白銀の猫は、氷の皇太子を二度愛す ~転生令嬢が元・ご主人様にタックルしてしまったところ、なぜか執着が止まりません~

メイリリー

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04. 夢の中の邂逅

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世界は白一色だった。

寒さも苦しみも痛みもない。
ただ柔らかく、何もない「無」が広がっていた。

一人の老人がいた。
深い赤のベルベットのローブをまとい、ホイップクリームのように白く豊かな髭を胸元まで蓄えている。彼はしゃがみ込み、小さな猫の姿をした私を覗き込んでいた。

「あなたは……誰?」

「ほっほっほ、わしは神様じゃよ」

彼は腹の底から響くような声で笑った。
その姿は、人間たちが十二月になると狂気的な熱意で崇拝するサンタクロースに酷似していた。服装といい、笑い方といい、既視感が拭えない。

「私は……死んだの?」

私はおそるおそる尋ねた。

「うむ。残念ながら、そうじゃな」

「そっか……」

もう二度と、あの温かい手が私の首の月を撫でることはない。

指についたインクの染みを舐めてあげることもできない。

テオ。

彼を一人ぼっちにしてしまった。

ごめんなさい、ごめんなさい。

空色の瞳から、涙がこぼれ落ち、白銀の毛並みを濡らした。

「じゃがな」

神様は見えない眼鏡の奥で目を輝かせた。

「お主の願いはあまりに強く、わしのところまで届いたんじゃ。じゃから、チャンスをやろう」

「チャンス?」

「うむ。お主を生まれ変わらせてやる。猫としてではなく、人間としてな」

私の耳がピクリと立った。

夢のような話だった。いや、どんな夢よりも素晴らしい提案だった。

「ただし、『縛り』がある。猫だった時の記憶は、誰にも話すことはできん。話そうとすれば、言葉は奪われるじゃろう」

「また……また、テオに会える?」

「それはお主次第じゃよ、ほっほっほ」

「ありがとう! ありがとう!!」

私は鳴き声を上げ、彼の手に頭を擦り付けようとした。

「保証はせんぞ?」

「うん、わかってる! それでもいい!」

「よい心がけじゃ」

神様はニカッと笑うと、親指を突き立てた。

「ぐっどらっく!」

白い世界が溶けていく。私の意識は霧の中にフェードアウトしていった。
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