勇者から魔王に転生しました

カニ

文字の大きさ
1 / 5

そう、俺は一般人、のはずだった。

しおりを挟む
「ど、どういうことだよ・・・・っ」
 周囲一帯に広がる暗闇。
 どことなく寒さを感じさせる冷気は、俺の望んでいたものではない。

「俺が魔王って、どういうことだよ!?」

 おいおい待て待て。
 展開が急すぎやしないか?
 なんか、あっという間に過ぎた気がする。
 あまりにも怒濤の展開に、俺の頭がついていってない。
 こうなった理由があるはずだ。
 ・・・・・・たぶん。
 ちょっと、落ち着いて思い返そう。


 俺は、普通の高校生だった。
 勉強も運動も人並みくらいで、誰から注目を集めることなんてない。
 異変が起きたあの日は、なにも変わりない日々だったはずだ。
 暖かい陽光に眠気を感じながら、学校に向かった。
 あくびを噛み殺しながら教室に入ると、見慣れた二人が俺に駆け寄ってくる。
「おはよ~、一八~」
「おっす、一八!」
「・・・・・・おう」
 元気に挨拶をして来たのは、保育園から一緒の、幼馴染みたちだ。
 それにそっけない返事をしながら、俺は席についた。
「なんか、眠そうだね?」
 こいつ、赤木玲奈(あかぎれいな)は、スポーツ万能に成績優秀。
 それに顔も可愛く、誰にたいしても笑顔を向けてくるから、男子からの人気は高い、が、
「ちゃんと寝てんのかぁ?」
 この、もう一人の幼馴染み、神崎類(かんざきるい)と出来ちゃっている。
 いやまあ、正直腹立たしくてしかたがないが、どうしようもないことではあった。
 類の方も、勉強はできないが、運動はずば抜けている。得意の陸上では、県内1位。全国と渡り合える力も持っているとか。
 それに、気さくな性格から、こいつを嫌うやつも少ない。
 そんなわけで、二人が付き合うのは、もうほぼ決まっていたことだ。
 ただ、この輪に毎回入れられる俺の気持ちになって欲しいとは思うのだが、
 俺が頬杖をついて、眠気でまぶたを半分下ろしていても、二人はやかましく話しかけてくる。
「一八、今日のニュース見たか?」
「あぁ、物騒だな」
「だよね!もう、20人もいなくなっているらしいよ!」
 おぉ、なんか会話が繋がった。
 正直言って、俺はこの二人があまり好きではない。だから適当に、こうして話を流している。
 何となく、話って繋がるもんだね。
 俺が感慨に耽っているのをよそに、二人は会話を続ける。
「一ヶ月も前から続いてるらしーぞ」
「ふぅーん」
「なんかネットで、もしかしたら、世界中の人が消えるんじゃないかって言ってた!」
「それは、ただの出任せだろ。まあ、俺は何があっても、玲奈を守るけどな」
「ありがとー!類、大好き!」
 イチャつくな・・・・・・!
 公共の場とわきまえず、抱き合う二人に、これでもかと言うくらいの憎悪の念を視線で送る。
 そんなことに時間を費やしていると、ゆっくりと休む間もなく、チャイムが鳴ってしまった。
「席に付け~出席取るぞー」
 教室に先生が入ってきたのを合図に、生徒たちは、各々の席へと戻っていく。
 そのまま朝礼が始まって、先生の声だけが聞こえるようになった。
 退屈な業務連絡は、子守唄のように俺を眠気へ誘う。
 ・・・・・・寝よう。
 そう、瞼を閉じた。


 それが、この世界での、最後の記憶だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...