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大阪編
第3話 たこ焼き
しおりを挟むさっきまでの覚悟がこんなにも早く消えてしまうなんて思いもしなかった。人生で初めて思考停止というものを体験することができるなんて。
「いやー、やっぱドリルはおもろいわ。
んで君は誰だ」
「、、、、、、、」
「おーい、生きてるかー」
「あ、すみません。私はここ大阪府庁に配属された山城美香です。よろしくお願いします」
そう言い終わると
「そうか、そうか、よろしくな」
「あの、ところで何をなされているのですか」
誰もが思う普通疑問に思うことなのだが、何故か不思議そうな表情で、
「何って?ただ吉本新喜劇を見てるだけだが。知らんのか」
「いえ、ご存じです。私が疑問に思ったのは職務の方は終わったのですか?」
「あー。そうゆうことか。それなら大丈夫。」
「よろしいのですか。」
「そんなんもー、どーでもえーがな」
(訳 そんなのもうどうでもいいじゃない)
(マジかよ、この人。本当に知事なんだろうか)
「しかし君が、初めてうっとこで働くのか、、、、、それなら盛大にもてなさないとな」
(訳 うっとこ→私のところ)
すると、すぐに椅子から立ち上がり私の腕を掴みドアを勢いよく開けるとそのまま正面玄関にへと走っていったのである。
(私は本当にここで働くのよね?)
そして、正面玄関を出てすぐ近くに停めていたタクシーに乗り、
「タクシーのうんちゃん。道頓堀まで頼むわ」
すると、運転手のお爺ちゃんが笑いながら
「また、サボりですかな」
「ちゃうわ。こいつが初めての社会人になるからその歓迎会をするんだよ」
(こいつ呼ばわり、、、、、、)
たわいのないことで落ち込んでいると、お爺ちゃんがミラーで私の顔を見て、
「お嬢さんも大変なところで働きますな、ハハハ!」
「なんでや!ワシはこう見えて知事でその府庁で働けるんやぞ。光栄じゃねーか」
「知事にしては貫禄がありませんがな」
「やかましいわ」
楽しく言い合っている中隅っこで縮こまっていると、一気に人の数が多くなり始め、そして石の橋が迫ってくると
「着きましたよ」
そこで私もこのまま黙っておくのはよくないと思い、
「なら、支払いは私が、、、」
と財布を出そうとすると
「いやいや、ここへ連れて来たのはワシや。だからまとめて支払うから、、、」
「ですが、それでは、、、、」
すると
「あの、早くしてもらいませんかね。こちらも次の所に行かなくちゃならなくて時間がないんだよ」
イライラしならがら支払いを待っていたので知事が半ば強引に紙幣を置き、タクシーから降りた。
そこには沢山の人と派手な看板、美味しそうな匂いが大渋滞している。
(にしても、道頓堀なんて初めてきたな。今更だが私は大阪出身とはいえ他県から度々転校していたからあまり来れなかったもんなー。中学、高校も真面目に勉強しかしていないからこうゆう賑わった所に来ると少し興奮するんだよねー)
「いやー、着いたでー道頓堀!やっぱり大阪といえばここしかないな。そう思うだろ」
(にしてもいい匂いだ。朝からバタバタしていたからお腹空いたなー、、、、ってダメダメ。しっかりしなさい。こう言うのは社会辞令なのよ。部活が上司を労うための催し物。そう、ネットで見たことがあるわ。しかも、私は今日ここに始めて来たのよ。図々しいにも程がある。こういうのは第一印象が命だからここでもし流されれば私の社会人人生が一気に変わってしまう。だから、謙虚に行かないと、、、、)
そう、深く考えていると隣からの視線を感じた。
「、、、、、、大丈夫?」
「は!すいません、少し考え、、、、」
するとお腹から震えと巨大ななぎ声が聞こえた。
(ぐぅーーーーーーーーーーーーーーー)
「、、、、、、、」
(私の体ったら何をしているの。なんでこのタイミングで、、、お願い、泣き止んで!)
顔を赤くして、必死に手でお腹を押さえていると
「そんなにお腹が空いたのか。なら、これから行く所も問題ないな」
すると、早足で橋を渡っていったので私もその背中を追っていった。
無我夢中で追いかけていると、目の前に大きなタコの看板と美味しそうな匂いが近づいて来た。
すると、立ち止まり2人で看板を眺めながら
「大阪の名物と言ったら粉物。そして粉物の代表格こそたこ焼きや!」
ちょうど空いている時間帯なのか列はなく若い男性店員が私たちに向かって
「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりでしょうか」
「ほんなら、普通のたこ焼きを2つ。青のりとマヨネーズたっぷりで」
「かしこまりました。2つ合わせて1200円です」
「あ、ここは私が払います」
もう、これ以上奢ってもらうなんて申し訳ない。そう思い今度こそ樋口様を出そうとしたら
「待ちや」
「いや、流石にここは私が」
「そうゆうことちゃう。ちょっと店員さんよ、、、」
「はい?どうなされたのですか」
「実は今日から隣の女性が部下として働くんよ。」
「それは、めでたいですな」
「そうや、めでたい日や。だから、、、、、、、まけてくれへんか」
すると、店員が大きくため息をついて
「またですか、、、、、うちだってここ最近の売り上げよくないんよ、、、」
「嘘やな!俺が何回ここに通っているか。しかも宣伝までして繁盛してるがな。ちょびっとぐらい、な」
「まぁ、ぼちぼちでんなぁ。」
(訳 まぁ、そこそこですね)
「なら、ええよな」
すると、呆れた顔をして
「分かりましたよ。なら800円でどうや、」
(今時、本当に値切る人なんているんだ)
「本当に申し訳ありません」
と店員に謝り、野口様を出そうとすると
「何ゆうとんや」
「え?」
「え?」
「そんな、祝いどきに金をとろとするのはおかしいやろ。タダや、タダにせえ!」
流石の店員も大きな声で
「なに言うてはるんすか!お得意様とはいえタダなんてしたら、潰れてまう」
「そうですよ、知事、、、相手方にも迷惑かと、、、」
「いや、そんなことない!これぐらい当然やろ」
すると店員も熱くなり
「偉そーに!随分と我儘を言うようになりましたな、知事さんよ。誰のおかげでそこにいれるか考えろ!」
「なんやと!」
「もう、やめて下さいよーーーー」
両者共に完全に理性を失い、暴言罵倒で言い合うと、ついに店員が折れ
「分かりましたよ!なら、500円!500円です!それ以上は無理です」
500円と聞いた瞬間、知事の顔が急に明るくなり
「ほんまか!いやー、ワンコインや」
これを予想していたのか直ぐに硬貨で支払ったのだ。
その後店員は疲れ切った顔でたこ焼きを作り始めた。
「これはやりすぎですよ」
「いや、これでええ」
「何故そこまで値切ろうとするんですか」
「え?楽しいからに決まってるやろ。交渉ほど楽しいもんはない!」
知事はそのまま笑い出したが、店員と私は大きなため息をした。
そして、待つこと数分
「お待ちどうさん。たこ焼き2つや」
そこには出来立てでソースのいい匂いと鰹節のパラパラの音がなる美味しそうなたこ焼きがあり、
「おほー、美味そうやん!頂きます!」
「頂きます、、、、」
爪楊枝を使い、お腹が減りすぎて熱々のたこ焼きを丸ごと一口でいってしまい
「ほかほかほかほか、、、、、熱い!」
「って、なんで一口でいくんや!火傷しちまうぞ」
「はふはふはふ、、、すいません、」
なんとか、一口で食べきった。
「美味しい、、、」
「やろ!この関東のカリカリとは違いふわふわで中はトロトロ。しかもタコの食感も見事に合わさってうまいんよ」
「ふん。そりゃどーも」
私はそのたこ焼きをあっという間に完食してしまった。知事も食べ終わると
「いやー、うまかったよ。ほんじゃあ、また食いに行くわ」
「美味しかったです。また来ます」
「おう、たが次は値切らんからな。」
たこ焼き屋から去っていき、これで終わりかに見えた。
「よし、ほんなら次行くぞー」
「え、まだ行くんですか!」
「当たり前よ。ここは食い倒れの街やぞ。まだまだ、、、、、、、」
そしてまた私は知事についていった。
(まだ、食べるのか、、、、、、、、)
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