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白銀の北国
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普通の馬車でメセイルを出た私たちは、北国ディキタニアの門の前に到着した。頑丈そうな門扉だ。いかにも数十年は動いていないであろう雰囲気が出ている。門を越える手段として、よじ登る、回り込む、は無理そうだ。見る限り高い壁がどこまでも続いている。ここはやっぱり。
「道化」
ユリスが簡潔にミケを呼んだ。ミケは渋々前に出てきてユリスを振り返った。
「いいか、オレはあんたに付いてきたわけじゃねぇからな」
空気が重い。メセイルを出てからずっとこの調子だ。ミケだけでなく全員。訂正。私以外の全員だ。私は少しでも場を明るくしようとそれぞれに声をかけまくったが全く駄目だった。私は無力だ。
ミケは門に近付いた。トゥーリエの時は横の壁を壊して侵入したけどここはどうやって入るんだろう。見守っていると、軋みながら大きな門が開いた。
「もう開いたの? ミケすごい」
「いや、オレはまだ何もしてない」
「え?」
開かれた門の中には、鎧を着た兵士が立っていた。私たちに向かって頭を下げる。
「お待ちしていました。結界は一時的に解除してあります。馬車ごと中へどうぞ」
まさかのお出迎え? 私たちは顔を見合わせて、不思議に思いながらも素直に言うことを聞いた。馬車を引き連れて中へ。
「馬車はこちらで預かります。そのまま少しお待ちください。すぐに王子が参りますので」
「王子!?」
何で王子が来るのかさっぱり分からない。困惑したまま待っていると、門のそばにある詰め所らしき建物から一人の少年が出て来た。
兵士が揃って敬礼をしているところを見ると彼が王子なのだろうか。白い髪に金色の目をした儚げな美少年だ。繊細そうな体躯に雪みたいに白い肌。あまりに人間離れした美しさで、妖精か天使みたいだと思った。
「初めまして。ぼくがディキタニアの王子、イゼクといいます。貴方たちが来るのをお待ちしていました。ようこそ極寒の地へ」
王子と目が合った。じっと見つめてくる。私は少し照れながら、何か違和感を覚えていた。何だろう。私の中で何かが引っかかっている。王子は言った。
「エコさん、貴方に会うのは二度目ですね」
「えっ?」
何で私の名前を知ってるんだ。彼は微笑むと私に向かって小さく手を振った。その仕草で違和感の正体が解ける。
「あっ、船に乗ってた時に……」
思い出した。リジェナントでの船旅中、島に立ち寄った時に手を振っていた少年だ。どうやら幻覚ではなかったらしい。
しかしどうして北国の人間が南国に? 私の脳内の疑問を読み取ったのか王子は答えた。
「ぼくは外の国を歩き回るのが趣味なんです。色んな方に怒られてしまいそうな趣味ですが……。貴方たちのことも追いかけていたのでよく知っています。お会い出来てとても嬉しいです」
意外な展開だ。歓迎されている。ユリスもラウロも様子を窺っているのか無言だ。イゼク王子は続けた。
「では城まで案内します。もちろん精霊のところへも。貴方たちの事情は理解しているつもりです。出来る限り協力させてください」
「城はいい。直接精霊の居場所へ案内して欲しい」
ユリスがきっぱり突っぱねた。なんて失礼な。相手は王子なのに。するとイゼク王子は寂しそうな笑みを浮かべてユリスを見上げた。
「精霊に会うには城を通らなければ行けませんから、どうしても一度城には寄ることになります。それに、貴方たちには是非この国を見て行って欲しいんです。お願いします」
「何故です?」
ラウロが警戒した調子で問いかけると、王子は物怖じせず朗らかに言った。
「ここディキタニアは、厳しい環境ではありますが美しい国です。他国の方に、どんなところなのか知っておいてもらいたいんです。まだこの国があるうちに……」
王子は俯きかけた顔をぱっと起こして私たちを見回した。
「すみません。ぼくの言葉は気にせず、気軽に見て行ってください。防寒着をお渡ししますね」
イゼク王子の健気さにさすがのユリスも文句を言えなくなったのか了承した。
「道化」
ユリスが簡潔にミケを呼んだ。ミケは渋々前に出てきてユリスを振り返った。
「いいか、オレはあんたに付いてきたわけじゃねぇからな」
空気が重い。メセイルを出てからずっとこの調子だ。ミケだけでなく全員。訂正。私以外の全員だ。私は少しでも場を明るくしようとそれぞれに声をかけまくったが全く駄目だった。私は無力だ。
ミケは門に近付いた。トゥーリエの時は横の壁を壊して侵入したけどここはどうやって入るんだろう。見守っていると、軋みながら大きな門が開いた。
「もう開いたの? ミケすごい」
「いや、オレはまだ何もしてない」
「え?」
開かれた門の中には、鎧を着た兵士が立っていた。私たちに向かって頭を下げる。
「お待ちしていました。結界は一時的に解除してあります。馬車ごと中へどうぞ」
まさかのお出迎え? 私たちは顔を見合わせて、不思議に思いながらも素直に言うことを聞いた。馬車を引き連れて中へ。
「馬車はこちらで預かります。そのまま少しお待ちください。すぐに王子が参りますので」
「王子!?」
何で王子が来るのかさっぱり分からない。困惑したまま待っていると、門のそばにある詰め所らしき建物から一人の少年が出て来た。
兵士が揃って敬礼をしているところを見ると彼が王子なのだろうか。白い髪に金色の目をした儚げな美少年だ。繊細そうな体躯に雪みたいに白い肌。あまりに人間離れした美しさで、妖精か天使みたいだと思った。
「初めまして。ぼくがディキタニアの王子、イゼクといいます。貴方たちが来るのをお待ちしていました。ようこそ極寒の地へ」
王子と目が合った。じっと見つめてくる。私は少し照れながら、何か違和感を覚えていた。何だろう。私の中で何かが引っかかっている。王子は言った。
「エコさん、貴方に会うのは二度目ですね」
「えっ?」
何で私の名前を知ってるんだ。彼は微笑むと私に向かって小さく手を振った。その仕草で違和感の正体が解ける。
「あっ、船に乗ってた時に……」
思い出した。リジェナントでの船旅中、島に立ち寄った時に手を振っていた少年だ。どうやら幻覚ではなかったらしい。
しかしどうして北国の人間が南国に? 私の脳内の疑問を読み取ったのか王子は答えた。
「ぼくは外の国を歩き回るのが趣味なんです。色んな方に怒られてしまいそうな趣味ですが……。貴方たちのことも追いかけていたのでよく知っています。お会い出来てとても嬉しいです」
意外な展開だ。歓迎されている。ユリスもラウロも様子を窺っているのか無言だ。イゼク王子は続けた。
「では城まで案内します。もちろん精霊のところへも。貴方たちの事情は理解しているつもりです。出来る限り協力させてください」
「城はいい。直接精霊の居場所へ案内して欲しい」
ユリスがきっぱり突っぱねた。なんて失礼な。相手は王子なのに。するとイゼク王子は寂しそうな笑みを浮かべてユリスを見上げた。
「精霊に会うには城を通らなければ行けませんから、どうしても一度城には寄ることになります。それに、貴方たちには是非この国を見て行って欲しいんです。お願いします」
「何故です?」
ラウロが警戒した調子で問いかけると、王子は物怖じせず朗らかに言った。
「ここディキタニアは、厳しい環境ではありますが美しい国です。他国の方に、どんなところなのか知っておいてもらいたいんです。まだこの国があるうちに……」
王子は俯きかけた顔をぱっと起こして私たちを見回した。
「すみません。ぼくの言葉は気にせず、気軽に見て行ってください。防寒着をお渡ししますね」
イゼク王子の健気さにさすがのユリスも文句を言えなくなったのか了承した。
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(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
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