訳あり幼女に声をかけたら最強のドラゴンだった

Luculia

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第1章 学園編

第35話 長期休み

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 リョウとの試合を終えて……そこからの毎日は、呆気ないくらいまでの日常で、それは目まぐるしく過ぎ去っていった。
 別段変わらない……強いて言えば、リョウとの会話のやり取りが増えたことくらいである。
 メアのことは……まだ、聞けずにいた。
 メアが人の姿になっている時の、あの女の子は一体誰なのか。何度も聞こうとしたのだが、その度に躊躇ってしまう。
 聞いて答えてくれるのなら、とっくの昔に自分から話しているはずだ。それが、今の今まで黙ったままでいる。
 きっと、何か理由があるに違いない。そんなデリケートな所に、ズケズケと入りこんでいけるほど、僕は図々しくなかった。
 それに……話したくないことがあるのは、僕だって同じだ。だから、待とう。そう思った。
 メアが、話してもいいと思える日まで、そして僕も、話したいと思う日まで……。
 そんな感じで、特に進展などはなく、今日まで過ごしてきた訳だが……。
「ねぇねぇ、二人とも休みは何して過ごす? やっぱり海? 海行っちゃう?」
 本日の授業も無事に終わり、後は寮へと帰るだけとなった放課後、ルイナはウキウキと話しかけてきた。
 長期休み……季節が夏と冬しかないこの国では、丁度この季節の境目に長い休日が与えられる。
 つまり、休みに入る時は夏だが、休み明けには冬になっている、という訳だ。
 ちなみに僕は、あまりにも寒暖差が激しすぎるあまり、毎年風邪を引いている。
 四季の国では、夏から冬の間にもう一つ季節があるという話を聞いたが、緩やかに冬に向かっていくのは正直に羨ましいと思った。
 さてSクラスといえど、まだ一年の僕たちは、座学ばかりで実技など一度もやっていない。
 要は、飽きがきているのだ。
 そんな中の、長期休みである。浮かれない方がおかしいというものだ。
 しかし、この教室で嬉しそうなのは唯一ルイナだけで、僕とリョウはどんよりと顔を曇らせていた。
 リョウは元々あまり感情を表に出さない方であるから、心の内ではどう思っているのか分からないが、少なくとも僕の方は憂鬱であった。
 風邪を引くからではない。昨日届いた、手紙が原因である。
「海とか……行くわけないだろう、くだらない」
「えー、折角のお休みなんだからさ! 一日だけでもみんなでどっか遊びに行こうよ! レイズくんはどう?」
「あー……ごめん、僕はちょっと……実家に帰らないと……」
 そう、手紙の内容。それは、家族から帰省をするようにと書かれたものであった。
 別に、家に帰るのが嫌という訳ではない。家族仲も、悪くない。何が嫌かというと……。
「メアのこと、何て説明すればいいかな……」
「何だ、まだ言っていなかったのか」
「普通に言えばいいんじゃないの?」
 パートナーが災厄のドラゴンであることを、どう普通に説明しろというのか。
 いや、その説明も僕を悩ませていることの一つだが、本当の悩みは他にあった。
「うーん……とりあえず帰るんだけどね……」
「じゃあ、レイズくんにはお土産を期待するとして、遊ぶのはリョウくんと二人だけになっちゃうね」
「遊ばないって言っているだろう。俺は一人で過ごす。邪魔しないでくれ」
 ルイナとリョウはまだワーワーと言い合っているが、それを尻目に僕は深いため息をつく。
 実家に帰れば、絶対に顔を合わせることになる。
 わざわざ、会わないよう寮付きのこの学園にしたっていうのに。
 昔の同級生たちと、また会うことになるのか……。
 僕が、メアに黙っていたこと。言いたくなかったこと。僕の意志とは関係なく、バレることになりそうだ。
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