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美少女と野郎
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そうしてミケちゃんに寄り添うようにして眠った。狭いのもあるけど、その方が安心できると思ったのだ。
ふと、窮屈に感じてゆっくり意識が浮かんできた。寝返りも打てない、身を捩ることも出来ない。何なんだ一体。
「うーん……」
首元がくすぐったい。生暖かい息がかかって……生暖かい息?
「ん?」
というか腹がくすぐったいというか、素肌に何か這ってるというか。人の、手?
「手!? え、い、何!?」
「あっ、やべ。しーっしーっ! ちょっと静かに!」
すごい近距離で人の声が聞こえる。誰!? 体を這っていた手が私の口を塞ごうと動く。お陰で自由になった片腕を反射的に背後に振った。相手が「いってぇ!」と声を上げる。
ようやく事態を理解した。私は誰かに羽交い絞めにされている。というか物凄いセクハラをされている!
「ちょっ、本当に何!? え!?」
混乱しすぎて言葉が出てこない。
「違う違う。ホンット悪いと思ってんだってオレもさあ禁欲生活長くて長くて」
「は!? は、離してくださいというか誰!?」
「何だ騒々し……」
外にいたユリスが、中の私たちを見るなりそのまま固まってしまった。私今どういう状態にあるか分からないんだけど腹が寒いので腹が丸出しなのは分かる。もはや恥ずかしいとかではなく、説明してくれという気持ちの方が大きい。そして出来ればどうにかして欲しい。
「どうしたんです、か」
ラウロも続いて顔を出すなり固まった。私は横になったまま二人を見上げることしか出来ない。数秒置いて、背後の誰かが弁明するように声を上げた。
「これは~……誤解!」と軽く咳払いをしてから、「ごめ~ん、あたしお兄ちゃんと間違えちゃったみたい!」
ミケちゃんの声だった。シルフィが起き上がる気配がして、ハインツの声も聞こえて、しかし私の頭は真っ白だった。
「木偶、こいつを放り出せ」
ユリスの呆れた溜め息がやけに耳に残っていた。
何があろうと日は昇って朝は来るのである。私はすっかり不貞腐れて、塞ぎ込んで、馬車の中で一人蹲っていた。
「今後は大人しくしているんだな」
ユリスの説教染みた言葉も、今は鋭く刺さってただただ辛い。
「もう分かりましたから放っといてください……」
「エコ大丈夫?」
シルフィが頭を撫でてくれるのも嬉しいけど辛いのは変わらない。
「ありがとうシルフィ。嬉しいよ……」
がたがたと馬車が揺れる。国境へ向かうゆったりした道のり、昨日と変わらない風景。一点を除いて。しばらく無言のまま時間が過ぎ、唐突にハインツが言った。
「俺、ミケが男だって最初から分かってたけど」
「ええ!? 何で教えてくれなかったの!?」
私はハインツに掴みかかる勢いで叫んだ。最初から言ってくれればあんな、あんな悲しい事件にはならなかったのに!
「だ、だってみんな女の子って言うからそうなのかもと思って」
「そっか……」
まあ彼を責めても仕方ない。
「女の子の振りして生きるなんて、すごい人もいるんだね。俺びっくりしたよ」
私もだよ。
ミケちゃんは男だったのである。しかも美少女どころか少年ですらなく、小柄で調子良いだけの若い兄ちゃんでした。彼は自分の可愛らしい容姿を生かして男性に擦り寄ってあれこれと貢がせたり、手を組んで今回のように行動を共にしたりするそうです。
昨晩の男に襲われた騒ぎは、ミケちゃ……ミケが仲間と揉めて取っ組み合いになったところをハインツが救出。そして戻って来たハインツがざっくりした説明しかしなかったので私が嫌な方向へ勘違いをしたというだけの話でした。
つまり私が脳内に思い描いていた可哀想な美少女は存在していなかったのです。以上が悲しい事件の顛末でした。
現在ミケは普通に他の仲間と一緒に外を歩いています。よくよく考えればこんな危ない場所に少女がふらふらしているわけもない。私はあの殊勝な演技と表情にすっかり騙されてしまったのだ。
「はあ……辛い……」
可哀想な美少女がいなくて良かったものの、私の心の傷は深かった。
ふと、窮屈に感じてゆっくり意識が浮かんできた。寝返りも打てない、身を捩ることも出来ない。何なんだ一体。
「うーん……」
首元がくすぐったい。生暖かい息がかかって……生暖かい息?
「ん?」
というか腹がくすぐったいというか、素肌に何か這ってるというか。人の、手?
「手!? え、い、何!?」
「あっ、やべ。しーっしーっ! ちょっと静かに!」
すごい近距離で人の声が聞こえる。誰!? 体を這っていた手が私の口を塞ごうと動く。お陰で自由になった片腕を反射的に背後に振った。相手が「いってぇ!」と声を上げる。
ようやく事態を理解した。私は誰かに羽交い絞めにされている。というか物凄いセクハラをされている!
「ちょっ、本当に何!? え!?」
混乱しすぎて言葉が出てこない。
「違う違う。ホンット悪いと思ってんだってオレもさあ禁欲生活長くて長くて」
「は!? は、離してくださいというか誰!?」
「何だ騒々し……」
外にいたユリスが、中の私たちを見るなりそのまま固まってしまった。私今どういう状態にあるか分からないんだけど腹が寒いので腹が丸出しなのは分かる。もはや恥ずかしいとかではなく、説明してくれという気持ちの方が大きい。そして出来ればどうにかして欲しい。
「どうしたんです、か」
ラウロも続いて顔を出すなり固まった。私は横になったまま二人を見上げることしか出来ない。数秒置いて、背後の誰かが弁明するように声を上げた。
「これは~……誤解!」と軽く咳払いをしてから、「ごめ~ん、あたしお兄ちゃんと間違えちゃったみたい!」
ミケちゃんの声だった。シルフィが起き上がる気配がして、ハインツの声も聞こえて、しかし私の頭は真っ白だった。
「木偶、こいつを放り出せ」
ユリスの呆れた溜め息がやけに耳に残っていた。
何があろうと日は昇って朝は来るのである。私はすっかり不貞腐れて、塞ぎ込んで、馬車の中で一人蹲っていた。
「今後は大人しくしているんだな」
ユリスの説教染みた言葉も、今は鋭く刺さってただただ辛い。
「もう分かりましたから放っといてください……」
「エコ大丈夫?」
シルフィが頭を撫でてくれるのも嬉しいけど辛いのは変わらない。
「ありがとうシルフィ。嬉しいよ……」
がたがたと馬車が揺れる。国境へ向かうゆったりした道のり、昨日と変わらない風景。一点を除いて。しばらく無言のまま時間が過ぎ、唐突にハインツが言った。
「俺、ミケが男だって最初から分かってたけど」
「ええ!? 何で教えてくれなかったの!?」
私はハインツに掴みかかる勢いで叫んだ。最初から言ってくれればあんな、あんな悲しい事件にはならなかったのに!
「だ、だってみんな女の子って言うからそうなのかもと思って」
「そっか……」
まあ彼を責めても仕方ない。
「女の子の振りして生きるなんて、すごい人もいるんだね。俺びっくりしたよ」
私もだよ。
ミケちゃんは男だったのである。しかも美少女どころか少年ですらなく、小柄で調子良いだけの若い兄ちゃんでした。彼は自分の可愛らしい容姿を生かして男性に擦り寄ってあれこれと貢がせたり、手を組んで今回のように行動を共にしたりするそうです。
昨晩の男に襲われた騒ぎは、ミケちゃ……ミケが仲間と揉めて取っ組み合いになったところをハインツが救出。そして戻って来たハインツがざっくりした説明しかしなかったので私が嫌な方向へ勘違いをしたというだけの話でした。
つまり私が脳内に思い描いていた可哀想な美少女は存在していなかったのです。以上が悲しい事件の顛末でした。
現在ミケは普通に他の仲間と一緒に外を歩いています。よくよく考えればこんな危ない場所に少女がふらふらしているわけもない。私はあの殊勝な演技と表情にすっかり騙されてしまったのだ。
「はあ……辛い……」
可哀想な美少女がいなくて良かったものの、私の心の傷は深かった。
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(追記2018.07.24)
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今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
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