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女王様の言うことは
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夜。例の如く、私とミケはカナンさんの部屋にいた。カナンさんは既にベッドの上でくつろいでいて、私とミケは椅子を寄せて会話をしている。
カナンさんが言った。
「もうやることないみたいだし、明日には精霊の居場所を教えるね。結構楽しかったから、もっと長くいてもらっても良かったんだけどねえ」
しかし私とミケは割と限界である。なんせ敵地にいる状態なわけで、しかも二人きりで、全く気を抜けないのだ。カナンさんは「あーあ」と残念そうに溜め息を零した。
「貴方たちここで働く気はない? 今みたいに私の相手をしてくれるだけでいいんだけれど」
「申し訳ないですけどお断りします」
「そう。まあ分かってたけどね。そっちは?」
「あたしもお断りしますー」
「そっかあ。でも気が変わったら言ってね? じゃ、今日はとことん話そう! まず調査結果からね」
相も変わらずカナンさんはマイペースだ。
「何の調査ですか?」
問うと、カナンさんはよくぞ聞いてくれましたとばかりに飛び上がって、ベッドの縁に腰掛けた。
「貴方のお仲間たちを見て来たから、その調査結果よ。あのハインツとかいう人はどうなの?」
「どうとは?」
「あの子、魔法は使えないけど真面目で良い子じゃない!」
カナンさんは私の方へ身を乗り出して目を輝かせた。私はぴんと来た。また例の好きな人の話か。
「もうその話は良いですよ……」苦笑する。するとカナンさんは口をへの字にした。
「そう言われてもね。他に話題が無いのよ。貴方たちの国のことを聞いてもしょうがないし……愉快な話って無いのよね。何かある?」
「え。えーと。逆に、カナンさんはどうなんですか。理想の人とか、どういう人が好きなんですか?」
悲しいかな、私も同じ話題しか出てこなかった。この面子で当たり障りのない明るい話題というと好きなものの話だけど、食べ物でも趣味でも、私は別の世界のことしか分からない。好きな人の話というのは、どこに行っても共通なんだな。少し感心した。
カナンさんは憂鬱そうに言った。
「理想の人ね。あんまり考えたことないな。私には関係ないし。私ね、結婚相手とかまで全部、決まってるの。好きになっても無駄っていうか、辛いだけだから、考えたこともない」
「そ、うなんですか」
「えーひどーい!」
暗くなった空気を飛ばすようにミケが声を上げる。カナンさんも笑みを取り戻して、私はほっとした。
「酷いよねえ。色々優れてて、民に歓迎されるような結婚相手を、うちの大臣とか偉い人が勝手に決めて私は従うだけ。つまんないよね。もう自分のことはどうでもいいの。全部他人事って感じで」
自分の意思なんて関係ない、女王としての生活。もしかしたら、ユリスも同じなのだろうか……。ユリスも、結婚相手は決まってるのかな。ふと考えてみて、私には関係ないことだったと考えを追い払った。はしゃいだミケの声が聞こえる。
「ねーねー、カナンさん的に、あたしたちの中で好みの人とかいる? あたしとか?」
「ちょっと待って考えてみる……うーん。ハインツかなあ。真面目で実直な人っていいじゃない? あ、でもユリスだっけ。あの貴族の主の方、あの人も良いなあ」
「えー! 意外ー!」
何が意外なのかミケは大袈裟にリアクションをした。まるで女子会である。しかしユリスに対して好意的な人は新鮮だ。私も少し気になった。
「ユリスのどういうところが良いの?」ミケが問う。
「態度は酷かったけど、見てる分には素敵よ。所作も綺麗だし、慣れ合わない媚びない感じが気高くて、良いと思うわ」
「なるほどー」
「へー……」
どんなところも見方を変えれば長所になる。かつて面接の練習の時にそんなことを聞いたような気がする。
カナンさんの褒めっぷりに私は感動した、どころか何故か少しもやもやした気持ちを感じていた。ユリスは悪い人じゃない。良いところもある。褒められたって何もおかしくはないんだけど。
「どうせだしぃ、ユリスと話してみたら?」
ミケが悪戯っぽく言って、カナンさんは唸った。
「んー、でも私、近付いただけですごい睨まれたしなあ。さすがに男の人をこの部屋に呼ぶわけにはいかないし。ジェイに怒られちゃう」
「他の部屋ならいいんじゃない?」
「あ、そっか。そうね。昨日貴方たちが寝泊まりした部屋、あそこならいいわ。よーし。じゃあ行きましょう!」
カナンさんは立ち上がり、私たちを先導して行こうとして、止まった。
「さすがに着替えた方がいいか。貴方たちは先に行ってて頂戴」
言いながらネグリジェを脱ぎ始めたので、私とミケは急いで部屋を出た。女王様の着替えを見るのはさすがに宜しくない。
カナンさんが言った。
「もうやることないみたいだし、明日には精霊の居場所を教えるね。結構楽しかったから、もっと長くいてもらっても良かったんだけどねえ」
しかし私とミケは割と限界である。なんせ敵地にいる状態なわけで、しかも二人きりで、全く気を抜けないのだ。カナンさんは「あーあ」と残念そうに溜め息を零した。
「貴方たちここで働く気はない? 今みたいに私の相手をしてくれるだけでいいんだけれど」
「申し訳ないですけどお断りします」
「そう。まあ分かってたけどね。そっちは?」
「あたしもお断りしますー」
「そっかあ。でも気が変わったら言ってね? じゃ、今日はとことん話そう! まず調査結果からね」
相も変わらずカナンさんはマイペースだ。
「何の調査ですか?」
問うと、カナンさんはよくぞ聞いてくれましたとばかりに飛び上がって、ベッドの縁に腰掛けた。
「貴方のお仲間たちを見て来たから、その調査結果よ。あのハインツとかいう人はどうなの?」
「どうとは?」
「あの子、魔法は使えないけど真面目で良い子じゃない!」
カナンさんは私の方へ身を乗り出して目を輝かせた。私はぴんと来た。また例の好きな人の話か。
「もうその話は良いですよ……」苦笑する。するとカナンさんは口をへの字にした。
「そう言われてもね。他に話題が無いのよ。貴方たちの国のことを聞いてもしょうがないし……愉快な話って無いのよね。何かある?」
「え。えーと。逆に、カナンさんはどうなんですか。理想の人とか、どういう人が好きなんですか?」
悲しいかな、私も同じ話題しか出てこなかった。この面子で当たり障りのない明るい話題というと好きなものの話だけど、食べ物でも趣味でも、私は別の世界のことしか分からない。好きな人の話というのは、どこに行っても共通なんだな。少し感心した。
カナンさんは憂鬱そうに言った。
「理想の人ね。あんまり考えたことないな。私には関係ないし。私ね、結婚相手とかまで全部、決まってるの。好きになっても無駄っていうか、辛いだけだから、考えたこともない」
「そ、うなんですか」
「えーひどーい!」
暗くなった空気を飛ばすようにミケが声を上げる。カナンさんも笑みを取り戻して、私はほっとした。
「酷いよねえ。色々優れてて、民に歓迎されるような結婚相手を、うちの大臣とか偉い人が勝手に決めて私は従うだけ。つまんないよね。もう自分のことはどうでもいいの。全部他人事って感じで」
自分の意思なんて関係ない、女王としての生活。もしかしたら、ユリスも同じなのだろうか……。ユリスも、結婚相手は決まってるのかな。ふと考えてみて、私には関係ないことだったと考えを追い払った。はしゃいだミケの声が聞こえる。
「ねーねー、カナンさん的に、あたしたちの中で好みの人とかいる? あたしとか?」
「ちょっと待って考えてみる……うーん。ハインツかなあ。真面目で実直な人っていいじゃない? あ、でもユリスだっけ。あの貴族の主の方、あの人も良いなあ」
「えー! 意外ー!」
何が意外なのかミケは大袈裟にリアクションをした。まるで女子会である。しかしユリスに対して好意的な人は新鮮だ。私も少し気になった。
「ユリスのどういうところが良いの?」ミケが問う。
「態度は酷かったけど、見てる分には素敵よ。所作も綺麗だし、慣れ合わない媚びない感じが気高くて、良いと思うわ」
「なるほどー」
「へー……」
どんなところも見方を変えれば長所になる。かつて面接の練習の時にそんなことを聞いたような気がする。
カナンさんの褒めっぷりに私は感動した、どころか何故か少しもやもやした気持ちを感じていた。ユリスは悪い人じゃない。良いところもある。褒められたって何もおかしくはないんだけど。
「どうせだしぃ、ユリスと話してみたら?」
ミケが悪戯っぽく言って、カナンさんは唸った。
「んー、でも私、近付いただけですごい睨まれたしなあ。さすがに男の人をこの部屋に呼ぶわけにはいかないし。ジェイに怒られちゃう」
「他の部屋ならいいんじゃない?」
「あ、そっか。そうね。昨日貴方たちが寝泊まりした部屋、あそこならいいわ。よーし。じゃあ行きましょう!」
カナンさんは立ち上がり、私たちを先導して行こうとして、止まった。
「さすがに着替えた方がいいか。貴方たちは先に行ってて頂戴」
言いながらネグリジェを脱ぎ始めたので、私とミケは急いで部屋を出た。女王様の着替えを見るのはさすがに宜しくない。
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