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女王様の言うことは
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『女の子二人は私の世話係で、残りは適当にジェイが配備して』
ということで。私とミケは女王の世話係をすることになってしまった。ユリスたちがどこで働くかは知らない。
皆働く場所も寝泊まりする場所も違うようだ。代わりに一日一回は必ず全員で顔を合わせるよう配慮してもらうことになった。それまではミケと二人きりだ。
この城で数日間、真面目に働けば私たちが怪しくないという証明に……なるの? 本当に? 分からないけどやるしかない。
女王の自室らしき部屋に通されて、何をするでもなく二人で突っ立っていた。大きなベッドが目を引くものの、置いてあるソファやテーブル類も明らかに一人用のサイズではない。どれも汚れ一つなかった。綺麗すぎて生活感が薄い。
澄まし顔のミケとただ黙って女王が来るのを待っていると、
「やーごめんごめん。ジェイがうるさくてさー」
ぶつぶつ言いながら女王が現れた。赤い髪を雑にかき回して、ソファに腰を下ろす。
「その辺の椅子、適当に持って来て座って」
これは言うことを聞くべきなのか遠慮すべきなのか、作法が分からない。召使いとか世話係とかなら立ったままの方が良いような気もする。
「いいから座って。首疲れるし」
再度促され、私とミケは机に備えられた椅子などを持って来て女王の向かいに座った。一応礼儀正しく、背筋を伸ばした。就職面接の時を思い出していた。手を重ねて置くんだっけ……?
女王は満足そうに笑みを浮かべて言った。
「まず二人の仕事ね。私の話し相手になって」
「は、話し相手?」
「うん。正直な話、世話係とか要らないの。私も毎日暇だから、二人には暇つぶしの相手になって欲しいのよ。仕事はそれだけ」
「女王様のお仕事は無いの?」
ミケがずけずけと聞く。私よりも余裕がある感じだ。女王は溜め息を吐いて首を振った。
「無い。私ね、お飾りの女王なの。王位は継いだけど、両親まだ現役だから実権はほとんど親が握っているようなものだし、部下は優秀だし、王としてやることも全然ないし……なーんにも無いの。暇」
「そうなんですか……」
「えー。でもお金いっぱいあるなら色々出来るでしょ?」
ミケは全く遠慮がない。さすがに失礼では、と私は慌てるも女王は「そう思うでしょ~?」と気軽に答えた。
「でも、私も一応女王じゃない? だから変なことも出来ないし、すぐ睨まれるの。親と国民と使用人たち、ずっとみんなに監視されてる状態。何もしないのが一番幸せなのよ。本当つまんない人生。だから貴方たちが来てくれてちょっと嬉しかったかも」
「どういたしましてー」
ミケが冗談めかして言う。女王も「もっと早く来てよねー」と返す。私にはノリが分からない。愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。
「二人とも私のことは女王と思わなくていいから。名前で呼んで、普通に話をしましょう。私はカナン。貴方たちは?」
「あたしはミケ。こっちはエコ!」
「エコです。よろしくお願いします」
深く頭を下げる。視線を感じて、私は気まずく目を泳がせた。何か変だっただろうか。
「ねえエコ、気になってたんだけど、その服はメセイルで買ったの?」
「服? これは……ええと、メセイルには売ってないです」
ただのジャージです。安物の。近所のショッピングモールで買ったやつです。
女王、カナンさんは私のジャージを興味深そうに眺めている。居心地が悪い。カナンさんはぱっと顔を上げて言った。
「ね、二人ともドレスとか着たくない? 私自分が着るより見る方が好きなのよね」
「え。いや、私は」
「遠慮しない! なんせ暇だし、折角女の子に来てもらったんだし! 私エコの服着てみたい!」
「こ、これはあまり綺麗じゃないので……!」
こっちの世界に来てからというものほとんど着っ放しの服である。女王に着せるなんてとんでもない。しかし彼女はもうやる気満々のようだ。
「ちゃんと洗って返すから! ねえミケはどんなドレスが良い?」
「あたしも見る方がいいかなー」
「そんなこと言わないでよ。折角可愛いんだから」
そうだそうだ。どうせならミケも道連れにしたかった。しかし。
「ごめんねぇ。あたし体に酷い傷があるものだから、あんまり人前で着たり脱いだりしたくないの。あたしはいいから、エコに着せてあげて」
「あら。それはごめんなさい」
ミケが上手い言い訳をした所為で矛先は私一人に向いた。ここで私が拒否する、なんて空気読めないこと出来ない。この際覚悟を決めるしかない。これは仕事、これは仕事だから……!
ということで。私とミケは女王の世話係をすることになってしまった。ユリスたちがどこで働くかは知らない。
皆働く場所も寝泊まりする場所も違うようだ。代わりに一日一回は必ず全員で顔を合わせるよう配慮してもらうことになった。それまではミケと二人きりだ。
この城で数日間、真面目に働けば私たちが怪しくないという証明に……なるの? 本当に? 分からないけどやるしかない。
女王の自室らしき部屋に通されて、何をするでもなく二人で突っ立っていた。大きなベッドが目を引くものの、置いてあるソファやテーブル類も明らかに一人用のサイズではない。どれも汚れ一つなかった。綺麗すぎて生活感が薄い。
澄まし顔のミケとただ黙って女王が来るのを待っていると、
「やーごめんごめん。ジェイがうるさくてさー」
ぶつぶつ言いながら女王が現れた。赤い髪を雑にかき回して、ソファに腰を下ろす。
「その辺の椅子、適当に持って来て座って」
これは言うことを聞くべきなのか遠慮すべきなのか、作法が分からない。召使いとか世話係とかなら立ったままの方が良いような気もする。
「いいから座って。首疲れるし」
再度促され、私とミケは机に備えられた椅子などを持って来て女王の向かいに座った。一応礼儀正しく、背筋を伸ばした。就職面接の時を思い出していた。手を重ねて置くんだっけ……?
女王は満足そうに笑みを浮かべて言った。
「まず二人の仕事ね。私の話し相手になって」
「は、話し相手?」
「うん。正直な話、世話係とか要らないの。私も毎日暇だから、二人には暇つぶしの相手になって欲しいのよ。仕事はそれだけ」
「女王様のお仕事は無いの?」
ミケがずけずけと聞く。私よりも余裕がある感じだ。女王は溜め息を吐いて首を振った。
「無い。私ね、お飾りの女王なの。王位は継いだけど、両親まだ現役だから実権はほとんど親が握っているようなものだし、部下は優秀だし、王としてやることも全然ないし……なーんにも無いの。暇」
「そうなんですか……」
「えー。でもお金いっぱいあるなら色々出来るでしょ?」
ミケは全く遠慮がない。さすがに失礼では、と私は慌てるも女王は「そう思うでしょ~?」と気軽に答えた。
「でも、私も一応女王じゃない? だから変なことも出来ないし、すぐ睨まれるの。親と国民と使用人たち、ずっとみんなに監視されてる状態。何もしないのが一番幸せなのよ。本当つまんない人生。だから貴方たちが来てくれてちょっと嬉しかったかも」
「どういたしましてー」
ミケが冗談めかして言う。女王も「もっと早く来てよねー」と返す。私にはノリが分からない。愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。
「二人とも私のことは女王と思わなくていいから。名前で呼んで、普通に話をしましょう。私はカナン。貴方たちは?」
「あたしはミケ。こっちはエコ!」
「エコです。よろしくお願いします」
深く頭を下げる。視線を感じて、私は気まずく目を泳がせた。何か変だっただろうか。
「ねえエコ、気になってたんだけど、その服はメセイルで買ったの?」
「服? これは……ええと、メセイルには売ってないです」
ただのジャージです。安物の。近所のショッピングモールで買ったやつです。
女王、カナンさんは私のジャージを興味深そうに眺めている。居心地が悪い。カナンさんはぱっと顔を上げて言った。
「ね、二人ともドレスとか着たくない? 私自分が着るより見る方が好きなのよね」
「え。いや、私は」
「遠慮しない! なんせ暇だし、折角女の子に来てもらったんだし! 私エコの服着てみたい!」
「こ、これはあまり綺麗じゃないので……!」
こっちの世界に来てからというものほとんど着っ放しの服である。女王に着せるなんてとんでもない。しかし彼女はもうやる気満々のようだ。
「ちゃんと洗って返すから! ねえミケはどんなドレスが良い?」
「あたしも見る方がいいかなー」
「そんなこと言わないでよ。折角可愛いんだから」
そうだそうだ。どうせならミケも道連れにしたかった。しかし。
「ごめんねぇ。あたし体に酷い傷があるものだから、あんまり人前で着たり脱いだりしたくないの。あたしはいいから、エコに着せてあげて」
「あら。それはごめんなさい」
ミケが上手い言い訳をした所為で矛先は私一人に向いた。ここで私が拒否する、なんて空気読めないこと出来ない。この際覚悟を決めるしかない。これは仕事、これは仕事だから……!
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