」
「だーかーらー」

 本当は俺だってウィルに張りついた方がよく眠れるからそうしたいけど、今日に限っては確実に貞操の危機だから!

 ウィルに怒りへの耐性をつけていけばいいのでは? 感情のコントロールを覚えさせればいい。最初の躾が肝心だってことだし。 

「ヤれば解決とかそんなケモノじみたこと言ってないで、理性的に解決していこう!」

 景気づけに俺はウィルの肩を強めに叩く。

「呑気な奴だ……」

 そのとき、車窓のカーテンが開いた。

 見えたのは、グランバーグと同じ色の石で作られた大きな洋館。ぐるりとロータリーを回って建物の正面へ。
 
 日暮れどきだ。館の壁には等間隔にぼんやりした照明が点灯していた。


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