3 / 55
第一章 転生ハムスターは王太子様がお気に入り
3 絶対結界らしい?
しおりを挟む
いやー、死ぬかと思いましたわ、あの時は。
ほう、では死ななかったんですか? 魔王ビームをくらって。
ええ、何故だか生きていましたわ。
ほう、何が起こったか、お聞きしてもよろしいですか?
ええ、トールの言うには……
あっ、トールというのは魔法使いのコスプレをした三十過ぎと思われる、彫りの深いいかついおっさんなのですが、実は大陸一の召喚術師らしく……
という脳内ひとりインタビューはさておき、魔王ビームが直撃すると思われたその瞬間、私たちのまわりには絶対結界とやらが張られて、魔王ビームは霧散したらしい。
さすがは私の王太子様。
いや、弟くんですね。
いやはや、私の瞳はウルウルですよ。
なにやら、絶対に破ることができない防御らしいのですよ。
ふふっ、ハイスペックな容姿と優しさに加え、そんなすごいものまで使えるとは。
能あるタカは爪を隠すと言いますけど、お姉ちゃんはわかっていたからね。
できる子だって。
王太子様に助けられて私のハートはワシ掴みにされたみたいですわ。
ううん、タカ掴みかしら。
ぐーーーうーーーぅぅぅ……ってほら、私の胸もこーんなに大きな音を出して。
「ありがとうございました、テディ王太子殿下。それにしても、こんなにすごい結界を張れるとはさすがですね」
「いやいや、ちょっと待て、勇者。この結界は国家一級魔術師が百人がかりで張るレベルのものだ。いかに殿下が優れた魔術師であっても一人では無理だ」
ああ、なんだか、お腹が減ってきたな。
目が回ってクラクラしてきた。
お昼ご飯まだかなー。
「ちょっとー! そいつよ! そいつ! そのハムスターよ! あっ、まずいわよ! 何かエサやって! 昨日、ヒマワリの種食ってたでしょ! 王太子様、急いで!」
ああ、お腹が減って減って死にそう、と思ってると、王太子様がヒマワリの種をくれた。
やっほー、さすがは王太子様わかってらっしゃる、と思いながら私はヒマワリの種をガッついた。
いやー、ハムスターって本当にヒマワリの種が大好物なんだよね。
おいしいわー。
空腹は最高の調味料っていうのかな。
昨日食べたヒマワリの種より五割増しでおいしい。
そんなことを思いながら、私は王太子様の手のひらの上で、ガツガツとヒマワリの種を食べていた。
だけど、まったくお腹はふくらまず、食べても食べてもお腹が減る一方だ。
「こいつよ、こいつ。こいつが絶対結界を張ってんのよ。まちがいないわ」
「そんなバカな! こんなちびっこいハムスターにそんなことができるわけがないだろ!」
「いや、待て、勇者。たしかにこいつの召喚にはドラゴンクラスの魔石を使ってある。可能性はある」
「ちょっとステータスを調べてみるわ。えーっと……ちっ! 見えないわ! ありえない!」
「なにっ!? じゃあ、俺が見てみよう。うー……んっと、決戦用ハムスターLV1 ……ここまでか。これ以上は見えんな」
「決戦用って何だよ? ハムスターに決戦用も何もあるのかよ?」
「そんなことより、エサはたっぷりあるの? 王太子様、あとどのくらいありますか?」
「えーっと、あとこの袋ふたつ分だけど」
「ということは、このペースだとあと十五分ってとこかしら?」
「そうだな、どうするか決めんといかんな。どうする勇者、まだ戦えるか?」
「戦えると言いたいところだが、いったん出直した方がいいだろうな。それより十五分って何だ?」
「これだけの結界をこいつ一匹で張ってんのよ。何か食べてないと恐らく魔力切れを起こすわよ。召喚獣も精霊ももうボロボロだし、こいつの結界が消えたら、魔王の魔導砲が直撃して全員おだぶつよ」
ああ、魔導砲っていうんですね、このビームみたいなの。
などと思いつつも、ヒマワリの種を食べる口がとまらない。
冬眠前のリスもこんな気持ちなんだろうか?
ハムスターはたしか冬眠しなかったはずだから、リスの気持ちなんてわかるはずがない。
だけど、きっと食べなきゃ死ぬのよ、という強迫観念に苛まれてガツガツ食ってたんだろう。
ごめんね、リスさん。
口をいっぱいにふくらませてまで、食べ物を押し込んでる君たちをかわいいとか思って。
必死だったんだね。
食べなきゃ死ぬーって気持ちだったんだね。
なーんて思いながらも、食べても食べてもお腹がふくらまないって地獄よね、と私はため息をつこうとした。
だけど、口の中がいっぱいでため息もつけやしなかった。
「よし、それじゃあ、こいつの結界が効いているうちに逃げるとしようか。次に来るときはエサをいっぱい持ってくれば、防御は完璧だ。三人で攻撃すれば魔王もなんとか倒せるかもしれんしな」
トールが渋みのある声で撤退の宣言をする。
その時だった。
「ケーケッケッケー、まさか魔王様を狙うとはネ! そんな畏れ多いことをして、生きて帰れるとでも思っているのかネ!」
「なっ! まさかお前たちは、魔族四天王か!?」
「クークックックー、勇者様御一行ヨ! ゆっくりここで死んでいくといいヨ!」
なんですとー!
耳をピーンと立てながら、私の瞳はカラフルな色分けをした魔族コスプレの四天王たちに釘付けだ。
赤、青、黄、緑って。
魔族としてその色分けはどうかと思うんですけど……。
でも、いったいどれが?
どれもこれも強そうだけど。
でも、いったいどいつが――。
どいつが四天王最弱なのかしら?
などという訳のわからん考えが、私の頭の中でぐるぐると回る。
ふー、いかんいかん、ハムスターの頭はお気楽すぎだわ。
思わず、ため息をついた私は、ふと、ヒマワリの種がもうなくなっていることに気がついた。
うん?
ため息がつけるということは、口の中もからっぽ?
というわけで、私は手のひら上のヒマワリの種がなくなったことを教えるために、王太子様の指を甘ガミした。
ふふっ、これで王太子様にツバ付けたことになるわね。
ニヤリとこぼれた笑みを浮かべたまま、私は王太子様を見上げて、かるーくウインクした。
ほう、では死ななかったんですか? 魔王ビームをくらって。
ええ、何故だか生きていましたわ。
ほう、何が起こったか、お聞きしてもよろしいですか?
ええ、トールの言うには……
あっ、トールというのは魔法使いのコスプレをした三十過ぎと思われる、彫りの深いいかついおっさんなのですが、実は大陸一の召喚術師らしく……
という脳内ひとりインタビューはさておき、魔王ビームが直撃すると思われたその瞬間、私たちのまわりには絶対結界とやらが張られて、魔王ビームは霧散したらしい。
さすがは私の王太子様。
いや、弟くんですね。
いやはや、私の瞳はウルウルですよ。
なにやら、絶対に破ることができない防御らしいのですよ。
ふふっ、ハイスペックな容姿と優しさに加え、そんなすごいものまで使えるとは。
能あるタカは爪を隠すと言いますけど、お姉ちゃんはわかっていたからね。
できる子だって。
王太子様に助けられて私のハートはワシ掴みにされたみたいですわ。
ううん、タカ掴みかしら。
ぐーーーうーーーぅぅぅ……ってほら、私の胸もこーんなに大きな音を出して。
「ありがとうございました、テディ王太子殿下。それにしても、こんなにすごい結界を張れるとはさすがですね」
「いやいや、ちょっと待て、勇者。この結界は国家一級魔術師が百人がかりで張るレベルのものだ。いかに殿下が優れた魔術師であっても一人では無理だ」
ああ、なんだか、お腹が減ってきたな。
目が回ってクラクラしてきた。
お昼ご飯まだかなー。
「ちょっとー! そいつよ! そいつ! そのハムスターよ! あっ、まずいわよ! 何かエサやって! 昨日、ヒマワリの種食ってたでしょ! 王太子様、急いで!」
ああ、お腹が減って減って死にそう、と思ってると、王太子様がヒマワリの種をくれた。
やっほー、さすがは王太子様わかってらっしゃる、と思いながら私はヒマワリの種をガッついた。
いやー、ハムスターって本当にヒマワリの種が大好物なんだよね。
おいしいわー。
空腹は最高の調味料っていうのかな。
昨日食べたヒマワリの種より五割増しでおいしい。
そんなことを思いながら、私は王太子様の手のひらの上で、ガツガツとヒマワリの種を食べていた。
だけど、まったくお腹はふくらまず、食べても食べてもお腹が減る一方だ。
「こいつよ、こいつ。こいつが絶対結界を張ってんのよ。まちがいないわ」
「そんなバカな! こんなちびっこいハムスターにそんなことができるわけがないだろ!」
「いや、待て、勇者。たしかにこいつの召喚にはドラゴンクラスの魔石を使ってある。可能性はある」
「ちょっとステータスを調べてみるわ。えーっと……ちっ! 見えないわ! ありえない!」
「なにっ!? じゃあ、俺が見てみよう。うー……んっと、決戦用ハムスターLV1 ……ここまでか。これ以上は見えんな」
「決戦用って何だよ? ハムスターに決戦用も何もあるのかよ?」
「そんなことより、エサはたっぷりあるの? 王太子様、あとどのくらいありますか?」
「えーっと、あとこの袋ふたつ分だけど」
「ということは、このペースだとあと十五分ってとこかしら?」
「そうだな、どうするか決めんといかんな。どうする勇者、まだ戦えるか?」
「戦えると言いたいところだが、いったん出直した方がいいだろうな。それより十五分って何だ?」
「これだけの結界をこいつ一匹で張ってんのよ。何か食べてないと恐らく魔力切れを起こすわよ。召喚獣も精霊ももうボロボロだし、こいつの結界が消えたら、魔王の魔導砲が直撃して全員おだぶつよ」
ああ、魔導砲っていうんですね、このビームみたいなの。
などと思いつつも、ヒマワリの種を食べる口がとまらない。
冬眠前のリスもこんな気持ちなんだろうか?
ハムスターはたしか冬眠しなかったはずだから、リスの気持ちなんてわかるはずがない。
だけど、きっと食べなきゃ死ぬのよ、という強迫観念に苛まれてガツガツ食ってたんだろう。
ごめんね、リスさん。
口をいっぱいにふくらませてまで、食べ物を押し込んでる君たちをかわいいとか思って。
必死だったんだね。
食べなきゃ死ぬーって気持ちだったんだね。
なーんて思いながらも、食べても食べてもお腹がふくらまないって地獄よね、と私はため息をつこうとした。
だけど、口の中がいっぱいでため息もつけやしなかった。
「よし、それじゃあ、こいつの結界が効いているうちに逃げるとしようか。次に来るときはエサをいっぱい持ってくれば、防御は完璧だ。三人で攻撃すれば魔王もなんとか倒せるかもしれんしな」
トールが渋みのある声で撤退の宣言をする。
その時だった。
「ケーケッケッケー、まさか魔王様を狙うとはネ! そんな畏れ多いことをして、生きて帰れるとでも思っているのかネ!」
「なっ! まさかお前たちは、魔族四天王か!?」
「クークックックー、勇者様御一行ヨ! ゆっくりここで死んでいくといいヨ!」
なんですとー!
耳をピーンと立てながら、私の瞳はカラフルな色分けをした魔族コスプレの四天王たちに釘付けだ。
赤、青、黄、緑って。
魔族としてその色分けはどうかと思うんですけど……。
でも、いったいどれが?
どれもこれも強そうだけど。
でも、いったいどいつが――。
どいつが四天王最弱なのかしら?
などという訳のわからん考えが、私の頭の中でぐるぐると回る。
ふー、いかんいかん、ハムスターの頭はお気楽すぎだわ。
思わず、ため息をついた私は、ふと、ヒマワリの種がもうなくなっていることに気がついた。
うん?
ため息がつけるということは、口の中もからっぽ?
というわけで、私は手のひら上のヒマワリの種がなくなったことを教えるために、王太子様の指を甘ガミした。
ふふっ、これで王太子様にツバ付けたことになるわね。
ニヤリとこぼれた笑みを浮かべたまま、私は王太子様を見上げて、かるーくウインクした。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる