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船上
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ハインツが甲板で剣の素振りをしている。夜は見張りをして、昼間は昼間で素振りをしたり魔法の勉強をしたり、休む暇もないだろうに。ラウロといい、どうしてみんなそんなに働き者なんだ。毎日しっかり怠惰に過ごしている私とは大違いである。
近頃はシルフィも一緒になって、剣の鞘を手に素振りをしている。体育会系的な空気が甲板に満ちていた。
「……九十九、百! 終わり! 休憩しよう」
「僕もっと出来るよ~」
「休憩も大事だから……ちゃんと休憩した方が良いよ」
「ふーん。分かった!」
二人は座って汗を拭いている。私も混ざりたい。けど混ざりにくい。羨ましく遠目に眺めているとシルフィが手を振った。
「エコもやる?」
「いいの? 邪魔じゃない?」と言いつつ体は動いていた。
「え、で、でも、エコさんはそんなに力をつけなくても……」
ハインツは渋い顔で私を見つめた。私は剣、は重そうなのでシルフィが持っていた鞘を借りて試しに振ってみた。
「い……意外と……腕にくる」
「む、無理しない方が」
「大丈夫だって。私だってこれくらい出来る」
鞘はそこまで重くはないものの、上下に振ると重みが増す。腕が持っていかれそうだ。私もこの際、腕力を鍛えようか。今後、崖っぷちに掴まるようなこともあるかもしれないし。あったら嫌だけど。
私はさっきのハインツたちの様子を思い出しながら鞘を振り続けた。
「十三、十四、じゅう、ご……じゅう……じゅ……」
「エコ、大丈夫?」
「くっ……! うっ……む、無理」
上腕の辺りがもう悲鳴を上げている。私は鞘を下ろして息を吐いた。船が突然大きく揺れる。よろけた私を、ハインツが片手で素早く支えた。
「き、気を付けて」
「…………私って弱すぎない!?」
今更だけど、私って弱すぎない!? ハインツの逞しさに触れ、改めて自分の弱さを実感してしまった。悔しい! 妙に悔しい気分になった。
「ハインツ、ありがとう支えてくれて……でも私をあまり甘やかさないで!」
「え? ど、どういう意味?」
「私、強くなりたい!」
ハインツに食いかかるようにすると、彼は目を瞬かせて手を泳がせた。
「つっ、強くならなくても、俺が……」
「やっと気付いた。私が強くなれば良い話なんだよ。そう。つまりはそういうこと!」
魔法が使えなくても、身体を鍛えればいい。そうして私が強くなれば、勝手に動いてユリスに怒られなくて済むし、ラウロにも怒られなくて済むし、要は怒られたくない。怒りを湛えた主従のあの恐ろしい空気は二度と味わいたくない。
私の力を見せつければ、多少無理をしても納得してもらえるはず。筋肉は裏切らない。私の味方だ!
私はハインツを見上げて、鞘を再び強く握りしめた。
「私も鍛える!」
完全に体育会系の空気に感化されていた。ハインツは困惑の色を目に宿して、何か言おうと口をぱくぱくさせた。その隙に私は問う。
「ハインツがどうやって鍛えてるのか教えて!」
「ええ~……えっと、じゃあ、こ、こうやって……」
ハインツは渋々甲板に手をついて、足を伸ばした。私も真似て隣に並ぶ。シルフィも同じく。
「腕を、こうやって曲げたり伸ばしたりする」
そう言いながらハインツは軽々と腕立て伏せをした。私も同じように腕を曲げるも、曲げたまま戻れない。自分の体が凄まじく重い。
「ぐうぅ! 私の筋肉~!」
「何回くらいやるの?」
しっかり腕立て伏せをこなしたシルフィが問う。ハインツは考えたこともなかったという風に、戸惑いながら答えた。
「何回? うーんと、疲れるまでやる」
疲れるまで。私はもう既に疲れた。膝をついて息を吐く。
「む、無理。ちょっと待って。腕立て伏せってこんな難しかったっけ?」
「エコさんは別に鍛えなくても……」
「腹筋にしよう。まずはね、初歩的なところからいこう。そこから段階的にね」
「どうやるの?」
シルフィが首を傾げたので、私は甲板に仰向けになって膝を立てた。足を引っかける場所があればいいのに、と、ハインツがいた。
「ハインツ、私とシルフィの足押さえててくれる?」
「わ、分かった」
「あのねシルフィ。ここから手を使わずに、お腹に力を入れつつこう、こうやっ……くっ……こう!」
何とか起き上がれた。シルフィはいとも易々起き上がって、それからも同じ動作を繰り返し「これでいいの? 合ってる?」と不安そうに言った。いやどういう体してるのこの子。森で暮らしてたわけだしそれなりに筋肉が付いてるのかな。
「シルフィ、きつくないの?」
「うん」
「す、すごい……。私も頑張ろ」
近頃はシルフィも一緒になって、剣の鞘を手に素振りをしている。体育会系的な空気が甲板に満ちていた。
「……九十九、百! 終わり! 休憩しよう」
「僕もっと出来るよ~」
「休憩も大事だから……ちゃんと休憩した方が良いよ」
「ふーん。分かった!」
二人は座って汗を拭いている。私も混ざりたい。けど混ざりにくい。羨ましく遠目に眺めているとシルフィが手を振った。
「エコもやる?」
「いいの? 邪魔じゃない?」と言いつつ体は動いていた。
「え、で、でも、エコさんはそんなに力をつけなくても……」
ハインツは渋い顔で私を見つめた。私は剣、は重そうなのでシルフィが持っていた鞘を借りて試しに振ってみた。
「い……意外と……腕にくる」
「む、無理しない方が」
「大丈夫だって。私だってこれくらい出来る」
鞘はそこまで重くはないものの、上下に振ると重みが増す。腕が持っていかれそうだ。私もこの際、腕力を鍛えようか。今後、崖っぷちに掴まるようなこともあるかもしれないし。あったら嫌だけど。
私はさっきのハインツたちの様子を思い出しながら鞘を振り続けた。
「十三、十四、じゅう、ご……じゅう……じゅ……」
「エコ、大丈夫?」
「くっ……! うっ……む、無理」
上腕の辺りがもう悲鳴を上げている。私は鞘を下ろして息を吐いた。船が突然大きく揺れる。よろけた私を、ハインツが片手で素早く支えた。
「き、気を付けて」
「…………私って弱すぎない!?」
今更だけど、私って弱すぎない!? ハインツの逞しさに触れ、改めて自分の弱さを実感してしまった。悔しい! 妙に悔しい気分になった。
「ハインツ、ありがとう支えてくれて……でも私をあまり甘やかさないで!」
「え? ど、どういう意味?」
「私、強くなりたい!」
ハインツに食いかかるようにすると、彼は目を瞬かせて手を泳がせた。
「つっ、強くならなくても、俺が……」
「やっと気付いた。私が強くなれば良い話なんだよ。そう。つまりはそういうこと!」
魔法が使えなくても、身体を鍛えればいい。そうして私が強くなれば、勝手に動いてユリスに怒られなくて済むし、ラウロにも怒られなくて済むし、要は怒られたくない。怒りを湛えた主従のあの恐ろしい空気は二度と味わいたくない。
私の力を見せつければ、多少無理をしても納得してもらえるはず。筋肉は裏切らない。私の味方だ!
私はハインツを見上げて、鞘を再び強く握りしめた。
「私も鍛える!」
完全に体育会系の空気に感化されていた。ハインツは困惑の色を目に宿して、何か言おうと口をぱくぱくさせた。その隙に私は問う。
「ハインツがどうやって鍛えてるのか教えて!」
「ええ~……えっと、じゃあ、こ、こうやって……」
ハインツは渋々甲板に手をついて、足を伸ばした。私も真似て隣に並ぶ。シルフィも同じく。
「腕を、こうやって曲げたり伸ばしたりする」
そう言いながらハインツは軽々と腕立て伏せをした。私も同じように腕を曲げるも、曲げたまま戻れない。自分の体が凄まじく重い。
「ぐうぅ! 私の筋肉~!」
「何回くらいやるの?」
しっかり腕立て伏せをこなしたシルフィが問う。ハインツは考えたこともなかったという風に、戸惑いながら答えた。
「何回? うーんと、疲れるまでやる」
疲れるまで。私はもう既に疲れた。膝をついて息を吐く。
「む、無理。ちょっと待って。腕立て伏せってこんな難しかったっけ?」
「エコさんは別に鍛えなくても……」
「腹筋にしよう。まずはね、初歩的なところからいこう。そこから段階的にね」
「どうやるの?」
シルフィが首を傾げたので、私は甲板に仰向けになって膝を立てた。足を引っかける場所があればいいのに、と、ハインツがいた。
「ハインツ、私とシルフィの足押さえててくれる?」
「わ、分かった」
「あのねシルフィ。ここから手を使わずに、お腹に力を入れつつこう、こうやっ……くっ……こう!」
何とか起き上がれた。シルフィはいとも易々起き上がって、それからも同じ動作を繰り返し「これでいいの? 合ってる?」と不安そうに言った。いやどういう体してるのこの子。森で暮らしてたわけだしそれなりに筋肉が付いてるのかな。
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