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第1章 学園編
第33話 休日
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「うん、やっぱり休日ぐらいは、外に出なくちゃね。今日がいい天気で、本当によかったよ」
普通に生活を送るだけなら、学園にいるだけで事足りていた訳で、だからこそこうして街に出たのは随分と久しぶりのように感じられた。
最後に街に出たのは……学園に、入学する前か。その時も、メアが隣にいたっけな。
あの時と今とでは、もう丸っきり、メアに対する感情が別のものに変化している。
思えばあの時も、災厄のドラゴンだということにビビり散らかしていたとはいえ、随分と適当な接し方をしてしまっていた……。
「――さ! 久しぶりの街なんだ、楽しまないと。まずは、どこに行って――」
「主、少しいいか」
今までの分、今日はめいっぱい楽しませよう。そう意気込む僕を遮って、メアは言った。
「どうして今日、遊ぶなんてことになったんだ。いつもの主なら、休みの日こそ勉強を……」
「ん……まぁ、たまにはいいじゃん、ね。ほら、メアだって楽しみでしょ?」
「……あいつに、負けたと認めるのか。それで、もう諦めたのか。もしそうなら、私は帰るぞ」
元々、人間の娯楽にしか興味がなかったメアが、何にも興味を示さず帰ろうとしている。
以前なら、考えられなかったことだ。
それほど、負けたのが悔しかった……いや、本気で勝負に臨んでいたのだろう。
彼女もまた、変わってきている。変わろうとしている。
だからこそ、僕も誤魔化すことはせずに、正面から言った。
「諦めてないよ。絶対に、リベンジする。だからこれは、そのために必要なことなんだ」
そう。ただ、遊びに来た訳ではない。僕なりに、考えがあってのことだ。
「……分かった」
しばらく考えこんでいたメアだったが、最終的に僕を信じてくれたのだろう。
今日を遊んで過ごすことに、同意してくれた。
「それで、主は何をするのだ? どこに行こうとしている?」
途端、目をキラキラと輝かせたメアが、あっちこっち小走りに駆け回りながら、もう我慢が出来ないといった様子で、僕が喋るのを待っていた。
よほど、人の娯楽というものに飢えていたらしい。まぁ、僕自身やらせていたものが、食事とゲームだけだったのだから、当たり前なのだが。
「今日はね……特に、目的は決めてない! ただ何となく、街をブラブラする!」
「ま、街をブラブラする……!」
「それで、気になった所を回って、何やかんやする!」
「き、気になった所……どこでもいいのか……!」
楽しみ、興奮、困惑……色々な感情で顔を真っ赤にしながら、キョロキョロとメアは忙しく辺りを見回す。
こうして見ると、本当に感情が豊かになったなと、改めて実感する。
「主! 主! あっちにあるアレ! あそこにいこう!」
「分かった、分かったから! そんなに急ぐと危ないよ?」
メアは僕の腕をグイグイと引っ張りながら、まだ何もしていないというのに、喜びの絶頂にいるようだった。
そうして、メアに手を引かれるままにたどり着いたのは、一店のケーキ屋だった。
また食べ物かとは思ったが、それをあえて口に出すようなことはしない。
まだまだ、散策は始まったばかりだ。それに今日は、メアの好きなようにさせると決めている。
「美味しそうだね。メアはどれが食べたいの?」
「……本当は、一日一つなのだが……」
モジモジと言いにくそうにしているメアに、思わず吹き出しそうになる。
「いいよ、今日は特別だ。好きなもの頼みなよ」
「……! いいのか?」
「うん。でも、太っちゃうからね。多くても……三つまでかな」
「三つも……? いいのか? そんなに、頼んで」
色とりどりのカラフルなケーキに、メアはすっかり目が釘付けになっている。
食事だけ……というか、食べることがもう生きがいみたいになっていないか?
「この紅茶、草の香りで甘いケーキとよく合うな……」
「草じゃなくてハーブティーね。それより、次はどこに行こうか? 学園じゃあ体験出来ないようなことだって、ここなら何でも出来るよ」
「ふむ、それじゃあ――」
次にメアが目をつけたのは、ビカビカと昼間でも一際目を引く装飾の……所謂、ゲームセンターであった。
「賑やかな建物だ。ここに入ってみたい」
「う、うん……」
ゲーム……も、寮でやっているからなぁ。一日一時間という制限付きだけど。
いやでも、家庭内ゲームと、こういうアーケードゲームって、案外全然別物だったりするしな……。
とりあえず、入ってみることにする。ここで、やっぱり辞めようだなんて言えるはずがなかった。
いざ、入店。ドアが開いた瞬間、外の静寂が嘘のような爆音に包まれる。
「こういう所、僕もほとんど初めてみたいなものなんだよね……」
定番の人形をキャッチするゲームに、レースゲーム……もっと奥の方に行くと、格闘ゲームやもう見た目じゃ何なのか分からない、常連向けのゲームがずらりと並ぶ。
何だろう……単純に、慣れていないからなのか、ものすごい場違い感がある。
「主、主。あれをやってみたいんだが、いいだろうか?」
「あ、どれ? 何がやりたいの?」
僕自身が緊張していた分、メアの声にすごく救われた感がある。
全く、これじゃあどっちが楽しませる側か、分かったもんじゃないな。
メアがやりたがっていたのは、巨大な画面に銃の形をしたコントローラー……シューティングゲームというやつだ。
「いつものテレビ画面より、何倍も大きい……大迫力だ」
なるほど……普段ゲームなんてしないから気づかなかったが、そういった楽しみ方もあるのか。
ゲーム好きなメアだからこそ、これはむしろ新鮮なのかもしれない。さてそれじゃあ、僕はメアが遊び終わるのを待って……。
「ほら、主の分だ」
……? 僕の分?
よく見ると、銃は二つある。と、いうことは……。
「あ! あ! 右! いや左! やっぱ右!?」
「主、落ち着け。二人なんだから、分担してやればいいんだ」
メアが多分、アドバイスっぽいことを言ってくれているが、全く頭に入ってこない。
結局、何の見せ場もないプレイをした上にムキになってクリアまでお金を突っこんでしまった。
達成感というよりも、虚しさの方が凄まじい。
「……ゲームは、主よりも私の方が上みたいだな」
「う……」
何故だろう。ゲームに関しては初心者なのだから、悔しくなんてないはずなのに、ちょっとだけ悔しい。
後でこっそり練習しよう。それで次は勝とう。
ひっそりとリベンジに燃える中、メアは再び僕の手を取って歩き出す。
「主、次はあれをやろう」
「次? 僕、もう目が疲れて……」
そこにあったのは、ゲームセンターという音と人にまみれた空間の中で、唯一閉鎖的な場所を作り出している……。
プリクラ、というやつである。写真を撮ると、それがシールになってプリントされるあの……。
「今日の思い出だ。いいだろう?」
思い出……確かに、こうして今日のことを形として残せるのは、いいかもしれない。
しかし……何というか……こう、プリクラというのは……いや、これは写真全般にも言えることなのだが……。
二人で写ろうとすると、距離が近くなり過ぎやしないだろうか。
何だこの距離感は。頬と頬がくっついてしまいそうだが、メアは何とも思わないのだろうか。うん、何とも思っていなさそうだな。
しかも、ポーズを決めろと言った後のカウントダウンが異様に短い。何枚も撮った割には、片手ピースか両手ピースの二種類のポーズしか出来なかった。
「次はラクガキ……って、何を描けばいいんだ……? 名前……?」
「今日食べたケーキの絵を描こう。イチゴとぶどうとメロンが乗っていたやつ」
ぎこちない笑顔でピースする僕の目の前に描かれた、特大ケーキ。
意味不明すぎるシールがプリントされたが、思い出作りとしては、ある意味大成功かもしれない。
きっとこの写真を見る度に、今日あったことを鮮明に思い出すだろうから。
「うむ、いい出来だ……」
メアも満足そうで、何よりだ。
「今日は楽しかった。感謝するぞ、主」
結局、食べてゲームして……やったことはいつもと変わらなかったが、それでもメアは満足そうだった。
本当は、もっと普段行かないような所を回る予定だったのだが、まぁ本人が楽しめたのなら、それに越したことはない。
「僕も、楽しかったよ。また今度、こうして遊ぼう」
「また行けるのか? 今度……楽しみだ」
よほど楽しかったのか、メアは次いつになるかも分からない、街への遠出にワクワクが抑えきれない様子である。
……こうしていると、本物の人間のように錯覚してしまう。ドラゴンであることを、忘れてしまいそうになる。
だが、それでいいのかもしれない。
相手はドラゴンだ、災厄のドラゴンだと気を張って、距離を置いていたあの時よりかはずっといい。
リョウとの試合で、嫌というほど思い知らされた。
どんなにメアが強くとも、その強さを活かせなければ勝てるものも勝てないと。
指示を出す者、実際に戦う者、お互いが信頼出来て初めて、実力が発揮出来るのだと。
今日という日は、その第一歩だ。たった一日だけで、絶対的な信頼感を得られるとは、僕も思っていない。
ただ、今日をきっかけに、少しでもメアと距離を縮められたら……そうすれば、試合中に指示も出せずに棒立ちになるという事態も、防げると思うのだ。
「それにしても……この写真、まるでメアがお姫様みたいだ」
真っ黒で、フリフリのドレス。可愛らしいが、男の僕からして見れば、少し動きにくそうにも見える。
「動きにくい……うん? そうだ……そうだよ!」
「……? どうした、主?」
「ねぇ、メア! ドラゴンって、自由に姿を変えられるんだっけ?」
「姿? 普通のドラゴンなら、そう簡単にはいかないだろうが……私なら、どんな姿にでもなれるぞ。何せ、私は特別だからな」
誇らしげに話すメア。そうか……どんな姿にでも……。
そこに僕は、一筋の勝機を見出していた。
「あのさメア、その姿について、もう少し詳しく聞きたいんだけど……」
「もちろんいいぞ。ま、私に出来ないことはないから、質問というよりは、ほとんど確認になってしまうだろうけどな」
メアの言った通り、僕が聞いたことは全て実現可能なことが、確認出来た。
そしてその情報を元に、僕は近いうちにリョウへリベンジを申し出ることになる。
が、それはまだ少し先のこと。
今はまだ、楽しもう。貴重な休日である今日という日を。
普通に生活を送るだけなら、学園にいるだけで事足りていた訳で、だからこそこうして街に出たのは随分と久しぶりのように感じられた。
最後に街に出たのは……学園に、入学する前か。その時も、メアが隣にいたっけな。
あの時と今とでは、もう丸っきり、メアに対する感情が別のものに変化している。
思えばあの時も、災厄のドラゴンだということにビビり散らかしていたとはいえ、随分と適当な接し方をしてしまっていた……。
「――さ! 久しぶりの街なんだ、楽しまないと。まずは、どこに行って――」
「主、少しいいか」
今までの分、今日はめいっぱい楽しませよう。そう意気込む僕を遮って、メアは言った。
「どうして今日、遊ぶなんてことになったんだ。いつもの主なら、休みの日こそ勉強を……」
「ん……まぁ、たまにはいいじゃん、ね。ほら、メアだって楽しみでしょ?」
「……あいつに、負けたと認めるのか。それで、もう諦めたのか。もしそうなら、私は帰るぞ」
元々、人間の娯楽にしか興味がなかったメアが、何にも興味を示さず帰ろうとしている。
以前なら、考えられなかったことだ。
それほど、負けたのが悔しかった……いや、本気で勝負に臨んでいたのだろう。
彼女もまた、変わってきている。変わろうとしている。
だからこそ、僕も誤魔化すことはせずに、正面から言った。
「諦めてないよ。絶対に、リベンジする。だからこれは、そのために必要なことなんだ」
そう。ただ、遊びに来た訳ではない。僕なりに、考えがあってのことだ。
「……分かった」
しばらく考えこんでいたメアだったが、最終的に僕を信じてくれたのだろう。
今日を遊んで過ごすことに、同意してくれた。
「それで、主は何をするのだ? どこに行こうとしている?」
途端、目をキラキラと輝かせたメアが、あっちこっち小走りに駆け回りながら、もう我慢が出来ないといった様子で、僕が喋るのを待っていた。
よほど、人の娯楽というものに飢えていたらしい。まぁ、僕自身やらせていたものが、食事とゲームだけだったのだから、当たり前なのだが。
「今日はね……特に、目的は決めてない! ただ何となく、街をブラブラする!」
「ま、街をブラブラする……!」
「それで、気になった所を回って、何やかんやする!」
「き、気になった所……どこでもいいのか……!」
楽しみ、興奮、困惑……色々な感情で顔を真っ赤にしながら、キョロキョロとメアは忙しく辺りを見回す。
こうして見ると、本当に感情が豊かになったなと、改めて実感する。
「主! 主! あっちにあるアレ! あそこにいこう!」
「分かった、分かったから! そんなに急ぐと危ないよ?」
メアは僕の腕をグイグイと引っ張りながら、まだ何もしていないというのに、喜びの絶頂にいるようだった。
そうして、メアに手を引かれるままにたどり着いたのは、一店のケーキ屋だった。
また食べ物かとは思ったが、それをあえて口に出すようなことはしない。
まだまだ、散策は始まったばかりだ。それに今日は、メアの好きなようにさせると決めている。
「美味しそうだね。メアはどれが食べたいの?」
「……本当は、一日一つなのだが……」
モジモジと言いにくそうにしているメアに、思わず吹き出しそうになる。
「いいよ、今日は特別だ。好きなもの頼みなよ」
「……! いいのか?」
「うん。でも、太っちゃうからね。多くても……三つまでかな」
「三つも……? いいのか? そんなに、頼んで」
色とりどりのカラフルなケーキに、メアはすっかり目が釘付けになっている。
食事だけ……というか、食べることがもう生きがいみたいになっていないか?
「この紅茶、草の香りで甘いケーキとよく合うな……」
「草じゃなくてハーブティーね。それより、次はどこに行こうか? 学園じゃあ体験出来ないようなことだって、ここなら何でも出来るよ」
「ふむ、それじゃあ――」
次にメアが目をつけたのは、ビカビカと昼間でも一際目を引く装飾の……所謂、ゲームセンターであった。
「賑やかな建物だ。ここに入ってみたい」
「う、うん……」
ゲーム……も、寮でやっているからなぁ。一日一時間という制限付きだけど。
いやでも、家庭内ゲームと、こういうアーケードゲームって、案外全然別物だったりするしな……。
とりあえず、入ってみることにする。ここで、やっぱり辞めようだなんて言えるはずがなかった。
いざ、入店。ドアが開いた瞬間、外の静寂が嘘のような爆音に包まれる。
「こういう所、僕もほとんど初めてみたいなものなんだよね……」
定番の人形をキャッチするゲームに、レースゲーム……もっと奥の方に行くと、格闘ゲームやもう見た目じゃ何なのか分からない、常連向けのゲームがずらりと並ぶ。
何だろう……単純に、慣れていないからなのか、ものすごい場違い感がある。
「主、主。あれをやってみたいんだが、いいだろうか?」
「あ、どれ? 何がやりたいの?」
僕自身が緊張していた分、メアの声にすごく救われた感がある。
全く、これじゃあどっちが楽しませる側か、分かったもんじゃないな。
メアがやりたがっていたのは、巨大な画面に銃の形をしたコントローラー……シューティングゲームというやつだ。
「いつものテレビ画面より、何倍も大きい……大迫力だ」
なるほど……普段ゲームなんてしないから気づかなかったが、そういった楽しみ方もあるのか。
ゲーム好きなメアだからこそ、これはむしろ新鮮なのかもしれない。さてそれじゃあ、僕はメアが遊び終わるのを待って……。
「ほら、主の分だ」
……? 僕の分?
よく見ると、銃は二つある。と、いうことは……。
「あ! あ! 右! いや左! やっぱ右!?」
「主、落ち着け。二人なんだから、分担してやればいいんだ」
メアが多分、アドバイスっぽいことを言ってくれているが、全く頭に入ってこない。
結局、何の見せ場もないプレイをした上にムキになってクリアまでお金を突っこんでしまった。
達成感というよりも、虚しさの方が凄まじい。
「……ゲームは、主よりも私の方が上みたいだな」
「う……」
何故だろう。ゲームに関しては初心者なのだから、悔しくなんてないはずなのに、ちょっとだけ悔しい。
後でこっそり練習しよう。それで次は勝とう。
ひっそりとリベンジに燃える中、メアは再び僕の手を取って歩き出す。
「主、次はあれをやろう」
「次? 僕、もう目が疲れて……」
そこにあったのは、ゲームセンターという音と人にまみれた空間の中で、唯一閉鎖的な場所を作り出している……。
プリクラ、というやつである。写真を撮ると、それがシールになってプリントされるあの……。
「今日の思い出だ。いいだろう?」
思い出……確かに、こうして今日のことを形として残せるのは、いいかもしれない。
しかし……何というか……こう、プリクラというのは……いや、これは写真全般にも言えることなのだが……。
二人で写ろうとすると、距離が近くなり過ぎやしないだろうか。
何だこの距離感は。頬と頬がくっついてしまいそうだが、メアは何とも思わないのだろうか。うん、何とも思っていなさそうだな。
しかも、ポーズを決めろと言った後のカウントダウンが異様に短い。何枚も撮った割には、片手ピースか両手ピースの二種類のポーズしか出来なかった。
「次はラクガキ……って、何を描けばいいんだ……? 名前……?」
「今日食べたケーキの絵を描こう。イチゴとぶどうとメロンが乗っていたやつ」
ぎこちない笑顔でピースする僕の目の前に描かれた、特大ケーキ。
意味不明すぎるシールがプリントされたが、思い出作りとしては、ある意味大成功かもしれない。
きっとこの写真を見る度に、今日あったことを鮮明に思い出すだろうから。
「うむ、いい出来だ……」
メアも満足そうで、何よりだ。
「今日は楽しかった。感謝するぞ、主」
結局、食べてゲームして……やったことはいつもと変わらなかったが、それでもメアは満足そうだった。
本当は、もっと普段行かないような所を回る予定だったのだが、まぁ本人が楽しめたのなら、それに越したことはない。
「僕も、楽しかったよ。また今度、こうして遊ぼう」
「また行けるのか? 今度……楽しみだ」
よほど楽しかったのか、メアは次いつになるかも分からない、街への遠出にワクワクが抑えきれない様子である。
……こうしていると、本物の人間のように錯覚してしまう。ドラゴンであることを、忘れてしまいそうになる。
だが、それでいいのかもしれない。
相手はドラゴンだ、災厄のドラゴンだと気を張って、距離を置いていたあの時よりかはずっといい。
リョウとの試合で、嫌というほど思い知らされた。
どんなにメアが強くとも、その強さを活かせなければ勝てるものも勝てないと。
指示を出す者、実際に戦う者、お互いが信頼出来て初めて、実力が発揮出来るのだと。
今日という日は、その第一歩だ。たった一日だけで、絶対的な信頼感を得られるとは、僕も思っていない。
ただ、今日をきっかけに、少しでもメアと距離を縮められたら……そうすれば、試合中に指示も出せずに棒立ちになるという事態も、防げると思うのだ。
「それにしても……この写真、まるでメアがお姫様みたいだ」
真っ黒で、フリフリのドレス。可愛らしいが、男の僕からして見れば、少し動きにくそうにも見える。
「動きにくい……うん? そうだ……そうだよ!」
「……? どうした、主?」
「ねぇ、メア! ドラゴンって、自由に姿を変えられるんだっけ?」
「姿? 普通のドラゴンなら、そう簡単にはいかないだろうが……私なら、どんな姿にでもなれるぞ。何せ、私は特別だからな」
誇らしげに話すメア。そうか……どんな姿にでも……。
そこに僕は、一筋の勝機を見出していた。
「あのさメア、その姿について、もう少し詳しく聞きたいんだけど……」
「もちろんいいぞ。ま、私に出来ないことはないから、質問というよりは、ほとんど確認になってしまうだろうけどな」
メアの言った通り、僕が聞いたことは全て実現可能なことが、確認出来た。
そしてその情報を元に、僕は近いうちにリョウへリベンジを申し出ることになる。
が、それはまだ少し先のこと。
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