キスだけは断固拒否します!現実に帰りたくないので!~異世界での私は救世主らしいです~

空木切

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城と王子と従者と精霊

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 着いた場所は至って普通の部屋だった。普通といっても高そうなソファやら机やらが並んでいてとても落ち着かない。てっきり玉座の間だとか兵隊がたくさんいるような広間へ通されると思っていたので少し意外だった。ゲームじゃあるまいし、王様でも普通に応接室的なところで対応するのかな、私が部屋の中を眺めているとユリスが口火を切った。
「ここは私の部屋だ。大人しくしていろ。余計なものに触るな」
「……別に触りません。というか、王様に会うんじゃないんですか?」
 ムッとして言い返すと、ユリスもムッとしたようだった。
「誰がそんなことを言った? 私は個人的な用件で貴様らをここへ入れたのだ。あまり暴れたりするなよ。怪我をするだけだからな」
 いちいち鼻につく言い方をする。私は怒っても仕方ないと気持ちを落ち着かせた。
「個人的な用件とは何ですか?」
 私の問いに、ユリスは大きな溜め息を零した。今から言うから急かすな愚民の癖に、そう言いたげな溜め息だった。
「……私はこの国、メセイルを統治する王の息子だ。ゆくゆくは私がこの国を総べることになる。その為に私は何かしらの功績を上げなければならない」
「はあ」功績。人から褒められるような立派な働き。何となく彼と結びつかない言葉だ。
「理解しているとは思うが現在、我が国及び周辺国、いや世界そのものの魔力が非常に枯渇している」
「そうらしいですね」
「理由は分かるか?」
「さあ、知らないです」
 そっけなく返すと「ラウロ」と控えている従者を呼ぶ声が聞こえた。
「はい。では私から説明を」
 ラウロさんは粛々と頭を下げると説明を始めた。と言っても単純なものだ。世界の魔力が枯渇しているのは、精霊が眠っているかららしい。精霊が眠っている理由は、魔力が枯渇しているからで、つまりどうにかしようにも堂々巡りのどうしようもない状態ということだ。
「そこで」ユリスが後を継いだ。「精霊を起こす為には多くの魔力が必要になる。貴様の力を借りたい」
 それ人に頼みごとをする態度なんですか? と言いたい気持ちをぐっっと堪えて「へえ~」と生返事をした。ここで積極的に協力しますなんて言った日にはどれだけこき使われるか分からない。敢えて素知らぬ態度でいると、ユリスはしかめ面をして私を睨んだ。
「いいか、国だけではない、世界ごとが今危機に晒されているんだ。分かっているのか?」
「そう言われましてもいまいち実感がありません。私、この世界の人間ではありませんから」
「何? どういう意味だ?」
「どういう意味も何もそのままです。私は別の世界からこの世界へ召喚されたんです。シルフィの手で」
 とシルフィを見ると、彼は難しい表情をしてどこかをじっと見ていた。私の視線に気付くと頷いて返す。何だか城へ来てから元気がないようだ。心配。
「信じられないな。妙な女だとは思ったが、そこまで珍妙とはな。言葉は通じているんだろうな?」
 ユリスは怪訝な表情をした。私はもう彼の失礼無礼のオンパレードに怒る気も失くして無気力になっていた。
「通じてますよ勿論。むしろ通じなかった方が良かったな~と思ってます」
「何故だ? それでは不便だろう」
「……確かに、そうですね」
 皮肉も通じないとは。そこまで傲慢レベルが高いとは思わなかった。私はラウロさんに助け舟を求めるも、彼は苦笑して二、三度頷いただけだった。
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