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第2章 救国のハムスターは新たな人生を歩む
32 第二王子にもツバをつけたのかしら?
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ニルス王子とクレアの間にピッタリとはさみ込まれた私の耳元で、うぅーっという警戒の声が聞こえる。
私を背後にかばったニルス王子は、愛玩犬のような可愛らしいうなり声とともに、王太子様に牙をむいた。
「うぅーーーー、ハーモニーとふたりっきりで何を話そうというのですか!?」
いやいや、犬じゃないんだからね、ニルス王子。
うなり声はどうかと思うよ。
私はニルス王子をとめようと、クレアの腕の中でくるっと振り返った。
しかし、私がニルス王子に呼びかけるよりも先に、耳がキンキンするほどの高い声が鼓膜を震わせた。
「どうされましたか、王太子様? ハーモニーが何か失礼なことでも? ああ、そういえば、王太子様はハーモニーのことを人ではないとおっしゃったとか? ひょっとして、そのことですか?」
よかった。
シーラだ。
ニルス王子と一緒に来てくれたんだ。
これでひと安心だね、と思った矢先、王太子様はシーラにいぶかしげに問いかけた。
「……シーラは、その……知らないのか? 何も知らずに養女にしているのか?」
「何も知らない、とおっしゃいますと?」
「……その……シーラは、ハーモニー嬢を人だと思っているのか?」
あれだけはっきり言ったのに、いまだに王太子様は私のことを――とムッとしている私のそばで、ニルス王子の、うぅーという声が大きくなった。
知らないよ。
ニルス王子までこんなに怒らせて。
噛みつかれるよ。
「ええ、もちろんですわ。精霊に乗れるのも、魔族の武器を扱えるのも、結界を身にまとっているからだと考えております。大天使の加護を持つ王太子様であれば、わかっていただけますわよね?」
「……つまり……知らない、と……」
王太子様はシーラの営業スマイルに微笑み返すこともなく、ただ自分の考えにうなずくかのようにうなずいた。
「では、どういった経緯でハーモニー嬢を養女としたんだい?」
「この子はまちがいなく大陸一の精霊術師です。私の後継ぎにと考えております」
「後継ぎ!? そんなバカな!? そんなことが認められるわけが――」
空色の目を大きく見開いて鋭い声を発した王太子様に、ニルス王子が噛みついた。
「兄上に認めてもらう必要などありません! 父上に認めていただきます!」
「ニルスには関係ないだろう。私はシーラと話をしているんだ」
「いえ、関係があります。私はハーモニーの婚約者になるのです。いずれ、シーラ様は私の母上となられます」
「……どういうことだ、シーラ?」
眉間を指でギュッと押さえながら、不機嫌な声を出した王太子様に、シーラは満面の笑みを浮かべて応えた。
「たしかにハーモニーは人ならざる力を持っておりますが、その力は神から与えられたものです。王太子様の持っておられる大天使の加護も、そうでございましょう? 王太子様のお力はティトラン王国に繁栄をもたらすでしょう。そのお手伝いのために、私はハーモニーをモランデル家の後継ぎにと考えているのです」
「いや、そのことではない。ニルスの婚約の話だ」
「では、ハーモニーがモランデル家の後継ぎにふさわしいことは、おわかりいただけたでしょうか?」
「……そう……だな。私が口をはさむべき問題ではなかったな」
「おわかりいただけてよかったですわ」
「で、ニルスの件は?」
「その件につきましては、話を詰めたうえでお伝えします」
「いやいや、詰めてからでは遅いだろう」
「いえ、不確かな話を王太子様にお伝えするわけにはまいりませんわ」
「君はどうなんだ? ニルスと婚約するつもりなのか?」
一歩も引かない構えのシーラに、王太子様は矛先を私に変えたようだ。
だけど、その視線は不機嫌なうなり声をあげ続けるニルス王子によってはばまれた。
「うぅー、私の婚約に兄上が口をはさむのも問題ではありませんか?」
「何もわかっていないニルスこそ、口をはさまないでくれないか?」
「うぅー、私にはわかっております、兄上」
「何をわかっているというんだ?」
いらだちを必死で抑えるかのように、眉間を揉みながら低い声を発した王太子様に向かって、ニルス王子は、ひゅーぅーっと大きく息を吸い込んだ。
そして、叩きつけるように吐き出した。
「あれほどまでに兄上のことを慕っていたハーモニーを、兄上は悲しませたのです! でなければ、なぜ、ハーモニーはこんなところにいるのですか!?」
精霊への感謝を捧げるために、四大精霊の四つの色を散りばめて造られた精霊宮殿。
精霊祭のために集まった術師たちが、にこやかに談笑している控えの間の隅々にまで、ニルス王子の声変わりをしていないボーイソプラノが響き渡る。
ええっ!?
ダメだよね、ニルス王子。
慕ってたとか言っちゃダメだよね。
それに、やっぱり勘違いしてるよね。
私は大慌てで、ニルス王子を引き寄せ、その口を手でふさいだ。
王太子様やシーラだけではなく、控えの間全体が水を打ったようにしーんと静まりかえる。
そこにいた誰もが、私たちに目をみはり、耳をピーンとそばだてている中で、王太子様がふわっと体を揺らした。
「アンジェリカ王女様がお見えです」
王太子様が何か言おうとした直前に、クレアが大きく声を張った。
私たちに向けられていた視線が、一斉に入口へと殺到し、アンジェリカ王女はたおやかな笑みを浮かべた。
さすがは王女様。
一身に集めた視線をものともせず、まとった気品をにじませながら、王太子様に近づいてくる。
王太子様もなんとか笑みを取り繕い、アンジェリカ王女の側へすばやく歩み寄った。
ふたりがにこやかに笑みを浮かべあう姿に、私の胸の奥底で、チリッと何かが音を立てたような気がした。
ゆっくりと、まぶたが一往復するほどの合い間だった。
何とも言い表せそうにない感傷を振り払って、現実へと舞い戻った私を迎えたのは、まったく意味合いの異なる三つの視線だった。
私をいたわるようなクレアの視線。
少しさみしげなニルス王子の視線。
そして、鬼のような形相から放たれる、ドラゴンすら逃げ出しそうなシーラの視線だった。
「ニルス殿下、その護衛の手を取っていただけますか?」
シーラは見ているものを惚れ惚れとさせる、慈愛に満ちた笑みをニルス王子に向けた。
ついさっき見せた姿が、幻覚であったかのような変わり身の早さだ。
「母娘水入らずで話したいことがありますので、ニルス殿下はしばらくの間、その護衛とともにここでお待ちください」
はい、シーラ様、と元気よく応えたニルス王子に、にこやかにうなずいたシーラは、私の腕をむんずとつかんだ。
そのまま私を引きずっていこうとしたシーラだったけど、絶対結界がそれを許さなかった。
いついかなる時でも、シーラは敵判定を受けている。
「ハーモニー、私についていらっしゃい」
あくまで、仏のような笑みを浮かべたまま、シーラは部屋の隅を指差した。
そして、足早に歩き出した。
私はクレアに助けを求める視線を送ったが、その救難信号はニルス王子の笑みによってさえぎられた。
そういえば、シーラ様って言ってたよね。
今さらながら、私はシーラと関わったことを後悔しつつ、カツカツと響く靴音を追った。
「ねえ、あんた。また、やってくれたわね。次から次へと、どれだけ問題おこせば気が済むのよ。せっかく、ニルス殿下と話をまとめたと思ったら、今度は王太子様ってどういうことよ。つまりは、あんたは王太子様が好きだったわけ? なに? 王太子様にふられたの? にしては、王太子様もえらくジャマしてくるわね。あんたが人じゃないなんて言ってまで、ニルス殿下との仲を裂こうとしてるわよね。それどころか、たかが子爵家の後継にまで口をはさんでくるなんて、王太子様らしくないわ。ああ、そうか。あんたが王都に出てきたのって、王太子様を追っかけてきたんだ。それでトールのところにいたのね。ふーん、けっこうあんたって一途なんだ。そういえば、ニルス殿下にも黙って出てきてたのよね? ひょっとして、王太子様はあんたとのことがばれると都合でも悪いの? ああ、ハムスターね。ハムスターのせいで別れたの? 王太子様はハムスターにべったりだったからね。それでか。で、今はアンジェリカ王女様もいるしね。あんたの出る幕なんてないわよね」
近くに人がいない部屋の隅っこで、シーラはようやく素に戻った。
怒りよりも好奇心が勝ったのか、シーラにしてはめずらしく、言葉にトゲが感じられない。
生まれ持っての気の短さをフル回転させて、勝手に答えを導き出していく。
私が一言もしゃべっていないのに、話が出来上がっていく。
とめる術はない。
私を呼び出す必要なんてなかったんじゃないの、シーラ?
「はっきり言っとくけど、王太子様は無理よ。王太子様が国王になった後ならともかく、今の時点で婚約者を増やすなんてね。どうせ、小さな子供同士の口約束で将来を誓い合ったとかなんでしょうけど、現実なんてそんなもんよ。あきらめなさい。っていうか、ニルス殿下と婚約できるだけでも幸せじゃない? ただ、ニルス殿下との婚約だって国王陛下を説得できる可能性は低いわよ。ツバはつけとくけど、食べられる保証なんてどこにもないわ。まあ、できるかぎりのことはやってみるけどね」
シーラは軽く肩をすくめた後、私をなぐさめようとでもしたのか、ポンと肩に手を置いた。
敵意がなかったにもかかわらず、絶対結界に弾かれたシーラは皮肉めいた笑みを浮かべた。
「痛いわねー。あんたって何だっていっつも私を弾くのよ。ユリウスなんてあんたに弾かれて泣いてたわよ。ローセンダール公爵家になんか恨みでもあんの? まあ、いいけど。じゃあ、そろそろ行くわよ。午後のパレードが始まるわ」
シーラは私に向けた突き出した顎を、ニルス王子に向けて軽くしゃくった。
私を背後にかばったニルス王子は、愛玩犬のような可愛らしいうなり声とともに、王太子様に牙をむいた。
「うぅーーーー、ハーモニーとふたりっきりで何を話そうというのですか!?」
いやいや、犬じゃないんだからね、ニルス王子。
うなり声はどうかと思うよ。
私はニルス王子をとめようと、クレアの腕の中でくるっと振り返った。
しかし、私がニルス王子に呼びかけるよりも先に、耳がキンキンするほどの高い声が鼓膜を震わせた。
「どうされましたか、王太子様? ハーモニーが何か失礼なことでも? ああ、そういえば、王太子様はハーモニーのことを人ではないとおっしゃったとか? ひょっとして、そのことですか?」
よかった。
シーラだ。
ニルス王子と一緒に来てくれたんだ。
これでひと安心だね、と思った矢先、王太子様はシーラにいぶかしげに問いかけた。
「……シーラは、その……知らないのか? 何も知らずに養女にしているのか?」
「何も知らない、とおっしゃいますと?」
「……その……シーラは、ハーモニー嬢を人だと思っているのか?」
あれだけはっきり言ったのに、いまだに王太子様は私のことを――とムッとしている私のそばで、ニルス王子の、うぅーという声が大きくなった。
知らないよ。
ニルス王子までこんなに怒らせて。
噛みつかれるよ。
「ええ、もちろんですわ。精霊に乗れるのも、魔族の武器を扱えるのも、結界を身にまとっているからだと考えております。大天使の加護を持つ王太子様であれば、わかっていただけますわよね?」
「……つまり……知らない、と……」
王太子様はシーラの営業スマイルに微笑み返すこともなく、ただ自分の考えにうなずくかのようにうなずいた。
「では、どういった経緯でハーモニー嬢を養女としたんだい?」
「この子はまちがいなく大陸一の精霊術師です。私の後継ぎにと考えております」
「後継ぎ!? そんなバカな!? そんなことが認められるわけが――」
空色の目を大きく見開いて鋭い声を発した王太子様に、ニルス王子が噛みついた。
「兄上に認めてもらう必要などありません! 父上に認めていただきます!」
「ニルスには関係ないだろう。私はシーラと話をしているんだ」
「いえ、関係があります。私はハーモニーの婚約者になるのです。いずれ、シーラ様は私の母上となられます」
「……どういうことだ、シーラ?」
眉間を指でギュッと押さえながら、不機嫌な声を出した王太子様に、シーラは満面の笑みを浮かべて応えた。
「たしかにハーモニーは人ならざる力を持っておりますが、その力は神から与えられたものです。王太子様の持っておられる大天使の加護も、そうでございましょう? 王太子様のお力はティトラン王国に繁栄をもたらすでしょう。そのお手伝いのために、私はハーモニーをモランデル家の後継ぎにと考えているのです」
「いや、そのことではない。ニルスの婚約の話だ」
「では、ハーモニーがモランデル家の後継ぎにふさわしいことは、おわかりいただけたでしょうか?」
「……そう……だな。私が口をはさむべき問題ではなかったな」
「おわかりいただけてよかったですわ」
「で、ニルスの件は?」
「その件につきましては、話を詰めたうえでお伝えします」
「いやいや、詰めてからでは遅いだろう」
「いえ、不確かな話を王太子様にお伝えするわけにはまいりませんわ」
「君はどうなんだ? ニルスと婚約するつもりなのか?」
一歩も引かない構えのシーラに、王太子様は矛先を私に変えたようだ。
だけど、その視線は不機嫌なうなり声をあげ続けるニルス王子によってはばまれた。
「うぅー、私の婚約に兄上が口をはさむのも問題ではありませんか?」
「何もわかっていないニルスこそ、口をはさまないでくれないか?」
「うぅー、私にはわかっております、兄上」
「何をわかっているというんだ?」
いらだちを必死で抑えるかのように、眉間を揉みながら低い声を発した王太子様に向かって、ニルス王子は、ひゅーぅーっと大きく息を吸い込んだ。
そして、叩きつけるように吐き出した。
「あれほどまでに兄上のことを慕っていたハーモニーを、兄上は悲しませたのです! でなければ、なぜ、ハーモニーはこんなところにいるのですか!?」
精霊への感謝を捧げるために、四大精霊の四つの色を散りばめて造られた精霊宮殿。
精霊祭のために集まった術師たちが、にこやかに談笑している控えの間の隅々にまで、ニルス王子の声変わりをしていないボーイソプラノが響き渡る。
ええっ!?
ダメだよね、ニルス王子。
慕ってたとか言っちゃダメだよね。
それに、やっぱり勘違いしてるよね。
私は大慌てで、ニルス王子を引き寄せ、その口を手でふさいだ。
王太子様やシーラだけではなく、控えの間全体が水を打ったようにしーんと静まりかえる。
そこにいた誰もが、私たちに目をみはり、耳をピーンとそばだてている中で、王太子様がふわっと体を揺らした。
「アンジェリカ王女様がお見えです」
王太子様が何か言おうとした直前に、クレアが大きく声を張った。
私たちに向けられていた視線が、一斉に入口へと殺到し、アンジェリカ王女はたおやかな笑みを浮かべた。
さすがは王女様。
一身に集めた視線をものともせず、まとった気品をにじませながら、王太子様に近づいてくる。
王太子様もなんとか笑みを取り繕い、アンジェリカ王女の側へすばやく歩み寄った。
ふたりがにこやかに笑みを浮かべあう姿に、私の胸の奥底で、チリッと何かが音を立てたような気がした。
ゆっくりと、まぶたが一往復するほどの合い間だった。
何とも言い表せそうにない感傷を振り払って、現実へと舞い戻った私を迎えたのは、まったく意味合いの異なる三つの視線だった。
私をいたわるようなクレアの視線。
少しさみしげなニルス王子の視線。
そして、鬼のような形相から放たれる、ドラゴンすら逃げ出しそうなシーラの視線だった。
「ニルス殿下、その護衛の手を取っていただけますか?」
シーラは見ているものを惚れ惚れとさせる、慈愛に満ちた笑みをニルス王子に向けた。
ついさっき見せた姿が、幻覚であったかのような変わり身の早さだ。
「母娘水入らずで話したいことがありますので、ニルス殿下はしばらくの間、その護衛とともにここでお待ちください」
はい、シーラ様、と元気よく応えたニルス王子に、にこやかにうなずいたシーラは、私の腕をむんずとつかんだ。
そのまま私を引きずっていこうとしたシーラだったけど、絶対結界がそれを許さなかった。
いついかなる時でも、シーラは敵判定を受けている。
「ハーモニー、私についていらっしゃい」
あくまで、仏のような笑みを浮かべたまま、シーラは部屋の隅を指差した。
そして、足早に歩き出した。
私はクレアに助けを求める視線を送ったが、その救難信号はニルス王子の笑みによってさえぎられた。
そういえば、シーラ様って言ってたよね。
今さらながら、私はシーラと関わったことを後悔しつつ、カツカツと響く靴音を追った。
「ねえ、あんた。また、やってくれたわね。次から次へと、どれだけ問題おこせば気が済むのよ。せっかく、ニルス殿下と話をまとめたと思ったら、今度は王太子様ってどういうことよ。つまりは、あんたは王太子様が好きだったわけ? なに? 王太子様にふられたの? にしては、王太子様もえらくジャマしてくるわね。あんたが人じゃないなんて言ってまで、ニルス殿下との仲を裂こうとしてるわよね。それどころか、たかが子爵家の後継にまで口をはさんでくるなんて、王太子様らしくないわ。ああ、そうか。あんたが王都に出てきたのって、王太子様を追っかけてきたんだ。それでトールのところにいたのね。ふーん、けっこうあんたって一途なんだ。そういえば、ニルス殿下にも黙って出てきてたのよね? ひょっとして、王太子様はあんたとのことがばれると都合でも悪いの? ああ、ハムスターね。ハムスターのせいで別れたの? 王太子様はハムスターにべったりだったからね。それでか。で、今はアンジェリカ王女様もいるしね。あんたの出る幕なんてないわよね」
近くに人がいない部屋の隅っこで、シーラはようやく素に戻った。
怒りよりも好奇心が勝ったのか、シーラにしてはめずらしく、言葉にトゲが感じられない。
生まれ持っての気の短さをフル回転させて、勝手に答えを導き出していく。
私が一言もしゃべっていないのに、話が出来上がっていく。
とめる術はない。
私を呼び出す必要なんてなかったんじゃないの、シーラ?
「はっきり言っとくけど、王太子様は無理よ。王太子様が国王になった後ならともかく、今の時点で婚約者を増やすなんてね。どうせ、小さな子供同士の口約束で将来を誓い合ったとかなんでしょうけど、現実なんてそんなもんよ。あきらめなさい。っていうか、ニルス殿下と婚約できるだけでも幸せじゃない? ただ、ニルス殿下との婚約だって国王陛下を説得できる可能性は低いわよ。ツバはつけとくけど、食べられる保証なんてどこにもないわ。まあ、できるかぎりのことはやってみるけどね」
シーラは軽く肩をすくめた後、私をなぐさめようとでもしたのか、ポンと肩に手を置いた。
敵意がなかったにもかかわらず、絶対結界に弾かれたシーラは皮肉めいた笑みを浮かべた。
「痛いわねー。あんたって何だっていっつも私を弾くのよ。ユリウスなんてあんたに弾かれて泣いてたわよ。ローセンダール公爵家になんか恨みでもあんの? まあ、いいけど。じゃあ、そろそろ行くわよ。午後のパレードが始まるわ」
シーラは私に向けた突き出した顎を、ニルス王子に向けて軽くしゃくった。
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