キスだけは断固拒否します!現実に帰りたくないので!~異世界での私は救世主らしいです~

空木切

文字の大きさ
106 / 252
女王様の言うことは

104

しおりを挟む
 夜。例の如く、私とミケはカナンさんの部屋にいた。カナンさんは既にベッドの上でくつろいでいて、私とミケは椅子を寄せて会話をしている。
 カナンさんが言った。
「もうやることないみたいだし、明日には精霊の居場所を教えるね。結構楽しかったから、もっと長くいてもらっても良かったんだけどねえ」
 しかし私とミケは割と限界である。なんせ敵地にいる状態なわけで、しかも二人きりで、全く気を抜けないのだ。カナンさんは「あーあ」と残念そうに溜め息を零した。
「貴方たちここで働く気はない? 今みたいに私の相手をしてくれるだけでいいんだけれど」
「申し訳ないですけどお断りします」
「そう。まあ分かってたけどね。そっちは?」
「あたしもお断りしますー」
「そっかあ。でも気が変わったら言ってね? じゃ、今日はとことん話そう! まず調査結果からね」
 相も変わらずカナンさんはマイペースだ。
「何の調査ですか?」
 問うと、カナンさんはよくぞ聞いてくれましたとばかりに飛び上がって、ベッドの縁に腰掛けた。
「貴方のお仲間たちを見て来たから、その調査結果よ。あのハインツとかいう人はどうなの?」
「どうとは?」
「あの子、魔法は使えないけど真面目で良い子じゃない!」
 カナンさんは私の方へ身を乗り出して目を輝かせた。私はぴんと来た。また例の好きな人の話か。
「もうその話は良いですよ……」苦笑する。するとカナンさんは口をへの字にした。
「そう言われてもね。他に話題が無いのよ。貴方たちの国のことを聞いてもしょうがないし……愉快な話って無いのよね。何かある?」
「え。えーと。逆に、カナンさんはどうなんですか。理想の人とか、どういう人が好きなんですか?」
 悲しいかな、私も同じ話題しか出てこなかった。この面子で当たり障りのない明るい話題というと好きなものの話だけど、食べ物でも趣味でも、私は別の世界のことしか分からない。好きな人の話というのは、どこに行っても共通なんだな。少し感心した。
 カナンさんは憂鬱そうに言った。
「理想の人ね。あんまり考えたことないな。私には関係ないし。私ね、結婚相手とかまで全部、決まってるの。好きになっても無駄っていうか、辛いだけだから、考えたこともない」
「そ、うなんですか」
「えーひどーい!」
 暗くなった空気を飛ばすようにミケが声を上げる。カナンさんも笑みを取り戻して、私はほっとした。
「酷いよねえ。色々優れてて、民に歓迎されるような結婚相手を、うちの大臣とか偉い人が勝手に決めて私は従うだけ。つまんないよね。もう自分のことはどうでもいいの。全部他人事って感じで」
 自分の意思なんて関係ない、女王としての生活。もしかしたら、ユリスも同じなのだろうか……。ユリスも、結婚相手は決まってるのかな。ふと考えてみて、私には関係ないことだったと考えを追い払った。はしゃいだミケの声が聞こえる。
「ねーねー、カナンさん的に、あたしたちの中で好みの人とかいる? あたしとか?」
「ちょっと待って考えてみる……うーん。ハインツかなあ。真面目で実直な人っていいじゃない? あ、でもユリスだっけ。あの貴族の主の方、あの人も良いなあ」
「えー! 意外ー!」
 何が意外なのかミケは大袈裟にリアクションをした。まるで女子会である。しかしユリスに対して好意的な人は新鮮だ。私も少し気になった。
「ユリスのどういうところが良いの?」ミケが問う。
「態度は酷かったけど、見てる分には素敵よ。所作も綺麗だし、慣れ合わない媚びない感じが気高くて、良いと思うわ」
「なるほどー」
「へー……」
 どんなところも見方を変えれば長所になる。かつて面接の練習の時にそんなことを聞いたような気がする。
 カナンさんの褒めっぷりに私は感動した、どころか何故か少しもやもやした気持ちを感じていた。ユリスは悪い人じゃない。良いところもある。褒められたって何もおかしくはないんだけど。
「どうせだしぃ、ユリスと話してみたら?」
 ミケが悪戯っぽく言って、カナンさんは唸った。
「んー、でも私、近付いただけですごい睨まれたしなあ。さすがに男の人をこの部屋に呼ぶわけにはいかないし。ジェイに怒られちゃう」
「他の部屋ならいいんじゃない?」
「あ、そっか。そうね。昨日貴方たちが寝泊まりした部屋、あそこならいいわ。よーし。じゃあ行きましょう!」
 カナンさんは立ち上がり、私たちを先導して行こうとして、止まった。
「さすがに着替えた方がいいか。貴方たちは先に行ってて頂戴」
 言いながらネグリジェを脱ぎ始めたので、私とミケは急いで部屋を出た。女王様の着替えを見るのはさすがに宜しくない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...