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第1章 いじめ
残虐な想い
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「あんな不快な動画を見れば誰だって成敗したくなるだろう」
秋山さんは桜田君のスマートフォンを操作している。またあの動画を再生しているのか先ほどと同じ嫌な笑いが聞こえてくる。
「動画を見た誰かがこいつらのことを調べ始める。通ってる学校も名前もすぐにわかるだろうな。それがさらに広まって学校も無視できなくなる。そうすればなんらかの対処はするはずだ」
そんなトントン拍子に上手くいくはずがない、と私は言ったがそれに構うことなく秋山さんは続けた。
「坂崎ってやつはいじめの主犯格だ。そいつがいなくなればいじめは止むだろう」
確かに主犯格とその取り巻きがいなくなればいじめは止むかもしれない。桜田君の友達はお前と話したらいじめの標的になってしまう、と言った。それは脅されているということにならないか。クラスの大半は無視をしているらしいがそれは自分が桜田君と仲良くすることでいじめの標的にならないようにするための防衛策なようなものなのだろう。中にはそれを楽しむものもいたのかもしれないが全員が面白がっていたわけじゃない。坂崎達に脅されていたに違いないのだ。その脅威が去れば桜田君を無視する必要もなくなるはずだがそう簡単ではない。
「本当に、坂崎達はいなくなるんでしょうか」
静かな声で桜田君が言った。
「ああいう奴らは万引きやら飲酒喫煙とか、他に犯罪行為もやってるだろう。そしてそれを自慢する。ネット上でな。きっとそうゆう情報も芋づる式にでてくる。そうなれば、当分学校には来れなくなる。そのまま学校自体をやめてさらに世の中の道から外れていくかもな」どうする、と秋山さんが言う。
桜田君は俯いていて私からは表情が見えないが、きっと今までされたいじめを思い出しているのではないか、と私は思った。
「でも、あの動画には桜田くんの顔も映っちゃってますけど」
「少年の顔は分からないように加工する」
秋山さんが機械系に詳しいことに少なからず驚いた。パソコンはおろか携帯をいじっている姿すら見たことがない。
「でもすぐにバレると思うけどな。情報っていうのはどんだけ巧妙に隠しても存在してる以上いずれバレる」
「だめじゃないですか」
「まぁそこまで支障はないだろう」
なにを根拠に言っているのだ、と私は心の中で反論した。
窓から入ってくる外の光が先ほどから少し弱まってきたなと考えていたが、今気づけば外の光はまるでなくいつの間にか外では夜が始まっていた。
「今日一日、考えてみてもいいですか」桜田君が顔を上げ、言った。
明日は土曜日だ。このお店に定休日は特にないから桜田君が明日また来ますと言ったときも秋山さんは断ることなく頷いた。
「お前も今日は上がっていいぞ。もうすることもないしな」
「いいんですか?」
「あぁ」
本当はもう少しお店に居たかった。家に帰り1人でいると昨夜の夢を思い出すような気がしていたからだ。だけど、それを秋山さんに見透かされるのも癪に思え私も帰ることにした。
「帰る前に動画をパソコンに移動しておこう。少年の顔の加工とかがあるからな」
桜田君はまだネットに動画を投稿することを許可していないのに秋山さんはやる気満々だな、と私は思ったが意外にも桜田君はお願いしますと言い秋山さんにスマートフォンを渡した。
私はそこで、もしかするともう桜田君の中では答えは決まっているのかもしれないぞ、と思った。悩んでいるふりをしているのだ。悩んで悩んで、その末に出した答えであれば、どうなっても仕方がないと自分の逃げ道を作るため。痛めつけてきた奴らをどん底に落とせるかも知れないチャンスに悩むことなく縋ろうとする自分の中の残虐な想いに気づかないようにするために。
秋山さんは桜田君のスマートフォンを操作している。またあの動画を再生しているのか先ほどと同じ嫌な笑いが聞こえてくる。
「動画を見た誰かがこいつらのことを調べ始める。通ってる学校も名前もすぐにわかるだろうな。それがさらに広まって学校も無視できなくなる。そうすればなんらかの対処はするはずだ」
そんなトントン拍子に上手くいくはずがない、と私は言ったがそれに構うことなく秋山さんは続けた。
「坂崎ってやつはいじめの主犯格だ。そいつがいなくなればいじめは止むだろう」
確かに主犯格とその取り巻きがいなくなればいじめは止むかもしれない。桜田君の友達はお前と話したらいじめの標的になってしまう、と言った。それは脅されているということにならないか。クラスの大半は無視をしているらしいがそれは自分が桜田君と仲良くすることでいじめの標的にならないようにするための防衛策なようなものなのだろう。中にはそれを楽しむものもいたのかもしれないが全員が面白がっていたわけじゃない。坂崎達に脅されていたに違いないのだ。その脅威が去れば桜田君を無視する必要もなくなるはずだがそう簡単ではない。
「本当に、坂崎達はいなくなるんでしょうか」
静かな声で桜田君が言った。
「ああいう奴らは万引きやら飲酒喫煙とか、他に犯罪行為もやってるだろう。そしてそれを自慢する。ネット上でな。きっとそうゆう情報も芋づる式にでてくる。そうなれば、当分学校には来れなくなる。そのまま学校自体をやめてさらに世の中の道から外れていくかもな」どうする、と秋山さんが言う。
桜田君は俯いていて私からは表情が見えないが、きっと今までされたいじめを思い出しているのではないか、と私は思った。
「でも、あの動画には桜田くんの顔も映っちゃってますけど」
「少年の顔は分からないように加工する」
秋山さんが機械系に詳しいことに少なからず驚いた。パソコンはおろか携帯をいじっている姿すら見たことがない。
「でもすぐにバレると思うけどな。情報っていうのはどんだけ巧妙に隠しても存在してる以上いずれバレる」
「だめじゃないですか」
「まぁそこまで支障はないだろう」
なにを根拠に言っているのだ、と私は心の中で反論した。
窓から入ってくる外の光が先ほどから少し弱まってきたなと考えていたが、今気づけば外の光はまるでなくいつの間にか外では夜が始まっていた。
「今日一日、考えてみてもいいですか」桜田君が顔を上げ、言った。
明日は土曜日だ。このお店に定休日は特にないから桜田君が明日また来ますと言ったときも秋山さんは断ることなく頷いた。
「お前も今日は上がっていいぞ。もうすることもないしな」
「いいんですか?」
「あぁ」
本当はもう少しお店に居たかった。家に帰り1人でいると昨夜の夢を思い出すような気がしていたからだ。だけど、それを秋山さんに見透かされるのも癪に思え私も帰ることにした。
「帰る前に動画をパソコンに移動しておこう。少年の顔の加工とかがあるからな」
桜田君はまだネットに動画を投稿することを許可していないのに秋山さんはやる気満々だな、と私は思ったが意外にも桜田君はお願いしますと言い秋山さんにスマートフォンを渡した。
私はそこで、もしかするともう桜田君の中では答えは決まっているのかもしれないぞ、と思った。悩んでいるふりをしているのだ。悩んで悩んで、その末に出した答えであれば、どうなっても仕方がないと自分の逃げ道を作るため。痛めつけてきた奴らをどん底に落とせるかも知れないチャンスに悩むことなく縋ろうとする自分の中の残虐な想いに気づかないようにするために。
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