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村と魔物と泣き虫戦士
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夜になり、私はハインツさんに近付かないよう念を押されて宴会に参加した。面倒な会話はラウロがこなしてくれるようで、私とシルフィは適当に隅で食事だけ済ませれば良かったので気は楽だった。飲み会は苦手だ。お酒は飲むけど、いつもあのノリについて行けない。
村の人たちは大いに盛り上がっている。村での恒例行事なんだろう。ただ理由をつけてお酒を飲みたいだけの感じだ。
私とシルフィが端のテーブルで名前の分からない料理を美味しく頂いていると、上機嫌な老夫婦が近付いて来た。適当に会釈をしてやり過ごそうとするも声をかけられる。
「あんたがエコさんかい」
「え、そ、そうです」
「そっちの子が召喚士のシルフィくんかな」
「うん。おじいさんたちは?」
シルフィは目を丸くして頷いた。おじいさんは顔の皴をにこやかに寄せて笑った。
「私たちはハインツの祖父母だよ。あの子が世話になってるみたいで、どうもありがとうね」
噂の“じいちゃん”と“ばあちゃん”だ。「こちらこそお世話になっています」私は立ち上がって頭を下げた。
「実は頼みがあるんだけどね」おばあさんが少し声を潜めた。私は首を傾げる。
「ハインツをあんたたちと一緒に連れて行ってくれないかな」
まさかの祖父母からのお願い。断りにくい。私が困っていると、おばあさんは続けた。
「あの子にはもっと外の世界を見て欲しいんだよ。私たちじゃ甘やかしてしまうし、いつまでもここに縛り付けるのも申し訳ないんだ」
「そう、ですか」
私に出来ることなら叶えてあげたいけど難しい。そんな私の心境も理解してくれたのか、おばあさんは「無理にとは言わないけどね」と付け加えた。
こんなに孫を大事にしているなら、いなくなったら寂しいんじゃないだろうか。問いかけてみると、
「そうだねえ。確かに寂しいけどね、お互いにとってもその方が良いんだよ」
二人は顔を見合わせて渋い顔をした。おじいさんが言う。
「あの子は真面目で心配性でね、私たちがお酒を飲んだり夜更かしするとすぐ怒るんだよ。毎日揉めてばっかりさ。こっちも老い先短いし自由にさせてもらいたいんだ、困ったもんだね本当に」
「早いところ嫁さんを見つけてくれんかねえ。はあ、全く年寄り扱いも過剰だしね、やり辛いったらありゃしない」
ただの愚痴だった。幸せな悩みかもしれない。どう反応して良いやら私が苦笑いを浮かべていると、「じいちゃんばあちゃん、何してるんだよ!」本人が慌てた様子で走って来た。
「うわ見つかった。逃げよ逃げよ」
ハインツさんの祖父母はささーっと素早く逃げて行ってしまった。元気だな。入れ替わりに肩を怒らせたハインツさんがやってくる。シルフィが素早く反応して私を守るように間に立った。
「ハインツさん、ええっと」
近付けないにしても追い払うのは気が咎める。何を言おうか悩んでいると、彼はいきなり頭を下げた。
「昼間はすみませんでした! 俺……う、す、すみません!!」
と逃げるように去って行った。一瞬だったけど涙ぐんでいるように見えた。辛いことでもあったのだろうか。心配になってしまう。これでは私も村の人たちと同じだ。
ハインツさんならきっと大丈夫。ちゃんとした大人だし、支えてくれる人もたくさんいるんだから。私が気にしても仕方ない、と自分に言い聞かせて食事を再開した。
私もシルフィもお腹がいっぱいになったのでラウロに一言言って先に部屋に戻ることにした。お肉いっぱい食べれて良かった~とご機嫌なシルフィは早速眠そうだ。私も眠い。これでもかと料理があったのでたくさん食べられて満足だ。
二人、ベッドの上で取り留めのない話をしているうちにシルフィは寝入ってしまった。
「可愛いなあ……」
寝息を立てているシルフィの頭を撫でる。緑の髪がさらさら揺れた。今からもっと大きくなるんだろうな。そしたら彼女が出来たりして、結婚したりして。……想像して今から既に泣けてきた。例え結婚しなくても成人のお祝いはしたいな。この世界にそういう風習があるのか分からないけど。眠気の所為かぼんやりとあれこれ考えてしまう。
このまま寝顔を見ながら眠りたいところだけど、ここはラウロとシルフィの部屋だ。私は名残惜しい気持ちを振り切って自分の部屋に戻った。
村の人たちは大いに盛り上がっている。村での恒例行事なんだろう。ただ理由をつけてお酒を飲みたいだけの感じだ。
私とシルフィが端のテーブルで名前の分からない料理を美味しく頂いていると、上機嫌な老夫婦が近付いて来た。適当に会釈をしてやり過ごそうとするも声をかけられる。
「あんたがエコさんかい」
「え、そ、そうです」
「そっちの子が召喚士のシルフィくんかな」
「うん。おじいさんたちは?」
シルフィは目を丸くして頷いた。おじいさんは顔の皴をにこやかに寄せて笑った。
「私たちはハインツの祖父母だよ。あの子が世話になってるみたいで、どうもありがとうね」
噂の“じいちゃん”と“ばあちゃん”だ。「こちらこそお世話になっています」私は立ち上がって頭を下げた。
「実は頼みがあるんだけどね」おばあさんが少し声を潜めた。私は首を傾げる。
「ハインツをあんたたちと一緒に連れて行ってくれないかな」
まさかの祖父母からのお願い。断りにくい。私が困っていると、おばあさんは続けた。
「あの子にはもっと外の世界を見て欲しいんだよ。私たちじゃ甘やかしてしまうし、いつまでもここに縛り付けるのも申し訳ないんだ」
「そう、ですか」
私に出来ることなら叶えてあげたいけど難しい。そんな私の心境も理解してくれたのか、おばあさんは「無理にとは言わないけどね」と付け加えた。
こんなに孫を大事にしているなら、いなくなったら寂しいんじゃないだろうか。問いかけてみると、
「そうだねえ。確かに寂しいけどね、お互いにとってもその方が良いんだよ」
二人は顔を見合わせて渋い顔をした。おじいさんが言う。
「あの子は真面目で心配性でね、私たちがお酒を飲んだり夜更かしするとすぐ怒るんだよ。毎日揉めてばっかりさ。こっちも老い先短いし自由にさせてもらいたいんだ、困ったもんだね本当に」
「早いところ嫁さんを見つけてくれんかねえ。はあ、全く年寄り扱いも過剰だしね、やり辛いったらありゃしない」
ただの愚痴だった。幸せな悩みかもしれない。どう反応して良いやら私が苦笑いを浮かべていると、「じいちゃんばあちゃん、何してるんだよ!」本人が慌てた様子で走って来た。
「うわ見つかった。逃げよ逃げよ」
ハインツさんの祖父母はささーっと素早く逃げて行ってしまった。元気だな。入れ替わりに肩を怒らせたハインツさんがやってくる。シルフィが素早く反応して私を守るように間に立った。
「ハインツさん、ええっと」
近付けないにしても追い払うのは気が咎める。何を言おうか悩んでいると、彼はいきなり頭を下げた。
「昼間はすみませんでした! 俺……う、す、すみません!!」
と逃げるように去って行った。一瞬だったけど涙ぐんでいるように見えた。辛いことでもあったのだろうか。心配になってしまう。これでは私も村の人たちと同じだ。
ハインツさんならきっと大丈夫。ちゃんとした大人だし、支えてくれる人もたくさんいるんだから。私が気にしても仕方ない、と自分に言い聞かせて食事を再開した。
私もシルフィもお腹がいっぱいになったのでラウロに一言言って先に部屋に戻ることにした。お肉いっぱい食べれて良かった~とご機嫌なシルフィは早速眠そうだ。私も眠い。これでもかと料理があったのでたくさん食べられて満足だ。
二人、ベッドの上で取り留めのない話をしているうちにシルフィは寝入ってしまった。
「可愛いなあ……」
寝息を立てているシルフィの頭を撫でる。緑の髪がさらさら揺れた。今からもっと大きくなるんだろうな。そしたら彼女が出来たりして、結婚したりして。……想像して今から既に泣けてきた。例え結婚しなくても成人のお祝いはしたいな。この世界にそういう風習があるのか分からないけど。眠気の所為かぼんやりとあれこれ考えてしまう。
このまま寝顔を見ながら眠りたいところだけど、ここはラウロとシルフィの部屋だ。私は名残惜しい気持ちを振り切って自分の部屋に戻った。
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(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
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