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第1章 学園編
第27話 クラスメイト
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「えー、まずは入学おめでとうございます。本学園の基本理念ですが、初めに――」
長い長い……永遠に続くかと思われた、新入生を歓迎する挨拶も終わり、僕たちは教室へと向かった。
まだ、誰も使っていない教室からは、ほのかに木の香りが漂い、床はワックスをかけたばかりなのかピカピカだ。
だだっ広い教室に、当たり前だが並ぶ机は三つだけである。
パートナーと共に座れるよう長机になってはいるが、それでも寂しい光景だった。
「ねぇねぇ、リョウくんのパートナーって、狐だよね? モフってもいい!?」
「断る」
……たった三人しかいないクラスで、自分だけが話の輪に入っていけない時ほど、居心地の悪いことはない。
そして仲のいい友人が、自分が苦手としている人と楽しそうに話している所を見るのも、精神上非常によろしくない。
僕は特にすることもなく、ただ黙って自分の席に座っていた。
話し相手もいない……席に座り視界を遮断しても、耳だけは敏感にその声を拾い続けて。
……別に、話しにいけないという訳ではない。ただ、向こうから話しかけるなと、明確に拒否されたのだ。
そんなことをされては、こちらから行動など、出来る訳がないだろう。
「――ね、レイズくんもそう思わない?」
「え? ……あ、あぁ。そうだね……」
モゴモゴと、曖昧な返事しか返すことが出来ない。
そうか、ルイナはあの時あの場所にいなかったから、僕と彼の関係を知らないままなのか。
彼……確か、ルイナはリョウと呼んでいたっけか。
名前……今、初めて知った。きっと向こうも、僕の名前を初めて知ったに違いない。
いや、元々関わる気が向こうにはないのだ。これから先、名前を呼ばれることもないだろうし、僕も彼の名前を呼ぶことはないだろう。
――すると突然、ガラガラッと音を立ててドアが開かれる。最初、担任となる教師が来たのかと思ったが、違った。
「……入学式には、間に合わなかったか」
「メア!!」
随分、急いで帰って来たのだろう。しまい忘れている翼が、それを物語っていた。
メアの姿を見ただけで、こんなにも安心するだなんて……よっぽど、追いこまれていたのだと思う。
これで来ていたのが母親だったら、泣いていたかもしれない。
「主の晴れ舞台、見たかったのだが……」
「全然いいよ、そんなの! それより――」
「君が、あの災厄のドラゴンか。人間に化けるのが上手いね。しっぽと翼がなければ、見分けるのは不可能だろう」
メアはそれを聞いて初めて気づいたのか、翼をしまった。
僕の話を遮って話しかけてきたのは、彼……リョウだった。
「主、あの馴れ馴れしく話しかけてきた男は、一体誰だ?」
「えっと……」
僕とは話をしないが、メアとはするのか。まあ、予想はしていたが。
煮え切らない僕の返答に、メアは少し怪訝そうな表情を見せる。何か、感じるものがあったのか。
「すごいね。僕らがあのくだらない挨拶を聞いている間に、君は星の裏側で都市を一つ壊滅か」
「えー! メアちゃん、そんなことやっていたの!?」
MFCを操作し、最新のニュース情報を見るリョウ。災厄のドラゴンが、再び現れたのだ。世間は、それはもう大騒ぎであろう。
「私は、私の役目を全うしただけだ。何の文句があるというのだ」
「文句なんてないよ。ただ、その強さを最大限に引き出せるトレーナーは、もっと他にいたと思うよ」
「……どういう意味だ?」
完全に蚊帳の外にいる僕にも伝わってくる、険悪な雰囲気。ルイナもそれを感じているのか、ユキちゃんを抱いて距離を置いている。
「メ、メア……もういいよ。戻ってきて」
いつもなら、二つ返事で僕の元へと帰ってくるメアだったが、今日は違った。
僕の命令も聞かず、真っ直ぐとリョウのいる机へと向かう。
「どういう意味って、そのままの意味だよ。あれよりマシなトレーナーなんて、この世に五万といる」
あれ呼ばわり……僕のことだよね、うん。
「私の主は、主だけだ。主への侮辱は、私の侮辱と捉えるが?」
「敵を前に何の指示も出さないような奴、よく主だなんて呼べるね。はっきり言うけど、あれがトレーナーとして居座り続ける限り、俺は負ける気がしないね。災厄のドラゴンにだって、絶対に負けない」
リョウがそう言った瞬間、ボキッとも、バキッとも違う、物凄い音が響いたかと思うと、机が粉々に割れてしまっていた。
「メア!!」
慌ててメアを引き離すが、当の本人はキョトンとしていて、まるで怒っている風ではない。
「あれ、私は……」
「ふふ、まさしく逆鱗に触れちゃったかな? まあいい。今日の放課後、僕と勝負しよう。それではっきりするさ。災厄のドラゴンを倒したという実績も、欲しいしね」
「いや、それは……」
「いいだろう。私が、負けるはずがない。負けた時の言い訳でも考えておくんだな」
……僕の意見は無視ですか……。
長い長い……永遠に続くかと思われた、新入生を歓迎する挨拶も終わり、僕たちは教室へと向かった。
まだ、誰も使っていない教室からは、ほのかに木の香りが漂い、床はワックスをかけたばかりなのかピカピカだ。
だだっ広い教室に、当たり前だが並ぶ机は三つだけである。
パートナーと共に座れるよう長机になってはいるが、それでも寂しい光景だった。
「ねぇねぇ、リョウくんのパートナーって、狐だよね? モフってもいい!?」
「断る」
……たった三人しかいないクラスで、自分だけが話の輪に入っていけない時ほど、居心地の悪いことはない。
そして仲のいい友人が、自分が苦手としている人と楽しそうに話している所を見るのも、精神上非常によろしくない。
僕は特にすることもなく、ただ黙って自分の席に座っていた。
話し相手もいない……席に座り視界を遮断しても、耳だけは敏感にその声を拾い続けて。
……別に、話しにいけないという訳ではない。ただ、向こうから話しかけるなと、明確に拒否されたのだ。
そんなことをされては、こちらから行動など、出来る訳がないだろう。
「――ね、レイズくんもそう思わない?」
「え? ……あ、あぁ。そうだね……」
モゴモゴと、曖昧な返事しか返すことが出来ない。
そうか、ルイナはあの時あの場所にいなかったから、僕と彼の関係を知らないままなのか。
彼……確か、ルイナはリョウと呼んでいたっけか。
名前……今、初めて知った。きっと向こうも、僕の名前を初めて知ったに違いない。
いや、元々関わる気が向こうにはないのだ。これから先、名前を呼ばれることもないだろうし、僕も彼の名前を呼ぶことはないだろう。
――すると突然、ガラガラッと音を立ててドアが開かれる。最初、担任となる教師が来たのかと思ったが、違った。
「……入学式には、間に合わなかったか」
「メア!!」
随分、急いで帰って来たのだろう。しまい忘れている翼が、それを物語っていた。
メアの姿を見ただけで、こんなにも安心するだなんて……よっぽど、追いこまれていたのだと思う。
これで来ていたのが母親だったら、泣いていたかもしれない。
「主の晴れ舞台、見たかったのだが……」
「全然いいよ、そんなの! それより――」
「君が、あの災厄のドラゴンか。人間に化けるのが上手いね。しっぽと翼がなければ、見分けるのは不可能だろう」
メアはそれを聞いて初めて気づいたのか、翼をしまった。
僕の話を遮って話しかけてきたのは、彼……リョウだった。
「主、あの馴れ馴れしく話しかけてきた男は、一体誰だ?」
「えっと……」
僕とは話をしないが、メアとはするのか。まあ、予想はしていたが。
煮え切らない僕の返答に、メアは少し怪訝そうな表情を見せる。何か、感じるものがあったのか。
「すごいね。僕らがあのくだらない挨拶を聞いている間に、君は星の裏側で都市を一つ壊滅か」
「えー! メアちゃん、そんなことやっていたの!?」
MFCを操作し、最新のニュース情報を見るリョウ。災厄のドラゴンが、再び現れたのだ。世間は、それはもう大騒ぎであろう。
「私は、私の役目を全うしただけだ。何の文句があるというのだ」
「文句なんてないよ。ただ、その強さを最大限に引き出せるトレーナーは、もっと他にいたと思うよ」
「……どういう意味だ?」
完全に蚊帳の外にいる僕にも伝わってくる、険悪な雰囲気。ルイナもそれを感じているのか、ユキちゃんを抱いて距離を置いている。
「メ、メア……もういいよ。戻ってきて」
いつもなら、二つ返事で僕の元へと帰ってくるメアだったが、今日は違った。
僕の命令も聞かず、真っ直ぐとリョウのいる机へと向かう。
「どういう意味って、そのままの意味だよ。あれよりマシなトレーナーなんて、この世に五万といる」
あれ呼ばわり……僕のことだよね、うん。
「私の主は、主だけだ。主への侮辱は、私の侮辱と捉えるが?」
「敵を前に何の指示も出さないような奴、よく主だなんて呼べるね。はっきり言うけど、あれがトレーナーとして居座り続ける限り、俺は負ける気がしないね。災厄のドラゴンにだって、絶対に負けない」
リョウがそう言った瞬間、ボキッとも、バキッとも違う、物凄い音が響いたかと思うと、机が粉々に割れてしまっていた。
「メア!!」
慌ててメアを引き離すが、当の本人はキョトンとしていて、まるで怒っている風ではない。
「あれ、私は……」
「ふふ、まさしく逆鱗に触れちゃったかな? まあいい。今日の放課後、僕と勝負しよう。それではっきりするさ。災厄のドラゴンを倒したという実績も、欲しいしね」
「いや、それは……」
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