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魔法使いは人さらい
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夢も見ずにぐっすり眠っていた。何かが近付いている感覚がして、眠い頭がほんのり覚醒する。まだ起きる時間じゃないはず、ぐっすり眠っていたい。でも気になって薄っすら瞼を持ち上げた。息が止まった。
「ひっ……!?」
間近に男の顔があった。知らない顔だ。額に何か金属板のようなものをくっ付けている。黒髪の間に白髪の束が混じってまるでシマウマのような奇抜な髪色だ。
男は血色のいい頬をくっと持ち上げ目を丸くした。人の好さそうな表情だ。
「おや! 人だったのか。しかも生きてる。これは驚いたな。まあいいや、そんじゃ行こうか」
男は私の布団を引っぺがして腕を掴んだ。何、何、夢!? 怖い!
「い、あの、なっ、だ!?」寝起きだし怖いしで全く言葉が出てこない。男は私の腕を引いて「早く早く」と急き立てる。
「誰です」
鋭い声が飛んでくる。ラウロだ。
「あれ~!? なんだよもう一人いたのかこいつは失敗したな。そこの少年は眠らせたんだが……ハア。これだから城だとか貴族ってやつは嫌いなんだよなー」
ラウロが何かをヒュッと飛ばすも男はひらりと身を翻して中庭に続く窓を乗り越えた。ここ結構高かった気がするんだけど!? ラウロが駆け寄って窓の下を見るも、振り返って首を左右に振った。既に見失ったらしい。
「上に逃げたんでしょうか……。しかし何の警音もしませんでしたね。随分巧妙な男のようだ。エコ様、無事ですか?」
「え、ふぁ、は、はい」
「男の特徴は覚えていますか?」
「えっと、あんまり悪人っぽくない顔っていうか、あ、額に金属板みたいなのを付けて……そ、そうだシルフィ、シルフィを何か眠らせたって、言ってて、どうしよう! シルフィ、大丈夫!? 起きれる?」
頭が真っ白だ。すごく怖かったけど、それよりシルフィが無事じゃなかった時の方が怖い。すぐ隣のベッドにかじりついて寝息を立てているシルフィを揺らした。
「んん~? 何、どうしたの?」
シルフィの眠い目が私を映す。ほっとした。
「痛いところとか、変なところとかはない?」
「無いよ。何かあった? エコ、震えてるよ」
「あ、だ、大丈夫。びっくりしただけだから」
私は深呼吸をしながら彼から離れた。シルフィは不思議そうに私を見上げていたけれど「寝てていいよ」と言うとまた眠りに落ちていった。無邪気な寝顔を見てると心が穏やかになる。無事でよかった。
「念の為、窓は物理的に塞いでおきましょうか。中庭から侵入されるなど本来あり得ないのですが……。少し暗くなります」
ラウロは隣の部屋から持ってきたらしい椅子やら机やらを窓の前に積んだ。本当に物理的な手段だ。
「すみません。景観が悪いのですが、魔法などで侵入されることを考えると却って雑な方が良いものですから。ご理解いただけると助かります」
「それは全然良いですけど」
ラウロは仄かな月明かりを背にして、水のボトルを開けると中身を床に零してしゃがんだ。
「エコ様はそのままじっとしていてください」
頷くと、ラウロは床の水たまりに触れる。途端水たまりが薄い膜のように床一面に広がり、私たちのベッド三つが私とシルフィを乗せたままするすると横に滑るように移動した。代わりにラウロが使っていたベッドが窓際へと動く。
「これでいいでしょう。一晩に二度も侵入される恐れはないと思いますが念の為です。エコ様、少し窮屈でしょうが壁際でお休みください」
「ありがとう、ございます」
ラウロは床に広がった水の膜を手元へ回収するとボトルへと戻した。まるで魔法みたいだ。って、本当に魔法なんだった。
「どうぞご安心してお休みください」
私は頭をぺこぺこ下げながら再び寝床にもぐった。しかし当然眠れるわけがない。もう何も来ないとは分かっていても、さっきのショックは大きかった。あんな気配もなく近付かれるって意味が分からない。相手が殺す気なら私はとっくに死んでいるだろう。この世界で生きる! なんて決めた癖にもう心が揺らいでいた。
「ひっ……!?」
間近に男の顔があった。知らない顔だ。額に何か金属板のようなものをくっ付けている。黒髪の間に白髪の束が混じってまるでシマウマのような奇抜な髪色だ。
男は血色のいい頬をくっと持ち上げ目を丸くした。人の好さそうな表情だ。
「おや! 人だったのか。しかも生きてる。これは驚いたな。まあいいや、そんじゃ行こうか」
男は私の布団を引っぺがして腕を掴んだ。何、何、夢!? 怖い!
「い、あの、なっ、だ!?」寝起きだし怖いしで全く言葉が出てこない。男は私の腕を引いて「早く早く」と急き立てる。
「誰です」
鋭い声が飛んでくる。ラウロだ。
「あれ~!? なんだよもう一人いたのかこいつは失敗したな。そこの少年は眠らせたんだが……ハア。これだから城だとか貴族ってやつは嫌いなんだよなー」
ラウロが何かをヒュッと飛ばすも男はひらりと身を翻して中庭に続く窓を乗り越えた。ここ結構高かった気がするんだけど!? ラウロが駆け寄って窓の下を見るも、振り返って首を左右に振った。既に見失ったらしい。
「上に逃げたんでしょうか……。しかし何の警音もしませんでしたね。随分巧妙な男のようだ。エコ様、無事ですか?」
「え、ふぁ、は、はい」
「男の特徴は覚えていますか?」
「えっと、あんまり悪人っぽくない顔っていうか、あ、額に金属板みたいなのを付けて……そ、そうだシルフィ、シルフィを何か眠らせたって、言ってて、どうしよう! シルフィ、大丈夫!? 起きれる?」
頭が真っ白だ。すごく怖かったけど、それよりシルフィが無事じゃなかった時の方が怖い。すぐ隣のベッドにかじりついて寝息を立てているシルフィを揺らした。
「んん~? 何、どうしたの?」
シルフィの眠い目が私を映す。ほっとした。
「痛いところとか、変なところとかはない?」
「無いよ。何かあった? エコ、震えてるよ」
「あ、だ、大丈夫。びっくりしただけだから」
私は深呼吸をしながら彼から離れた。シルフィは不思議そうに私を見上げていたけれど「寝てていいよ」と言うとまた眠りに落ちていった。無邪気な寝顔を見てると心が穏やかになる。無事でよかった。
「念の為、窓は物理的に塞いでおきましょうか。中庭から侵入されるなど本来あり得ないのですが……。少し暗くなります」
ラウロは隣の部屋から持ってきたらしい椅子やら机やらを窓の前に積んだ。本当に物理的な手段だ。
「すみません。景観が悪いのですが、魔法などで侵入されることを考えると却って雑な方が良いものですから。ご理解いただけると助かります」
「それは全然良いですけど」
ラウロは仄かな月明かりを背にして、水のボトルを開けると中身を床に零してしゃがんだ。
「エコ様はそのままじっとしていてください」
頷くと、ラウロは床の水たまりに触れる。途端水たまりが薄い膜のように床一面に広がり、私たちのベッド三つが私とシルフィを乗せたままするすると横に滑るように移動した。代わりにラウロが使っていたベッドが窓際へと動く。
「これでいいでしょう。一晩に二度も侵入される恐れはないと思いますが念の為です。エコ様、少し窮屈でしょうが壁際でお休みください」
「ありがとう、ございます」
ラウロは床に広がった水の膜を手元へ回収するとボトルへと戻した。まるで魔法みたいだ。って、本当に魔法なんだった。
「どうぞご安心してお休みください」
私は頭をぺこぺこ下げながら再び寝床にもぐった。しかし当然眠れるわけがない。もう何も来ないとは分かっていても、さっきのショックは大きかった。あんな気配もなく近付かれるって意味が分からない。相手が殺す気なら私はとっくに死んでいるだろう。この世界で生きる! なんて決めた癖にもう心が揺らいでいた。
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